芸能人的な広告塔は企業成長を阻害する
社長自身が芸能人的な著名人で、なお且つ、会社の広告塔である場合、企業成長が破綻するリスクが高まる。
なぜなら、広告塔である社長の寿命と共に、会社の寿命が尽きてしまう可能性が非常に高いからだ。
会社の社長がTVや雑誌等によく露出している芸能人的な広告塔である場合、消費者が受けるその会社の商品の印象がガラリと変わる。
例えば、一般的な消費者の購買基準は会社名や商品名であって、その会社の社長が誰であろうと購買活動に影響を及ぼさない。
一方、会社の社長が芸能人的な広告塔である場合は、その社長の知名度によって売上が大きく変動する。
商品力よりも、広告塔の知名度(芸能人的パワー)で商品の売行きが決定するので、広告塔である社長の身に万が一のことがあったら、経営に大きな打撃を受けてしまう。
人のうわさも七十五日というように、三ヵ月もすれば忘れ去られるのが世の習いである。
場合によっては、広告塔である社長の寿命と共に、会社の寿命も終わってしまうかも知れない。
広告塔に頼った会社経営の弊害とは?
社長自身が芸能人的な広告塔になって会社を成長させていくこと自体には、何も問題ない。
問題は、成長の過程で商品力を磨く努力や広告塔のネームバリュー(※1)を凌駕するべく経営努力を少しでも怠ると、広告塔の寿命と共に会社の寿命が尽きてしまうということだ。
社長自身が広告塔になる場合、最も注意しなければならないのは、この点である。
また、会社の社長が芸能人的な広告塔である場合、大した経営努力をしなくても黒字経営が成立してしまうことがある。
会社が黒字経営であれば、将来のリスク検証や経営課題に対する危機意識は自ずと緩んでしまう。
当然ながら、危機意識が希薄だと事前にリスク対策が講じられることはない。
業績が悪化してから、漸く重い腰が上がるといったケースが殆どだ。
なかには、「広告塔である自分がいなくなれば会社の経営が行き詰る」と考え、将来の危機意識を強く持っている社長もいるが、社員の方が気楽に考えているケースが多い。
なぜなら、社長が芸能人的な広告塔である場合、自身の対外活動が忙しく、会社を不在にする機会が多くなるからだ。
会社の監督者である社長がいない中、社員は日々の業務をこなすだけとなる。
一方の社長は、一向に将来の成長発展に向けた経営のかじ取りに専念することができない。
このような状況下で、商品力を磨く経営努力は、なかなかできるものではない。
※1 ネームバリューとは、世間での知名度のこと。名前そのものの価値のこと。
芸能人的な広告塔には不祥事リスクがある
社長が芸能人的な広告塔の場合、「不祥事」という大きなリスクを抱えることになる。
社会的著名人である社長が不祥事を起こすと、風評被害で会社が一気に倒産に傾いてしまうこともある。
こうなると、会社を立て直すのは至難の業だ。
会社経営の世界は甘いものではない。
芸能人的な広告塔と経営者という二足の草鞋では、いつか限界が訪れる。
「二兎追う者は一兎も追えず」の言葉通り、どちらも中途半端な結果をもたらすことにもなりかねない。
ある一定のタイミングで、経営に専念できる体制を作るか、外部から経営のプロを招聘するか、会社の将来を考えた決断が必要だろう。
会社の衰退を選ぶか?
はたまた、会社の繁栄を選ぶか?
その決断ができなければ、次の世代、また次の世代へと会社を引き継ぐことは困難なのである。
中小企業の広告塔は社長の仕事
中小企業の場合、会社の広告塔は社長自身であることが多い。
会社のことも、商品のことも、全てを熟知しているのは社長自身なので、それが自然な姿であり、社長=営業本部長(宣伝部長)という会社も珍しくないだろう。
会社の商品に一番の自信を持っている社長が、自分の手足を動かし、自負を持って会社の宣伝を行うことは大切なことだ。
当然ながら、社長自身が会社の広告塔になれないのであれば、その会社の業績もブランドも大きく成長することはないだろう。
しかしながら、社長自身が芸能人的な広告塔になる必要はない。
賢い社長は、メディア取材をすべて社員に任せて、自身は経営に専念する方法をとっている。
会社経営において有名になるべきは、会社名や商品名であって、社長の名は無名でも構わないのだ。


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