人件費の適正配分が分かる

労働分配率の計算方法と適正水準

労働分配率の計算方法と適正水準

 

労働分配率とは、売上総利益に占める人件費の構成比率のことである。

 

労働分配率は、会社の分配可能な付加価値(売上総利益、或いは粗利)が、どの程度労働の対価(人件費)に支払われているかを示す経営指標である。

 

例えば、労働分配率の高い会社は、沢山の労働力を要する人的投下が大きい労働集約型の企業で、労働分配率の低い会社は、少ない労働力で済む人的投下の小さい資本集約型の企業といえる。

 

労働分配率が分かると、会社の人的投下の構造と共に、人件費配分の適正可否が判定できる。

 

労働分配率の計算式は下記の通りである。

労働分配率=(人件費÷売上総利益)×100

 

中小企業の労働分配率の適正モデル例は、下表の通りである。

 

売上総利益

100

100

100

100

100

人件費

70

60

50

40

30

その他経費

20

30

40

50

60

営業利益

10

10

10

10

10

労働分配率

70%

60%

50%

40%

30%

人的投下

労働集約型

準労働集約型

標準

標準

資本集約型

 

人件費の分配原資となる売上総利益は「100」としている。

 

営業利益は、中小企業の標準利益水準である「10」としている。

 

従って、分配可能な最終原資は、売上総利益100-営業利益10=「90」ということになる。

 

労働分配率は、業種業態によって異なるが、下表の通り、概ね30%~70%の範囲内に収まる。

 

 

労働分配率の高い業種、低い業種

 

労働分配率が高い水準の労働集約型の代表例は「コールセンター」である。

 

コールセンターの運営には沢山の電話オペレーターが必要だ。従って、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり労働分配率が高くなる。

 

一方、その他の費用はさほどかからない。なぜなら、拠点は地代(家賃)の安い地方が多く、地代家賃以外の経費も電話通信費以外は大してかからないからだ。

 

このように、人件費に比べて、人件費以外の費用割合が著しく低いのが、労働集約型の特徴といえる。

 

 

労働分配率が低い水準の資本集約型の代表例は、無人化が進んでいる「製造工場」である。

 

無人化が進んでいる製造工場は、監督する人間が少なく済み、殆どが機械任せの運営になる。従って、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり労働分配率が低くなる。

 

一方、人件費以外の費用はたくさんかかる。例えば、機械のリース代やメンテナンス費用、減価償却費用、などである。

 

このように、人件費に比べて、人件費以外の費用割合が著しく高いのが、資本集約型の特徴といえる。

 

 

また、利便性の高い駅近で競争を強いられる、美容サロン、アパレルショップ、歯科医院、弁護士事務所等も、資本集約型の産業に近い要素がある。

 

美容サロンやアパレルショップ等は、地代相場が高い駅近のテナントに入居するケースが多い。

 

テナント料のほか、多額の広告宣伝費、設備代等もかかる。人件費よりも、人件費以外の経費が多くかかるので、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり労働分配率が低くなる。

 

 

 

労働分配率の適正水準

 

中小企業経営者が、会社の労働分配率が適正か否かを判定するには、まず第一に、自分の会社が、労働集約型なのか、資本集約型なのか、はたまた標準的な産業なのかを判定する必要がある。

 

そのうえで、自分の会社の労働分配率を算定し、上表で示した労働分配率の適正モデル例と比較し、適正度合いを判定する。

 

なお、中小企業の労働分配率の判定基準は下記の通りである。

適正指標よりも労働分配率が高い

 

適正指標よりも労働分配率が高い場合は、人件費が過分にかかっているということである。

 

人員の活用がうまくいっていない場合は、配置転換等で収益を上げる方法を検討し、配置転換等で収益増加が見込めない場合は、適正な水準になるように人員整理を検討した方がよいだろう。

 

 

適正指標よりも労働分配率が低い

 

適正指標よりも労働分配率が低い場合は、少数精鋭で効率的な経営が実現できることを表している。

 

少数精鋭体制は、中小企業にとって理想的な姿である。

 

日頃から生産性を追求することが良好な労働分配率を保つ秘訣になる。

 

 

 

労働分配率を経営に活かすポイント

 

労働分配率は人件費を上手にコントロールするための経営指標として有効に活用できる。

 

例えば、自分の会社が目標にすべき労働分配率が分かれば、

 

「人員を補充して労働分配率を改善すれば良いのか?」、或いは、「人員を補充せずに労働分配率を改善すれば良いのか?」といった、労働分配率を改善するための初動判断を適切に下せるようになる。

 

労働分配率が悪化しているにも関わらず人員を補充している会社、或いは、労働分配率が適正値よりも下回っているにも関わらず人員を十分に補充せずに社員に無理な労働環境を押し付けている会社など等、人件費のコントロールがうまくいっていない中小企業は少なくない。

 

中小企業が、ヒトの増減を検討・判断するうえで、労働分配率は有効な根拠として活用できる。是非、積極的に活用してほしいと思う。

 

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