中小企業の経営者には定年がない。
会社のオーナー兼経営者であれば、なおさらだ。とはいっても、一生、仕事人間では人生の楽しみや喜びを満足に得られないだろう。
この記事では、経営者がハッピーリタイアメントを実現するための選択肢と、ハッピーリタイアメントを迎えるうえの出口戦略について、詳しく解説する。
中小企業経営者がハッピーリタイアメントを実現するには、経営者と会社経営を承継する人間が共に幸せになれる方法で会社を承継することが、最も望ましい選択になる。
当たり前だが、一方が不幸になる会社承継は成功しない。
共にウインウインで会社を承継してこそ、経営者のハッピーリタイアメントが見えてくるもので、会社を無事に承継できれば経営者は晴れて自由の身になれる。
会社のオーナー兼経営者が幸せな会社承継を実現し、ハッピーリタイアメントを実現するにはどうすれば良いのか?
そもそも、どのようなハッピーリタイアメントの選択肢があるのだろうか?
ハッピーリタイアメントの代表的な3つの選択肢と出口戦略について、順を追って詳しく解説する。
オーナーと経営の分離とは、会社経営を第三者に任せて、自身は経営から身を引いて、オーナー(株主)として会社経営に関わる形態のことだ。
オーナー(株主)の立場で、配当金収入が得られるので、不労所得を確保することが出来る。
配当金は、株式という資産を保有することによって得られる収益で、専門用語でインカムゲインというが、株式を売却しない限り配当金の受取権利(インカムゲイン)を創業者一族で保有し続けることが出来るので、会社の経営体質が盤石であれば、一番お薦めのハッピーリタイアメントの方法といえる。
成功に導く主な条件は下記の通りになる。
①株式を2/3以上保有すること
②相応の配当金が得られる利益水準にあること
③会社の将来性が高く、長期経営が見込めること
④経営能力の高い経営者を招聘することができ、尚且つ、経営者に対して相応の報酬を用意できること
⑤株主として会社経営を見守り、過度に経営に介入しないこと
上記の最低条件をクリアすることが出来れば「オーナーと経営の分離」を検討することができる。
会社売却は保有している株式を第三者に売却し、会社から身を引く形態のことだ。
会社売却は、仲介者(日本M&Aセンター・銀行等)を通じて第三者へ売却する方法が一般的だが、経営者の周囲に会社を購入したいという人物がいれば、その人物に売却する選択肢もある。
株式売却は、会社の資産と利益状況によっては、莫大な収益を生み出す。例えば、資本金0.1億円で創業した会社を10億円で売却できれば、その差益は9.9億円になる。
株式売却で得られる収益を専門用語でキャピタルゲインというが、株式売却によるキャピタルゲインは、細く長く得られる配当金のようなインカムゲインに比べて収益が大きくなるので、莫大な資産を築いてハッピーリタイアメントを迎えたい経営者にはお薦めの方法だ。
成功に導く主な条件は下記の通りになる。
①自己資本比率が適正であること
②黒字経営が継続されており、尚且つ、利益水準が適正であること
③競合他社、又は、大手との吸収合併で会社の更なる成長が見込めること
上記の最低条件をクリアすることが出来れば、「会社売却」を検討することができる。
子供への事業承継は、会社経営を子供に承継させる形態のことだ。
オーナーと経営の分離、及び、会社売却に比べると幸せの保証度は低下するが、多くの中小企業が選択している方法だ。
幸せ(ハッピーリタイアメント)の保証度が低下する理由は、後継者育成の失敗にある。従って、成功の条件は厳しく、主な条件は下記の通りになる。
①後継者育成が完了していること
②後継者をサポートする右腕がいること
③会社の将来性が高く、長期経営が見込めること
④後継者が、会社の株式を2/3以上を保有していること
⑤黒字経営が継続されており、尚且つ、利益水準が適正であること
上記の最低条件をクリアすることが出来れば、「子供への事業承継」を検討することができる。
中小企業経営者がハッピーリタイアメントを実現するには、健全な会社経営が大前提になる。
また、ハッピーリタイアメントを成功させるためには、事業承継の方法を経営者が早い時期から考える必要がある。
オーナーと経営の分離・会社売却・子供への事業承継、何れの方法もハッピーリタイアメントを成功させるには、相応の準備と意識が必要だ。
意識があれば行動が伴うが、意識がなければ行動は伴なわない。
ハッピーリタイアメントを実現するには、日頃から健全な会社経営を強く意識することが何よりも大切なのだ。
(この記事は2016年6月に執筆掲載しました)