わたしは再建実務を通して衰退企業を数多く目にしてきたが、衰退する会社には共通の原因があった。
いかに調子の良い会社であっても、その衰退原因に触れると高確率で業績が悪化し、逆に、衰退原因と縁遠い会社はしっかり成長していた。
この記事では、会社の成長と衰退を分かつ重要なポイント、並びに、中小企業の成長と衰退の法則について、詳しく解説する。
中小企業が衰退する原因は「経営課題の見落とし・見過ごし・見誤り」に尽きる。
経営課題とは、企業の成長を阻害する要因のことだが、会社の経営課題と真剣に向き合い、克服に努めている会社は間違いなく成長している。
逆に、日常的に経営課題を見落としたり、見過ごしたり、見誤ったりしている会社は、高確率で衰退する。
つまり、会社の成長と衰退は、経営課題と向き合う姿勢ひとつで決まるのだ。
なぜ会社の経営課題を見落とすのかというと、会社のお金が回っていると、それなりの状態で会社経営が続いてしまうからだ。
日頃の運転資金が銀行融資頼みの中小企業も少なくないが、銀行借入や身銭の補てん等々で資金不足を解消したとしても、それは一時的な回避策にしかならない。
このような経営状況に陥っている会社は、お金を回すことばかりに気を取られて、本来考えなければならない「お金が回らなくなってしまった」という経営課題の根本を見過ごしがちになる。
これはギリギリの少ない利益で回している中小企業にも同様のことが言える。
経営課題を見落としていては、更なる会社の成長、或いは、赤字から黒字経営への挽回ができないどころか、もっと悪い方へ衰退する可能性が高くなる。
会社が衰退する根本原因は「経営課題の見落とし」になるが、もう一つ、衰退企業に共通していることがある。
それは「衰退する前に、とても儲かった時代(成長期・繁栄期)がある」ことだ。
☑儲かっている会社は大抵、他人の忠告に耳を貸さない
☑また、自らの劣っている点を見直す謙虚さも薄らぐ
☑お金の不安もないので、会社の数字も軽視するようになる
このような経営者の油断が「経営課題の見落とし・見過ごし・見誤り」を招き、会社衰退の元凶を作る。
会社が儲かっていようが、儲かっていまいが、経営課題の見落とし等は経営者の心の緩みひとつで表面化する。
つまり、会社の衰退を防ぐには、経営課題を見落とさないための経営改善を、しっかり定着させることが何よりも大切なのだ。
会社の業績が成長から横ばい傾向に転じた瞬間を見逃した時点から会社の経営状態はみるみる衰退の一途を辿る。
そして、会社のお金が回っているという漠然とした安心感を担保に、会社の衰退を見逃し続けると何れ会社は潰れる。
潰れるまでの期間が1年、或いは10年かも知れないが、衰退の結末は同じである。生活習慣病である癌は10年の潜伏期間を経て自覚症状が出てくると云われているが、会社も同様である。
危機に陥ってからあたふたするよりも、日頃から経営課題を見逃さず、問題が小さいうちに経営改善を推進していれば、倒産の危機に陥ることはなく健全な経営状態でいられるというものだ。
優れた経営資源を保有していながら、衰退の一途を辿る中小企業は少なくない。
優秀な社員、優れた技術やサービス、素晴らしい施設や設備等、、、。
如何に優れた経営資源を保有していたとしても、経営課題を見落とし続けてしまっては会社が成長することはない。
事実、過去に再建に関わった中小企業の殆どは優れた経営資源を持っていながら経営課題を見落とし続けた末に、会社が衰退の一途を辿っていた。
経営者が会社を成長させるために考えなければならないことは多岐に亘る。
安定経営・業績拡大・成長投資・資金繰り・組織掌握・人材育成など、挙げたらキリがないが、何れにしろ、会社を成長させるには、日々の経営改善を推進する優れた経営技術が必要だ。
しかし、過去に私が接してきた多くの中小企業の経営者は「今より会社を成長させたいがどこから手をつけていいか分からない」、あるいは「様々な手は尽くしているが効果を実感できない」など、皆、漠然とした不安を抱えていた。
なぜ不安が漠然としているかというと、会社経営を成長させるうえで核となる「経営スキルとマインド」が経営者に身についていないからだ。
なかでも、管理会計・マネジメント・リーダーシップは最重要スキルになる。
管理会計とは会社の数字を、有益な情報に変換、管理、運用し、企業の経営力を高める会計手法のことである。
管理会計は、会社の数字を良質な情報に変換させるフィルターのようなものなので、経営者に確かな経営判断の根拠となり得る優れた情報を与える。
経営者のマネジメント力とリーダーシップは、会社の数字を作る顧客・社員・取引先等の生産性を高める上で、最も重要なスキルになる。
経営者のマネジメント力とリーダーシップ力が素晴らしければ、顧客・社員・取引先は、自然と社長に尽くし、大きな成果を上げてくれる。
この3つのスキルが経営者に備われば、会社の現状に対して何をすべきかが明快になるので、自ずと経営課題の見落しが解消されて、企業繁栄の土台が盤石になる。
逆に言えば、この3つの経営スキルが身についていない状況で、他のことをしていても、繁栄のスパイラルはなかなかうまく回らないのだ。
企業の成長と衰退を決定づける経営スキルは「管理会計・マネジメント・リーダーシップ」だ。
このたった3つの経営スキルであっても、本来、一朝一夕では身につかないほどの膨大な知識と経験を要すことは想像に難くないだろう。
しかし、多くの重要タスクを抱えている中小企業の経営者に、十分な時間を与えてくれるはずもない。
本サイトでは、その膨大な経営技術を誰でも習得・実践できるように厳選して公開している。
しかも、私が実際に経営指導企業にのみ提供してきた独自の経営ノウハウなので、効果は実証済みである。
シンプルかつ分かり易く徹底解説しているので、簿記や会計の知識も不要である。本サイトを上手に活用して、重要スキルとマインドの研鑽に役立ててほしい。
会社を衰退から守り、成長に導くには経営者の責任で「管理会計スキル」を習得・運用し、経営者自身の「マネジメント力とリーダーシップ力」をしっかり研鑽しなければならない。
これらのスキルは、社長ひとりの力ですべてをカバーする必要はない。
誰しも得手不得手があり、社長の時間は有限だ。苦手分野は誰かにフォローしてもらえば良いし、時間に余裕がなければ誰かに任せればよい。大切なことは、重要なスキルとマインドをしっかり抑えた会社経営を実践することだ。
(この記事は2016年6月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」