経営改善計画書とは、その会社の最良の未来予想図を示すロードマップのことだ。
経営改善計画書は、主に現状の事業分析・改善計画の骨子・改善計画の数値目標等で構成される。
この記事では、経営改善計画書の目的・効果・機能・作り方、並びに、金融機関における経営改善計画書の概要から経営改善計画書の実効性を上げる方法に至るまで、詳しく解説する。
経営改善計画書の目的は、会社の最良の未来予想図に向かって行う経営改善の推進力向上にある。
経営改善計画書は、会社のあるべき姿とやるべき事を明快に示すので、経営改善を推進するための起点(源泉・基準・土台)になる。
例えば、経営改善計画書を会社の最高経営責任者である社長を筆頭に会社経営に関わる全社員と共有すると、組織全体の経営改善意欲と共に、経営改善の推進力が一段と高まる。
また、目標や課題の必達期限や解消方法の合意形成ツールや目標管理ツールとして活用することで、経営改善の実践度と共に、推進力が一段と高まる。
事業活動が安定してくると経営改善の手が緩みがちになるが、事業最適化(事業再生・事業承継・事業再構築・創造と破壊・後継者育成等)の打ち手が遅れると企業は簡単に衰退する。
従って、危機が迫ってから経営改善計画を策定するのではなく、企業の衰退を防ぐために日常的に経営改善計画を策定し、運用することが極めて重要になる。
経営が安定している環境下での経営改善は、社員や顧客に与える負担が極めて小さいが、コツコツ積み重ねることで大きな成果をもららす。
つまり、経営改善計画の運用精度の高低如何で、経営基盤の強度が決まるのだ。
会社の成長を阻害する経営課題は永久に無くならないので、経営改善が停滞すると会社は必ず衰退する。
従って、経営改善を推進する経営改善計画書の最大効果は、企業の衰退防止、或いは、企業の成長加速になる。
経営改善計画書の効果を最大化するには、常に最適化することが不可欠で、最低でも毎月、計画内容をアップデートしなければならない。
つまり、経営改善計画書は一度作って終わりではなく、絶えず計画内容をアップデートしながら継続運用することが絶対条件になる。
会社を取り巻く経営環境は絶えず変化する。その変化を敏感に察知し、会社への影響度を分析し、すぐさま経営計画に反映する。このサイクルが、経営改善の計画精度と実行効果を高める秘訣になる。
経営改善計画書の機能は、その会社の最良の未来予想図を実現するためのロードマップとしての役割りが大きい。
ロードマップとは、未来予想図を実現するための目標、課題、必達期限、改善手段、改善方法、計画管理等々の詳細な工程や方法を具体的に表す管理ツールの事で、これが経営改善計画書の最たる機能になる。
また、株主や社員、或いは、金融機関等の外部に対するエビデンス資料(根拠・証拠)にもなり、組織の経営改善意欲の向上、或いは、外部との信頼関係強化に役立つツールとしての機能もある。
このように、経営改善計画書には事業活動の精度を高める機能だけでなく、外部とのコミュニケーションツールや関係者とのビジョン共有ツールなど、幅広い機能がある。
経営改善計画書は、主に現状の事業分析・改善計画の骨子・改善計画の数値目標等で構成される。
経営改善計画書は、外部の専門家を頼ることで内容の精度を上げることができ、会社経営の経験値が高い専門家を頼るほど、精度が上がる。
経営改善計画書の作り方のポイントについて、それぞれのパートごとに詳しく解説する。
現状の事業分析は、企業グループ相関分析、ビジネスモデル俯瞰分析、過去の財務資料分析、返済・資金・投資状況分析等々を詳細に行い、事業者概況(債務者概況)、並びに、企業の成長を阻害している経営課題等を明らかにする作業が中心になる。この現状の事業分析は、一般的には財務データのみで行うケースが多いが、企業課題の真実を明らかにし、より緻密でより正確な分析を実現するために現地調査や社員面談等を行う場合もある。(わたしの場合は必ず現地調査と全社員との面談を行う)
改善計画の骨子は、その会社の最良の未来予想図を実現すべく具体的経営改善プランの策定、並びに、そのプランと連動したPL作成(損益計画表)とFCF(フリーキャッシュフロー)の計算が中心になる。金融機関の返済条件をリスケジュールする場合は、金融支援のスキーム策定(ファイナンス戦略の策定)も行い、各金融機関の返済計画書、並びに、その計画と連動したPLやFCFも作成する。
改善計画の数値目標は、改善計画の骨子(具体的経営改善プラン)と連動したPL作成(損益計画表)とFCF(フリーキャッシュフロー)の計算に加えて、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー表)、税額計算書、資金繰り表等の作成が中心になる。
経営改善計画書の作成機関は数多にある。
全国の商工会議所、全国の経営改善支援センター、中小企業庁から認定を受けた経営改善認定支援機関(金融機関・税理士・会計事務所等)など等、沢山ある。
こうした機関に経営改善計画書の作成を依頼すると助成金のサポートが受けられる場合もあるので、費用対効果を考えると決して悪い選択ではないが、ひとつ注意すべき点がある。
それは、経営改善計画書の作成を請け負う多くの機関は、計画書の作成自体が主たる業務になっていて、計画書の推進・実践サポートを主たる業務にしていない、という点だ。
事実、経営改善計画の運用事例の多くは、計画を作成する事業者と計画実行をサポートする事業者が分かれている。
当然ながら、計画の実行力が弱いと、どんなに素晴らしい計画であっても失敗に終わるので、できれば、計画と実行を一貫サポートする外部コンサルタントの活用をお薦めする。
ここの見極めが甘くなると、経営改善計画書を作成して、計画実行がとん挫するリスクが高まるので、くれぐれも注意してほしい。
金融機関等における経営改善計画書の主たる役割りは、融資条件を決定する、或いは、返済計画を担保するエビデンス資料(根拠・証拠)になる。
例えば、金融機関等と日頃から経営改善計画書をしっかり共有していれば、お互いの信頼関係が深まり、他社よりも有利な融資条件を引き出すことができる。
また、返済計画のリスケジュールを金融機関に依頼する場合は、経営改善計画書ありきでスキームが組まれるので、返済リスケと経営改善計画書が必ずワンセットになる。(経営改善計画書の作成機関が多いのはこのような背景があるからだ)
返済リスケは、金融機関等への返済条件を軽減してもらう代わりに、その期間内に経営改善を推進し、倒産による貸し倒れを防ぐために行うものなので、返済計画を保証する経営改善計画書の作成・運用が必須条件になるのだ。
最後に、経営改善計画書の実効性を上げる方法を紹介する。
経営改善計画書の実効性を上げる方法は様々なアプローチがあるが、特に有効かつ実践的な3つの方法について、詳しく解説する。
専門家の協力は、経営改善計画書の実効性を上げる方法として有効だ。経営改善計画書の作成スキルは、事業や財務の分析スキルも必要だが、最も重要なスキルは、俯瞰的かつ客観的な視点で冷静・公平に事業全体を分析し、その会社の最良の未来予想図を提示するスキルになる。外部の専門家を活用すると、最良の未来予想図が描けるだけでなく、社内の人間だけでは見落としがちな深刻な課題を全て拾い上げることができる。
社長の負担軽減は、経営改善計画書の実効性を上げる方法として有効だ。なぜなら、経営改善計画がとん挫する最大の理由は「社長の多忙」にあるからだ。社長が多忙になるほど、経営改善計画の実行意欲を高めるための社内説明や進捗管理がおざなりになり、経営改善がとん挫する。従って、経営コンサルタント等を活用するなどして社長の作業負担を軽減し、経営改善計画書が着実に実行される環境を作ることが不可欠になる。
内容のアップデートは、経営改善計画書の実効性を上げる方法として有効だ。事業活動の結果は必ず数字に表れ、経営課題は企業を取り巻く環境変化と共に絶えず表れる。しかも、未来を100%予測することは不可能なので、全ての計画(決断)には想定外の失敗リスクが潜んでいる。従って、絶えず検証と修正を行い、経営改善計画の実行プランを更新することは不可欠で、最低でも毎月内容をアップデートしなければならない。