中小企業が大企業との取引で注意すべき点は沢山あり、万が一、大企業との取引条件を誤ると、いとも簡単に倒産の危機に瀕することがある。
大企業と中小企業では、会社を取り巻くすべての経営環境に大きな違いがあるので、中小企業が大企業との取引を検討する際は、相当、慎重になる必要がある。
この記事では、中小企業が大企業と取引する際の3つの注意点、並びに、大企業取引で失敗しない秘訣について、詳しく解説する。
中小企業が大企業との取引する際の、大企業が提示する販売計画には注意が必要だ。
例えば、大企業が提示した販売計画を鵜呑みにして取引を開始した途端に販売計画が下振れし、赤字転落や連鎖倒産のリスクが一気に引き上がるケースは珍しくない。
下表は、大手コンビニがある時期に公表した目標店舗数の一覧だ。
店舗形態 |
目標(設定年度) |
2016年9月末時点 |
達成率 |
---|---|---|---|
店舗ブランドA |
3,000店舗(2010年) |
799店舗 |
26.6% |
店舗ブランドB |
3,000店舗(2013年) |
138店舗 |
4.6% |
店舗ブランドC |
500店舗 (2014年) |
0店舗(撤退) |
0% |
ご覧の通り、目標の達成率は最高で26.6%、最低で0%である。大企業の計画が如何に適当なものかを如実に表している。
大きな売上が欲しい中小企業にとって、大企業との取引は「のどから手が出るほど欲しい存在」かも知れないが、注意を怠ると取引自体が失敗に終わる可能性もある。
特に、「大量販売」という殺し文句で、大企業が中小企業に薄利多売の取引条件を迫るケースには、くれぐれも注意してほしい。
中小企業が大企業との取引で特に注意すべき点は、大企業の薄利多売の条件に惑わされないことだ。
資本力の乏しい中小企業は、計画割れでも利益が取れる条件を確保しなければ、会社の衰退リスクが高まる。
計画割れでも利益が取れる条件を引き出したい場合は、数量割引を活用するのがお薦めだ。
数量割引とは、数量に応じて見積単価を設定する約定条件のことで、1,000個~は100円/個、10,000個~は90円/個など、数量が増えるにつれて単価が安くなる数量割引は、合理性があり、理解が得られやすい。
なお、正しい数量割引を提示するには、日頃から正しい原価を把握することが不可欠で、正確な原価を把握せずに安易に数量割引を提示すると、赤字取引に陥るリスクが高まる。(売ってみたら実は赤字だったという話は珍しくない)
また、要求された製造数量が多く、製造能力を拡張する必要がある場合は、高付加価値品を除いて、断った方が得策だ。(或いは外注に出す)
☑安易に製造能力を拡張し、販売が計画割れしたら?
☑設備投資の費用を回収する前に取引を解消されたら?
このような事態に陥ると、中小企業はいとも簡単に倒産の危機に瀕する。
そもそも、中小企業にとって安易な規模拡大は危うい選択であり、経営者が確かなビジョンを持たずに大企業の気まぐれに付き合っていると、10年後には何も残らないという将来もあり得る。
小さな会社であっても、付加価値の高いものを提供し続けた方が、10年、50年、100年と続く会社になる可能性が高く、少なくとも、倒産の危機に瀕するリスクは極めて低くなる。
価格ありきで取引を迫られることも、中小企業が大企業との取引で注意したい点だ。
例えば、1個100円以内であれば若干品質を落としても構わない、という品質軽視と価格ありきの提案は珍しくない。
創意工夫で品質を改良し条件をクリアできるのであれば問題ないが、他社でも作れるような品質にまで落としてしまっては、取引するメリットは殆どない。
なぜなら、一時的には売上が増加するかも知れないが、付加価値のない製造設備が増えるばかりか、製造委託の切り替え(切り捨て)リスクを抱えることになるからだ。
中小企業であれば、大企業との取引であっても、自社でしか作れない付加価値の高い商品で勝負するのが得策だ。
他社でも作れるような品質の商品であれば、他に取引を譲った方が良いだろう。
中小企業は、安かろう悪かろうの価格競争には絶対に耐え切れない。付加価値の発掘と研鑽が、唯一の生きる道なのだ。