事業の存続は「先手を打つこと」が絶対条件になる。
お客様やライバルはこちらの都合にお構いなく先に進むので、対応が後手に回ると成長に陰りが出るからだ。
この記事では、事業の存続を決定づける攻めと守りの先手の打ち方について、詳しく解説する。
先手の打ち方は多種多様にあるが、攻めの姿勢と守りの姿勢に分別すると分かりやすい。
攻めの姿勢の代表格は「顧客創造」と「成長投資」になる。
毎年一定数のお客様は必ず離脱する。売上をキープするためには、その離脱分をカバーする顧客創造の取組みが欠かせない。また、お客様を生み出し続けるための事業価値(商品力・設備力・生産性・ビジネスモデル等)を高める成長投資も不可欠だ。
守りの姿勢の代表格は「現金拡大」と「コスト削減」になる。
会社は現金が無くなった瞬間に倒産するので、現金の拡大は売上や利益の拡大よりも重要になる。また、コストの削減も極めて重要だ。ライバルよりも少ないコストで商品を提供することができれば、競争の優位性をいつまでも保てるからだ。
顧客創造や成長投資などの攻めの姿勢は事業収益の拡大を後押しする。
顧客創造のポイントは二つある。目の前のお客様に尽くすことと、まだ見ぬお客様にアプローチし続けることだ。
取引金額の多寡にかかわらず、熱意と誠実さを持って目の前のお客様に尽くすことは商売繁盛の大原則だ。そのうえで、まだ見ぬお客様に対して会社や商品を知って頂く機会を積極的に作ることが肝要になる。
例えば、会社の強みや商品のニーズ、あるいは、商品の使い方やお手入れの方法をお客様目線で撮影し、その動画をホームページやSNS等のITツールで発信することはじつに効果的だ。
成長投資は、戦術的・戦略的・中長期的な投資をバランスよく実践することが大切だ。
戦術的投資とは、販促・広告・チラシ・在庫充実・キャンペーン等の毎年見直すべき投資。戦略的投資とは、IT化・人材育成・後継者育成・生産性改善等の長期に亘り毎年支出する投資。中長期的投資とは、設備投資・大規模修繕・大型リース等々、比較的投資金額が大きく、投資効果が中長期に及ぶ投資である。
販売業は、戦術的>戦略的>中長期的の割合で投資配分すると成長投資の効果が大きくなり、資本集約型の製造業等は、中長期的>戦略的>戦術的の割合で投資配分すると成長投資の効果が大きくなる。
このバランスを意識しながら成長投資を続けると、事業収益が拡大されるだけでなく、後継者難や設備の老朽化などに悩まされることのない、じつに健全な会社経営が定着する。
現金拡大やコスト削減などの守りの姿勢は事業基盤の強化を後押しする。
現金拡大は、売上より利益、利益より現金を意識することで大きな成果が得られる。
現金残高の目標は月商の2倍以上が目安になる(年商2億円以下は4倍以上)。現金水準が目標の2倍以上になると、経営基盤が一段と強くなる。
コスト削減のネタは、技術革新や社会インフラの進化と共に常に絶えず生まれる。
物流インフラが進化すれば調達コストが削減されるし、自動化や機械化が進めば労働コストが下がる。つまり、徹底的にコストを削減したとしても、世の中が進歩する限りはコスト削減の限界は訪れない。
無駄なコストは、経営者の油断によって生まれるだけでなく、世の中の進歩から後れをとることでも生まれる。無駄なコストを生み出さないためには、会社内部だけでなく、会社の外に対してもアンテナを張って、最新の情報やテクノロジーに関心を持つことが大切だ。
また、お客様目線でコストの在り方を点検し、トライ&エラーを繰り返しながらコストの費用対効果を最大化する取り組みも欠かせない。更に、コスト削減や生産性の改善を推進する一方で、未来の売上を作る成長投資コストを許容することも必要だ。
世界規模で躍進している大企業や盤石な成長を遂げている新興企業だけでなく、元気な会社ほどコスト削減に貪欲で、事業活動にしっかり定着させている。
ここまでの解説で、事業存続のために、攻めの姿勢と守りの姿勢の両面で「先手を打つ」ことがいかに重要かお分かり頂けたと思う。
また、攻めと守りのどちらか一辺倒では事業の存続が難しいこともご理解頂けたと思う。
成長企業ほど、打ち手のスピードが早い。自然消滅する売上をカバーするだけでなく、未来の売上を作るための経営努力を先手先手で実践し、着実に業績を拡大している。
しかも、ベンチャー企業や新興企業等が市場に新規参入する前に、抜かりなく先手を打っている。
目の前の業績が好調でも、少しの油断で対応が後手に回ると、時の経過と共に業績が不調に転じる。とにかく、お客様からの支持を一層得るため、あるいは、ライバルに一段と差をつけるために先手を打ち続けることが事業存続の絶対条件になる。
先手を打ち続ければ、現状に満足せず、全員でさらに上を目指す風土が組織全体に定着し、結果として、経営基盤がますます盤石になる。
できることからで構わないので、優先順位をつけて一点集中で先手先手の経営努力を実践してみてほしい。きっと、大きな成果に結びつくはずだ。