ライバルがいる以上、すべての商談が成約することはあり得ない。
注文を失うリスクを下げるには、失注分析を丹念に行い、注文を失う原因を明らかにした上で、原因改善に努める必要がある。
この記事では、失注分析で営業力を高める方法、並びに、注文取りこぼしの改善手法について、詳しく解説する。
失注分析とは、成約に至らなかった原因を明らかにする分析手法のことだ。
成約に至らなかった失注理由だけではなく、失注件数、失注時の競合数等の情報を多角的に分析することで失注原因を明らかにする、営業力強化に欠かせない分析手法といえる。
失注分析を実践すると、商談の成約率がアップする、営業力が強化される等の効果が得られるが、大切なことは、失注分析の結果データを社内共有することである。
失注分析の結果データを社内共有すると、成約率を上げるためのヒント量が増えるだけでなく、経験の浅い営業パーソンの失注を防ぐ仕組みも強化される。
また、見積条件の競争優位性を高めるためのコスト改善や生産性改善の方向性や必要性も明快になるので、会社全体の稼ぐ力が強化され易くなる。
失注分析の方法について、詳しく解説する。
失注分析する上での必須項目は、失注理由、失注件数、失注率(対失注者・対商談件数・対見積件数等)が挙げられる。
上記項目に加えて、新規顧客の失注率、既存顧客の失注率、営業パーソン毎の失注分析もお薦めする。
また、失注に至った原因を、信頼関係不足、営業力不足、ミスマッチ(価格・品質・技術・納期・商品ラインナップ等)、その他の条件等に細分化すると対策を打ちやすくなる。
なお、失注の定義は、商談後、或いは、見積提示後に注文に至らなかったケースが一般的で、ネットショップの場合は、商品カゴに入った後に決済前に注文を失うケースが失注に該当する。
毎月の失注分析が定着すると、データの厚みが増して、失注改善のヒント量が必然的に多くなる。
また、失注分析の継続期間が長くなるほど、改善実績の検証精度が上がるので、自ずと失注改善の方法が洗練される。
失注分析の活用法について、詳しく解説する。
失注分析を活用する上での注意点は、営業パーソン個人の人事評価の基準にするのではなく、会社全体の営業力を強化するための一つの指標として活用することだ。
失注という結果を責めるために運用するのではなく、失注という客観的結果(事実)を少しでも改善するために運用するということだ。
従って、失注分析と失注改善の運用責任者は社長か営業部長が適任になる。
失注分析の肝は「失注理由」になる。失注理由さえ明らかになれば、失注率を高めるための創意工夫の精度が上がるからだ。
例えば、失注理由が、信頼関係不足・営業力不足にある場合は、営業ツールや営業方法の見直し、或いは、営業パーソンの力量を高める一つの目標指標になる。
失注理由が、価格・品質・技術・納期等にある場合は、工場の生産性や技術力を高める一つの指標になる。
すべての改善施策を打ち尽くしたにも関わらず、同じ失注理由が繰り返されている顧客がいる場合は、脈なし顧客として営業リストから外す判断もできる。
失注理由が分からなければ失注分析の意味を成さなくなるので、見積提示後、一定期間が過ぎても注文がない場合は、失注理由の聞き出し作業をルーティン化するのが良いだろう。