会社の経営が順風満帆に進むと、つい本業以外の事業や株式投資に手を出して失敗するダメな経営者がいる。
本業以外の事業や株式投資等に経営者が没頭するほど、会社の衰退リスクが高まり、たとえ、安泰な経営状態であっても、簡単に倒産危機に瀕することがある。
この記事では、株式投資で失敗したダメな経営者の事例について、詳しく解説する。
経営が安泰でも、経営者の誤った判断がきっかけで倒産危機がやってくることは良くあることだ。
例えば、下記ニュースはある企業の民事再生法適用の記事だが、本来、倒産するような事業構造の会社ではなかった。
生活情報誌等出版・通信販売を手がける最大手U社は2009年3月30日、東京地裁へ民事再生法適用を申請した。帝国データバンクによると、負債は約65億円。2007年3月期の年売上は約166億を計上。しかし、2007年春より導入した会計システムの不具合から混乱が生じ、信用不安が表面化していた。(2009年4月2日新刊JPニュース編集部・一部抜粋)
この会社は、保有会員数十万人超に対して定期購読雑誌と通販を展開していて、定期的に購読収入(1年分の前払い)と通販収入が入ってくる盤石なキャッシュフローを持っていた。
会員数さえ維持できれば倒産しない事業構造ともいえ、事実、この会社の事業は順調に推移していて、会員数と共に利益も右肩上がりで伸びていた。
私自身、当時経営に関わっていた会社の取引先でもあったので、実際にこの会社に訪問したことがあるが、広い面談ルームに高額な絵画を何点も飾っていて、じつに優雅な雰囲気だったのを覚えている。
しかし、結末は、倒産である...。
一体この会社に何が起こったのだろうか?
先のニュースには、「会計システムの混乱が生じ信用不安が...」との倒産理由が公表されていたが、内情は違った。
経営者が会社の余剰資金十数億円を本業とは全く関係のない会社株式に投資を行い、多額の損失を発生させていたのだ。
いわゆる、株式投資の失敗である。
多額のリターンを目論んで株式投資をしたものの、結局、投資先企業の業績悪化と共に投資回収の目途が立たない状況に追い込まれ、加速度的に資金繰りが悪化する事態に陥っていた。
倒産末期の頃は、ノンバンク等からの借金で運転資金を補てんしながら経営を続けていたようだが、やがて手元資金が底をつき、民事再生法の申請に至り、負債額65億円のうち弁済できたのは僅か3億円強(弁済率は僅か5%程度)。
取引先の多くは中小企業だったが、総額60億円強もの債権を泣く泣く放棄する羽目になったのである。
債権者集会にも出席したが、それはそれはすごい剣幕で迫る債権者が沢山いた。
倒産する前日まで、心から信頼して取引していた相手に、たった一夜で裏切られた恨みは計り知れない。
約20年間会社経営を続けてきて、一時の欲で株式投資に失敗し、最後は取引先への債務60億円を踏み倒して去っていく経営者...。
当然ながら、この経営者の信用は会社の倒産と共に失墜した。
ベンチャーキャピタルが新規事業に投資をして上場まで導ける成功確率は5%以下だそうだ。
投資を行う前に有望な100社を選定し、更に1社までふるいにかけるといった緻密な分析作業もあるので、実際に目星をつけて成功に導ける確率は1%にも満たないという見方もできる。
プロの世界でさえ、新しい事業(企業)に投資を行い成功に導くのは至難の業なのだ。
会社が成長し、経営者としての成功を実感した時こそ、創業当時の初心に戻って基本に立ち返ることが大切だ。
欲に駆られて投機分野に投資せず、会社の本業や顧客に投資を行っていれば、この会社の未来は変わっていただろう。
素人が一時の成功に酔いしれて全く別の分野に投資するのは極めてリスキーなこと。ひたむきに本業の経営基盤を強化することが会社経営の正攻法だ。
成長投資は企業の成長発展をけん引する重要な取組みです。しかし、本業と関わりのない分野への投資は危険です。ですから、成長投資は本業の付加価値を高める分野にして下さい。本業の付加価値が高まると、本業の派生ビジネスの成功率が上がるので、自ずと事業の発展性が広がります。