資本欠損とは?|倒産の危機を知らせる資本欠損が図解でよく分かる

資本欠損とは?|倒産の危機を知らせる資本欠損が図解でよく分かる

 

資本欠損とは、資本金が欠損した状態を表す会計用語である。

 

資本欠損は、会社の倒産危機を知らせる重要なサインなので、決して見逃してはならない。

 

この記事では、資本欠損とは何か、並びに、倒産の危機を知らせる資本欠損について、図解で詳しく解説する。

 

 

資本欠損とは何か?

 

資本欠損とは、資本金が欠損した状態のことだが、資本欠損とは何かを理解するには、第一に資本金の仕組みを理解する必要がある。

 

なぜなら、資本欠損とは、会社の損失で資本金が欠ける現象だからだ。

 

資本金とは、会社を設立するために必要な最初の運転資金(自己資金)のことで、資本金という自己資本を元手に会社経営を順調に続けると、事業活動を通じて生み出された利益が上積みされて、会社の自己資本が徐々に増加する。

 

この自己資本は、自身で調達した資金(資本金)と自身で生み出した利益の貯蓄(利益剰余金)なので、返済義務がない。

 

下図は、貸借対照表の構成である。

 

 

赤枠部分が自己資本で、会社を設立したときに払い込まれた「資本金」と、会社が生み出した利益の貯蓄である「利益剰余金」の合計が自己資本、いわゆる純資産になる。

 

自己資本(純資産)の計算式は「資本金+利益剰余金」ということなので、会社が常に利益を出し続けている限りは、資本金よりも純資産が下回ることはなく、自己資本が欠損することもない。

 

逆に、会社の利益がマイナスになり、損失が出ると会社の利益剰余金が減少し、何れ自己資本が欠損する事態に陥る。つまり、資本欠損に陥る。

 

 

資本欠損の正体は利益剰余金の減少

 

資本欠損の正体は利益剰余金の減少にある。

 

資本欠損に至るプロセスを説明すると、まず、会社の利益がマイナスになり損失の垂れ流しが続くと、何れ会社の利益剰余金が0円以下(マイナス)になる。そして、過去の利益の貯蓄である利益剰余金が全てなくなると、資本金が欠損する事態に陥る。

 

この、資本金を損失で食いつぶす現象を「資本欠損」という。

 

下図は、資本欠損の仕組みを図解したものである。

 

 

例えば、会社を500万円で設立して、1期目、2期目ともに▲100万円の赤字、合計▲200万円の累損になった場合、設立当初から利益剰余金が増加することはなく、2年で▲200万円の資本金が欠損することになる。

 

貸借対照表上では資本金の額は不変なので、帳簿上は資本金500万円+利益剰余金▲200万円=純資産300万円という記載で表示されるが、実態は、資本金がマイナス△200万円欠損した、ということになる。

 

資本欠損とは、上記例のように資本金が損失で欠ける現象で、資本欠損を数式で表すと、下記算式の通りとなる。

 

資本欠損の数式

資本欠損 = 資本金 > 純資産(資本の部)

 

資本欠損は経営改革のラストチャンス!!

 

資本欠損は、会社の倒産危機を知らせる重要なサインだ。

 

従って、資本欠損に陥る予兆を感じた瞬間に抜本的な経営改革を断行しないと、経営破たんのリスクが飛躍的に高まる。

 

当然ながら、資本欠損の状態を放置すると、倒産状態に等しい債務超過に陥るのは時間の問題となる。

 

資本欠損からの会社再建は難しくないが、債務超過からの会社再建は、大きな痛みを伴う経営改革を断行しなければ成功しない。

 

中小企業の経営者が誰かに助けを求める段階は、殆どが「債務超過」に陥った時だが、債務超過で助けを求めても、最早、手遅れだ。

 

資本欠損は経営破たんを知らせる危険なサインである。自覚症状を感じたときは、時すでに遅しなので、絶対に資本欠損を見過ごさないでほしい。

 

 

資本欠損が倒産危機にならない例外ケース

 

資本欠損が倒産危機にならない例外ケースがある。

 

それは、黒字経営が持続できており、なお且つ、現金残高が増加傾向にある時だ。

 

現在進行形で資本欠損の状況が悪化している場合は待ったなしで経営改善に着手しなければならないが、今現在、すでに黒字経営に浮上し、なお且つ、現金残高が増加傾向に転じていれば何の問題もない。

 

この状況下で大切なことは、資本欠損を解消するために経営改善のスピードを加速し、一つでも多くの成果を積み重ねることである。

 

この経営姿勢が定着すると、資本力がますます強化され、時の経過と共に経営基盤が盤石になる。

 

伊藤のワンポイント
 

創業期や成長段階で一時的に陥る資本欠損は経営破たんのリスクが低いですが、赤字経営が常態化した結果の資本欠損は深刻です。一刻も早く資本欠損を解消しないと打つ手が限られてきますので、躊躇なく経営改革を断行してください。経営の苦労を軽減させるには先手必勝を意識することです。