累損とは累積損失の略で、会社の損失の累積金のことだが、累損を抱えている会社は意外と多い。
累損(累積損失)を抱えている会社は経営が悪化していると思われがちだが、果たして真相はいかに。
この記事では、累損とは何か、累損赤字と累損黒字の概要、並びに、累損時の税金メリットや債務超過との関係性に至るまで、詳しく解説する。
累損とは、累積損失の略で、会社の損失の累積金のことだ。
帳簿上は、貸借対照表の純資産の部に計上され、具体的には「利益剰余金のマイナス表示」が累損の金額となる。
利益剰余金は会社が獲得した利益、或いは、損失の累積金なので、利益ができるとプラスに転じるが、損失が出るとマイナスに転じる。
従って、会社の損失が膨らむほど、利益剰余金のマイナス金額も膨らみ、その金額がそのまま累損(累積損失)として帳簿(貸借対照表)に残ることになる。
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累損の根本原因は赤字経営にある。
赤字経営は、収入よりも支出が多い状態なので、赤字に転落すると、即、累損が発生する。
しかし、累損が発生したからといって、経営が悪化するかといえば、そうとも言い切れない。
例えば、帳簿上は赤字経営であっても、損失金額よりも減価償却費の大きければ、累損が出たとしても、キャッシュフローがプラスなので経営はさほど悪化しない。
また、長年蓄積した不良性の資産を処分することで、一時的に累損が発生した場合も、キャッシュフローがプラスであれば経営は悪化しない。
累損が発生した後も、利益剰余金のプラスの蓄積が多額にある、或いは、自己資本比率が高い等の場合も、経営は悪化しない。
このように、累損は赤字経営が原因で発生するが、累損の発生状況によっては、累損=経営悪化とはならないケースもある。
累損は黒字経営でも残る。
なぜなら、累損は、過去に累積した損失の金額なので、累積した損失を穴埋めするだけの利益が蓄積されない限り、累損は一掃されないからだ。
過去に大きな赤字決算をしている会社や過去の赤字金額の累積が大きな会社等は、一回の黒字経営だけでは累損を一掃することができないケースが多い。
なお、累損が残っている場合は、金融機関の融資条件や取引先の与信管理に悪影響を及ぼす場合があるが、黒字経営であれば累損のマイナス評価が軽減されるので、やはり、経常的に黒字経営をキープすることが大切になる。
累損と税金の関係はじつに深い。
なぜなら、累損は、黒字決算の利益を相殺する効果があるからだ。
過去の累損のおかげで利益がゼロになれば法人税負担もゼロになるため、節税効果が生まれる。つまり、節税メリットが累損唯一のプラス面といえる。
累損の事をマイナスの資産と呼ぶことがあるが、大企業であれ、中小企業であれ、節税目的で累損を活用するケースはよくあるパターンになる。
累損が発生しても、すぐに債務超過に陥ることはない。
累損が発生すると、過去の利益の蓄積である利益剰余金が減少し、その利益剰余金がマイナスになると資本欠損、更に、利益剰余金のマイナス金額が資本金以上に大きくなると債務超過に陥る。
債務超過は倒産状態といっても過言ではないが、創業期、或いは、大型の投資案件を実行した直後は、累損が膨らみ債務超過に陥り易くなるので、経営状況、或いは、経営方針によっては債務超過も止む得ない時がある。
赤字経営の常態化で多額の累損を抱えた結果の債務超過は、倒産リスクが極めて高いので、抜本的な経営改善を断行することが大切になる。
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