売上高成長率の計算式と適正水準(目安)|企業の成長性分析に用いる経営指標

売上高成長率の計算式と適正水準(目安)|企業の成長性分析に用いる経営指標

 

売上高成長率とは、会社の売上がどの程度成長したかを示す経営指標のことだ。

 

売上高成長率売上伸び率、或いは、売上伸長率ともいうが、売上高成長率を見れば、その会社の将来性が自ずと見えてくる。

 

例えば、売上高成長率がプラス成長であれば会社の衰退リスクが低く、売上高成長率がマイナス成長であれば会社の衰退リスクが高い、ということが分かる。

 

この記事では、売上高成長率(売上伸び率)の計算式や適正水準(目安)から経営に活かすポイントに至るまで、詳しく解説する。

 

 

売上高成長率(売上伸び率)とは?

 

会社の発展は売上の成長がなければ望めないので、売上高成長率は重要な経営指標のひとつといえる。

 

また、売上高成長率(売上伸び率)の適正具合が判定できれば、現時点の会社の立ち位置が分かり、今後の対策を立てやすくなる。

 

例えば、売上高成長率が適正水準よりも劣っていれば、売上を伸ばすための対策を冷静に改善することができるし、売上高成長率が適正水準内に収まっていれば、売上を伸ばすための活動を確信をもって推進することができる。

 

中小企業の会社経営は、闇雲に管理するよりも、しっかりとした目標指標を持って管理した方が、数倍、経営効率が上がる。

 

特に、売上高成長率は会社の将来を見通す重要な経営指標であると共に、経営改善の要の指標にもなり得るので、中小企業の会社経営に大いに役立つ。

 

 

売上高成長率(売上伸び率)の計算式

 

売上高成長率(売上伸び率)の計算式は下記の通りである。

 

売上高成長率(売上伸び率)の計算式

単年成長率の場合 : 売上高成長率=〔(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高〕×100

 

単月成長率の場合 : 売上高成長率=〔(当月売上高-前年同月売上高)÷前年同月売上高〕×100

 

例えば、当期売上高が10億円で前期売上高が9億円の場合の売上高成長率(売上伸び率)は、〔(10億円-9億円)÷9億円〕×100=11.11%になる。

 

当月売上高が0.9億円で前年同月売上高が1億円の場合の売上高成長率(売上伸び率)は、〔(0.9億円-1億円)÷1億円〕×100=△10%になる。

 

なお、売上高成長率を単月比較で計算する場合は、季節変動や特需に伴う売上の増減よって、実態とかけ離れた結果が出ることがあるので、季節変動や特需が多い会社は、単年比較で売上高成長率を計算した方が良い。

 

売上高成長率の単年比較の計算は、決算を待たずとも、売上の年計を毎月集計すれば容易に計算できるので、単月比較と共に運用することをお薦めする。

 

 

売上高成長率(売上伸び率)の適正水準(目安)

 

中小企業の売上高成長率(売上伸び率)の適正水準(目安)は下記の通りである。

 

売上高成長率(売上伸び率)の適正水準(目安)
超優良水準 6~20%

売上高成長率が6~20%の範囲内に収まっていれば超優良水準になる。この水準で売上が推移していれば会社は着実に成長する。現在の取り組みを積極的に継続展開すれば益々の売上成長が望める可能性が高い。

 

また、この水準で成長してる時は、会社のサービスを低下させないために、組織や経営管理面の体制強化を同時に進める必要がある。

 

安全水準 0~5%

売上高成長率が0~5%の範囲内に収まっていれば安全水準になる。この水準で売上が推移していれば会社経営は安定する。成長の前期、もしくは、成長の後期に、この水準に位置していることが多い。

 

更なる売上成長を望める位置にあるので、新しい経営戦略と戦術を積極展開すれば、超優良水準へステップアップできる可能性がある。超優良水準からの降格であれば、新たな取り組みを検討する必要がある。

 

準危険水準 ▲1~▲10%

売上高成長率が▲1~▲10%の範囲内は準危険水準になる。売上の成長が止まり、会社の業績が傾き始めている可能性が高い。既存の市場、既存のノウハウを活用して、新しい売上を創出する取り組みが必要である。

 

また、売上減少分の経費を削減しないと、利益が減少し、赤字経営に転落するリスクが高まる。新たな取り組み+コストダウンをセットで取り組むことが大切だ。

 

危険水準(1) ▲11~▲20%

売上高成長率が▲11~▲20%の範囲内は危険水準になる。売上の成長が完全に止まっている。既に、赤字経営に陥っていて、厳しい経営状況に陥っている可能性が高い。

 

この水準まで売上が落ち込んでいる場合は、真っ先に、会社のコストカットを行い、会社の黒字化を最優先しなければならない。黒字化した後、既存の市場、既存のノウハウを活用して、新しい売上を創出する取り組みを行い、売上の早期回復を図ることが危険水準を脱するコツになる。

 

危険水準(2) 21%以上

売上高成長率が21%以上であれば危険水準になる。売上は下がっても問題だが、伸びすぎても問題が生じる。この場合、会社の収益面は問題ないが、組織や経営管理の体制に問題が生じる可能性がある。

 

例えば、

 

☑注文や発送対応が追いつかない

 

☑商品製造や品質管理がキャパオーバー

 

☑人員不足で業務の効率が著しく低下している

 

等々、組織や経営管理の体制に綻びが出始めて、会社のサービスが低下し、客離れを引き起こすことがある。

 

また、20%を超える急激な成長は、ブーム等に乗った一時的なものかも知れない。このような急成長の最中に投資を加速すると、売上成長率が鈍ったときに人員が溢れたり、経費が賄えなかったり、操業度が落ちたり、等々、倒産リスクが高まる。

 

会社が急成長した後に倒産するケースは稀に起こっている。会社が急成長した時ほど気を引き締めて、堅実な会社経営を心掛ける必要がある。

 

超危険水準 ▲21%以下

売上高成長率が▲21%以下であれば超危険水準になる。会社は赤字経営で、資金繰りにも支障が出始めている。恐らく、倒産の可能性が極めて高い。

 

この水準まで売上が落ち込んでいる場合は、待ったなしで会社再建の手を講じる必要がある。不採算部門の閉鎖、人員整理、返済計画のリスケジュール、等々、会社の足を引っ張る部分を早急に取り除かないと、会社全体が蝕まれてしまう。

 

会社が倒産すると経営者はもちろん、家族や社員、取引先も不幸にしてしまう。従って、売上成長率が危険水準に陥った時点で、待ったなしで経営改善の手を講じなければならない。経営改善の着手が遅れると、時すでに遅しとなる。

 

売上高成長率で企業成長率は測定できない!?

 

売上高成長率を用いて企業成長率を測定する経営者を稀に見かけるが、この測定方法で、正しい企業成長率を測定することはできない

 

なぜなら、企業の正しい成長率は、「売上」というたった一つの指標だけで測定することができないからだ。

 

事実、売上が拡大している企業が倒産の危機に瀕するケースは珍しくなく、売上高成長率が企業成長率を正確に表していないことは明白である。

 

企業の正しい成長率を測定するのであれば、売上高に、利益や現金といった、会社存続に欠かせない指標をプラスしなければならない。

 

また、数値目標として売上高成長率を掲げる場合も、同様の注意が必要だ。

 

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売上高成長率を経営に活かすポイント

 

売上高成長率(売上伸び率)は会社の成長を端的に表す、使い勝手の良い経営指標である。

 

売上高成長率を日頃からモニタリングしていれば、「マイナス成長は経営改革の検討」を、「プラス成長であっても、行き過ぎたプラス成長は経営管理体制の見直し」を、というように、より良い成長環境を整えるための準備を手前手前で講じることができる。

 

物事の成功は段取りで決まると云われているが、中小企業の会社経営も同じである。普段から準備を怠ることなく会社の経営にあたっていれば、自ずと会社の成長、強いては、経営の成功がみえてくるものだ。売上高成長率は、経営者が積極的に活用したい経営指標の一つだ。

 

伊藤のワンポイント
 

売上の成長は企業の存続に欠かせません。一般的には顧客の1~2割は常に入れ替わっていると云われていますので、売上高成長率をプラス維持することは並大抵なことではありません。しかし、その事実から逃げていては、売上は減る一方です。安泰はあり得ないという前提に立ち、果敢に挑戦する姿勢が新しい売上を生み出します。