企業成長率とは、その企業がどの程度成長したかを客観的に示す経営指標のことだ。
企業成長率が分かると、将来の業績推移を見通すことができるので、プラス成長は倒産リスクが低く、マイナス成長は倒産リスクが高い、といったことも容易に分かるようになる。
企業は絶えず成長発展することが存続の条件であり、成長なき企業に待っているのは、衰退、或いは、会社倒産という残酷な結末しかない。
企業成長率は会社経営の最重要指標といっても過言ではないので、ぜひ、理解を深め、日ごろから運用してほしい。
この記事では、企業成長率の計算方法から適正水準(目安)に至るまで、詳しく解説する。
企業の成長を測定する指標は様々あるが、最も大切な指標は「売上・利益・現金」の3つの指標になる。
企業は売上の源泉になる顧客なくして存続することができない。つまり、顧客創造、或いは、市場拡大を表す売上の成長なくして、企業の成長はあり得ない。
さらに、売上だけ成長していても、会社の利益が増加しなければ、企業の存続は危ういものになる。事実、売上が成長している一方で利益が減少し、倒産の危機に瀕する企業は決して少なくない。
加えて、売上と利益が共に成長していたとしても、会社の現金が増加しなければ、企業の存続は厳しいものになる。なぜなら、黒字経営であっても、現金がなくなると会社が倒産するからだ。事実、ある年の倒産企業の半数は黒字経営だった、というデータもある。
企業成長率を計算するうえで「売上・利益・現金」、この3つの指標は欠かせない要素であり、どれか一つでも欠けると、正しい企業成長率の計算はできなくなる。
企業成長率の計算方法は下記の通りである。
売上成長率 =〔(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高〕×100
利益成長率=〔(当期営業利益高-前期営業利益高)÷前期営業利益高〕×100
現金成長率=〔(当期現金残高-前期現金残高)÷前期現金残高〕×100
例えば、当期売上高が10億円で前期売上高が9億円の場合の売上の企業成長率は、〔(10億円-9億円)÷9億円〕×100=11.11%になる。
当期営業利益高が1億円で前期売上高が0.8億円の場合の利益の企業成長率は、〔(1億円-0.8億円)÷0.8億円〕×100=25%になる。
当期現金残高が3億円で前期現金残高が2.5億円の場合の現金の企業成長率は、〔(3億円-2.5億円)÷2.5億円〕×100=20%になる。
なお、各企業成長率の計算は、必ず年計の業績比較で行わなければならない。なぜなら、単月の業績比較だと、季節変動や特需に伴う業績の増減よって、実態とかけ離れた結果が出ることがあるからだ。
各企業成長率の年計の業績比較計算は、決算を待たずとも、各業績の年計を毎月集計すれば容易に計算できるので、ぜひ試してほしい。
中小企業の企業成長率の適正水準(目安)は下記の通りである。
各企業成長率が6~20%の範囲内に収まっていれば超優良水準である。この水準で成長が持続すると、会社は着実に成長していき、現在の取り組みを積極的に継続展開すれば益々の企業成長が望める可能性が高い。
なお、この水準で成長してる時は、会社のサービスを低下させないために、組織や経営管理面の体制強化を同時に進める必要がある。
各企業成長率が0~5%の範囲内に収まっていれば安全水準である。この水準で成長が持続すると会社経営は安定する。成長の前期、もしくは、成長の後期に、この水準に位置していることが多い。
更なる企業成長を望める位置にあるので、新しい経営戦略と戦術を積極展開すれば、超優良水準へステップアップできる可能性がある。超優良水準からの降格であれば、新たな取り組みを検討する必要がある。
各企業成長率が▲1~▲10%の範囲内は準危険水準である。企業の成長が止まり、会社が衰退し始めている可能性が高い。
対策としては、既存の市場、既存のノウハウを活用して、新しい売上を創出する取り組みが必要である。或いは、売上の減少を食い止めて、利益と現金を増やす戦略展開を積極化する必要がある。
各企業成長率が▲11~▲20%の範囲内は危険水準である。企業の成長が完全に止まっている。既に、赤字経営に陥っていて、厳しい経営状況に陥っている可能性が高い。
この水準まで企業成長率が落ち込んでいる場合は、真っ先に、会社のコストカットを行い、会社の黒字化を最優先しなければならない。黒字化した後、既存の市場、既存のノウハウを活用して、新しい売上を創出する取り組みを行い、売上の早期回復を図ることが危険水準を脱するコツである。
各企業成長率が21%以上であれば危険水準である。企業の成長率は下がっても問題だが、伸びすぎても問題が生じる。この場合、会社の収益面や財務面に問題はないが、組織や経営管理の体制に問題が生じる可能性がある。
例えば、
☑注文や発送対応が追いつかない
☑商品製造や品質管理がキャパオーバー
☑人員不足で業務の効率が著しく低下している
等々、組織や経営管理の体制に綻びが出始めて、会社のサービスが低下し、客離れを引き起こすことがある。また、各企業成長率が20%を超える急激な成長は、特需やブーム等に乗った一時的なものかも知れない。
このような急成長の最中に投資を加速すると、企業成長率が鈍ったときに人員が溢れたり、経費が賄えなかったり、操業度が落ちたり、等々、倒産リスクが高まる。会社が急成長した後に倒産するケースは稀に起こっている。会社が急成長した時ほど気を引き締めて、堅実な会社経営を心掛ける必要がある。
各企業成長率が▲21%以下であれば超危険水準である。会社は赤字経営で、現金も低水準で、資金繰りにも支障が出始めている。恐らく、倒産の可能性が極めて高い。
この水準まで企業成長率が落ち込んでいる場合は、待ったなしで会社再建の手を講じる必要がある。不採算部門の閉鎖、人員整理、返済計画のリスケジュール、等々、会社の足を引っ張る部分を早急に取り除かないと、会社全体が蝕まれてしまう。
会社が倒産すると経営者はもちろん、家族や社員、取引先も不幸にしてしまう。従って、各企業成長率が危険水準に陥った時点で、待ったなしで経営改善の手を講じなければならない。経営改善の着手が遅れると、時すでに遅しとなる。
企業成長率は、会社経営の最重要経営指標といっても過言ではない。
なぜなら、企業成長に欠かせない「売上・利益・現金」の3つの指標の成長実態が明確になるからだ。
企業成長率を日頃からモニタリングしていれば、「マイナス成長は経営改革の検討」を、「プラス成長であっても、行き過ぎたプラス成長は経営管理体制の見直し」を、というように、より良い成長環境を整えるための準備を先手先手で講じることが可能になる。
また、企業成長率が分かれば、将来の倒産リスクを回避する対策も打ちやすくなる。普段から準備を怠ることなく会社の経営にあたっていれば、自ずと会社の成長、強いては、経営の成功がみえてくるものだ。
企業成長率は、すべての経営者が活用すべき経営指標である。
売上、利益、現金を絶えず伸ばすことが企業成長の基本原則です。売上は競争優位性、利益は付加価値、現金は資本効率、この3つのポイントを高める努力が成長を後押しします。どこかに弱み(手抜き)があると、そこが原因で企業が衰退しますので、常に3つのポイントを意識してください。