人件費と人件費率の計算と理想の目安から労働分配率との関係性まで徹底解説

人件費と人件費率の計算と理想の目安から労働分配率との関係性まで徹底解説

 

人件費とはヒトに対して支払う費用の総称で、人件費率とは、収入に対する人件費の構成比率のことである。

 

人件費はすべての企業において発生する費用であり、殆どの企業において最大の費用構成を占める重要度の高い費用だ。そして、人件費率は会社の収入に対する人件費バランスを示す経営指標なので人件費率ほど重要な経営指標はない。

 

わたし自身、経営コンサルタントとして様々な会社の経営者にお会いしてきたが、人件費と人件費率に対する経営者の悩みは実に多い。

 

この記事では、人件費と人件費率の計算と理想の目安から労働分配率との関係性まで、詳しく解説する。

 

 

 

人件費とは?人件費率とは?

 

人件費とは、企業の事業活動に参加しているヒトに対して支払う費用の総称のことである。

 

人件費の集計対象は、社員給与のほか、一時金等のボーナス支給額、パートやアルバイトへの雑給、役員に対する報酬、給与に付随する法定福利費や福利厚生費なども含まれる。

 

また、税理士や弁護士に支払う支払報酬、講師に支払う謝礼(支払手数料)、業務外注先への外注費なども、人件費の集計対象になる。

 

一般的に、ひとりの社員を整理すると、その社員の報酬の1.5~2倍のコストが削減されるので、いかに人件費が重要な費用であるかが理解できると思う。

 

人件費率とは、収入に対する人件費の構成比率のことで、収入に対する人件費バランスを示す経営指標である。

 

殆どの会社の最大経費は人件費なので、人件費率ほど重要な経営指標はない。

 

 

人件費率の計算方法は?

 

人件費率の計算は、収入に対する人件費の構成比率を求めることで計算でき、計算式は下記の通りである。

 

人件費率の計算

売上高人件費率=(人件費÷売上)×100

 

売上総利益高人件費率=(人件費率÷売上総利益)×100

 

例えば、売上5,000万円、売上総利益2,500万円、人件費1,250万円だった場合の人件費率は下記の通りになる。

 

人件費率の計算例

売上高人件費率=(1,250÷5,000万円)×100=25%

 

売上総利益高人件費率=(1,250÷2,500万円)×100=50%

 

以上の通り、人件費率は、売上と売上総利益(粗利)の二つの収益をベースに二通りの計算方法に分かれるが、業種業態や部門が変わっても高い公平性が保て、わたし自身、お薦めしている計算方法は、後者の売上総利益高人件費率である。

 

なお、人件費の合計を求める場合は、社員給与(パート・アルバイト含む)の他、役員報酬、外注費、法定福利費、福利厚生費、支払報酬、謝礼等の支払手数料、など等、ヒトに関わる全ての費用が含まれるので留意してほしい。

 

【関連記事】経費率と人件費率の計算式と適正水準

 

 

人件費率と労働分配率の関係性

 

人件費率と同じような意味と役割を持つ、労働分配率という経営指標がある。

 

労働分配率とは、売上総利益に占める人件費の構成比率のことで、会社の分配可能な付加価値(売上総利益)が、どの程度労働の対価(人件費)に支払われているかを示す経営指標である。

 

労働分配率は会社の人的投下の構造(労働集約型or資本集約型)を明らかにするだけでなく、人件費配分の適正可否の判定基準としても活用できるので、人件費率同様、重要な経営指標といえる。

 

なお、労働分配率の計算方法は、前章で解説した売上総利益高人件費率と同じになる。

 

 

人件費率の理想の目安は?

 

売上総利益高人件費率の理想の目安は、概ね下表の通りである。

 

売上総利益

100

100

100

100

100

人件費率

70%

60%

50%

40%

30%

営業利益

10%

10%

10%

10%

10%

人的投下

労働集約型

準労働集約型

標準

標準

資本集約型

 

売上総利益を100として、営業利益は、中小企業の標準目標水準である10%としている。

 

人件費の理想の目安は、前提として、自分の会社が、労働集約型なのか、資本集約型なのか、はたまた標準的な産業なのかを判定する必要があるが、上表の通り、概ね30%~70%の範囲内に収まる。

 

【関連記事】経費率と人件費率の計算式と適正水準

 

 

人件費率の高い業種「コールセンター」

 

人件費率が高い水準の労働集約型の代表例は「コールセンター」である。

 

コールセンターの運営には沢山の人員(電話オペレーター)が必要な反面、その他の費用はさほどかからない。

 

なぜなら、拠点は地代(家賃)の安い地方が多く、地代家賃以外の経費も電話通信費以外は大してかからないからだ。

 

このように、人件費に比べて、人件費以外の費用割合が著しく低いのが、労働集約型の特徴であり、このような産業は、総じて、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり、人件費率が高くなる。

 

 

人件費率の低い業種「製造業」

 

人件費率が低い水準の資本集約型の代表例は、無人化が進んでいる「製造業」である。

 

無人化が進んでいる製造工場は、監督する人間が少なく済み、殆どが機械任せの運営になるが、一方で、人件費以外の費用はたくさんかかる。例えば、機械のリース代やメンテナンス費用、減価償却費用、などである。

 

このように、人件費に比べて、人件費以外の費用割合が著しく高いのが、資本集約型の特徴であり、このような産業は、総じて、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり人件費率が低くなる。

 

 

人件費率の低い業種「美容サロン等」

 

人件費率が低い水準の資本集約型の代表例として、「美容サロン等」のサービス業も挙げられる。

 

なぜなら、利便性の高い駅近で競争を強いられる美容サロン等のサービス業は、地代相場が高い駅近のテナントに入居するケースが多く、テナント料のほか、多額の広告宣伝費や設備代など等、人件費以外の費用が多くかかるからだ。

 

このように、美容サロン等は、人件費よりも、人件費以外の経費が多くかかる資本集約型の特徴を持っていて、売上総利益に占める人件費の構成比率、つまり人件費率が低くなるケースが多い。

 

美容サロンのほか、ブランドショップ、アパレルショップ、不動産屋、駅近飲食店、歯科医院、弁護士事務所なども資本集約型の産業に近く、人件費率が低いケースが多い。

 

 

人件費率が標準の業種「スーパー等小売業、飲食店、卸売業等」

 

人件費率が標準の業種は、労働集約型と資本集約型のバランスが中間に位置する、スーパー等小売業、飲食業、卸売業などである。

 

人件費率が標準の業種の適正水準は概ね40%~50%なので、50%超は人件費率が高いということになる。

 

人件費率が適正水準より高い場合は、人件費の割に収益が少ないか、収益の割に人件費が多いか、のどちらかの状態に陥っているということなので、収益改善と同時に労働効率の改善を進めることが必要である。

 

 

人件費率の業界平均

 

人件費率の業界平均を気にする経営者は実に多く、わたし自身も、製造業やサービス業など、さまざまな業界の経営者から人件費率の平均を尋ねられることがよくある。

 

人件費率を経営目標として運用することは結構なことだが、業界平均を気にすることの無意味さを理解している経営者は少ない。

 

なぜなら、人件費率の業界平均はまったく使えない指標だからである。

 

どういう事かというと、人件費率の業界平均は、僅かな上位集団の実績を、数多の下位集団が足を引っ張る構図で計算されているからだ。

 

つまり、業界平均には、数多くの下位集団の実績が混入しているので、業界平均=優良会社という相関性は殆ど成立しないのだ。

 

当然ながら、人件費率の業界平均を目標に掲げて改善活動を展開しても、トップ集団に追いつくことはできない。

 

業界平均を達成したからといって、実は標準よりも下位ということもあり得る。

 

業界平均を目標にするのではなく、理想の目安を基準に目標設定することが、トップ集団に追いつく秘訣であり、適正な人件費率を確立する確かな方法なのだ。

 

 

人件費率を経営に活かすポイント

 

人件費率は人件費を上手にコントロールするための経営指標として有効に活用できる。

 

例えば、自分の会社が目標にすべき人件費率が分かれば、人員の補充調整や人員の配置換えなどによる労働効率の改善、など等、人件費率を改善するための初動判断を適切に下せるようになる。

 

人件費率が悪化しているにも関わらず人員を補充している会社、或いは、人件費率が適正値よりも下回っているにも関わらず人員を十分に補充せずに社員に無理な労働環境を押し付けている会社など等、人件費のコントロールがうまくいっていない中小企業は少なくない。

 

中小企業が、人員の補充調整を検討・判断するうえで、人件費率は有効な根拠として活用できるので、是非、積極的に活用してほしい。

 

伊藤のワンポイント

人件費は殆どの企業にとって、最大のコストになります。人件費率の把握はもちろんですが、最も大切なのは自分の会社に適した人件費の目安を持って日頃から適切にコントロールすることです。人件費のコントロールを誤ると、高い確率で会社が衰退するので、くれぐれも注意してください。

 

➡NEXT「経費率の計算方法と適正水準」へ

 

 

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