営業利益は会社の本業の儲けを示す経営指標で、営業利益率は儲けの水準を示す経営指標になる。
会社経営は利益を出すことで初めて成立するので、営業利益と営業利益率は最重要指標といって過言ではない。
この記事では、営業利益率の計算式と適正水準(目安)、並びに、営業利益率の効果的な運用方法について、詳しく解説する。
営業利益とは、会社の本業の利益(儲け)を示す経営指標のことで、営業利益の水準を示す経営指標を営業利益率という。
営業利益は売上から売上原価や販売管理費を差し引くことで計算される。そして、会社の収入に占める営業利益金額の構成比率を計算すると営業利益率が分かる。
営業利益と営業利益率は、会社の収益性を示す経営指標だが、会社経営は利益を出すことで初めて成立するので、この二つの指標ほど重要な経営指標はない。
当たり前だが、営業利益率の水準が低く、営業利益が十分に取れないビジネスを続けていては、少しの経営環境の変化よって会社が赤字経営に転落し、何れ会社が倒産してしまう。
従って、中小企業経営者が安定経営を目指すのであれば、然るべき営業利益率の水準を確保し、適正な営業利益金額を上げることが欠かせない。
営業利益率とは、会社の収入に対する利益の構成比率のことである。
会社の収入には、売上と売上総利益(粗利)のふたつの収入があるため、営業利益率の計算方法も二通りに分かれる。
それぞれの計算式(求め方)は下記の通りである。
売上高営業利益率=(営業利益÷売上高)×100
売上総利益高営業利益率=(営業利益÷売上総利益高)×100
例えば、売上が1,000万円、売上総利益が500万円、営業利益が50万円だった場合、夫々の営業利益率の計算式は下記の通りになる。
売上高営業利益率=(50万円÷1,000万円)×100=5%
売上総利益高営業利益率=(50万円÷500万円)×100=10%
会社経営の本質は利益拡大にあるので、経営者の行動原理を明快にする営業利益目標ほど重要なものはない。
事実、会社の利益拡大がおぼつかず衰退の一途を辿る中小企業などは、営業利益目標がない、或いは、誤った営業利益目標を掲げているケースが多い。
安定経営を実現するには、然るべき営業利益目標、或いは、目指すべき営業利益率の目標が不可欠なのだ。
利益目標を立てるための然るべき利益指標はたくさんある。
単純に売上総利益率(粗利率)を利益目標に据えるケース、前章で紹介した売上高営業利益率や売上総利益高営業利益率、或いは、売上高経常利益率を利益目標に据えるケース、など等、、、。
どの利益指標を目標に採用したら良いのか悩んでいる中小企業経営者も多いのではないかと思うが、一般的には、売上総利益率(粗利率)か売上高営業利益率の何れかの指標を、利益目標に採用している会社が多いと思う。
じつは、売上総利益率(粗利率)と売上高営業利益率は、利益目標の指標として欠陥があり、場合によっては業績悪化のリスクを生み出すことがある。
例えば、売上総利益率(粗利率)は、コストを差し引く前の仮の利益なので、儲けの実態を示していない。
従って、コスト管理が杜撰になりやすく、蓋を開けてみたら大赤字という状況を招きかねない。
売上高営業利益率は、業種業態や事業構成によって不公平感がでる場合がある。例えば、下表のように、ひとつの会社の中に複数の事業部があったとする。
全社合計 |
A事業部 |
B事業部 |
|
---|---|---|---|
社員20名 |
社員10名 |
社員10名 |
|
売上 |
3,000万円 |
1,200万円 |
1,800万円 |
売上原価 |
1,000万円 |
200万円 |
800万円 |
売上総利益 |
2,000万円 |
1,000万円 |
1,000万円 |
販売管理費 |
1,800万円 |
900万円 |
900万円 |
営業利益 |
200万円 |
100万円 |
100万円 |
営業利益率 |
6.67% |
8.33% |
5.56% |
A事業部、B事業部、同じ社員数で営業利益の金額は共に100万円だが、売上高営業利益率はA事業部よりも、B事業部の方が▲2.77%劣っている。
同じ営業利益金額を稼いでいるにも関わらず、売上高営業利益率が劣っているからといって、経営者がB事業部の社員の成績を悪く評価したら、社員はどう思うだろうか?
恐らく、不公平感から不満に思う社員が出てくるだろう。
また、A事業部とB事業部、お互いの目標営業利益率を掲げようと思っても、双方が納得する合理的な営業利益目標を掲げることの難しさも残る。
売上高営業利益率には、公平な営業利益水準の測定だけでなく、合理的かつ公平な営業利益目標を立てることができないデメリットがあるのだ。
会社の利益目標として営業利益率を効果的に運用するのであれば、売上高営業利益率ではなく、売上総利益高営業利益率を採用しなければならない。
なぜなら、前章で解説した売上高営業利益率のような不公平感が解消されて、公平な営業利益水準の測定と共に、合理的かつ公平な営業利益目標を立てることができるからだ。
前章のケース例を用いて「売上総利益高営業利益率」を計算すると下表の通りになる。
全社合計 |
A事業部 |
B事業部 |
|
---|---|---|---|
社員20名 |
社員10名 |
社員10名 |
|
売上総利益 |
2,000万円 |
1,000万円 |
1,000万円 |
販売管理費 |
1,800万円 |
900万円 |
900万円 |
営業利益 |
200万円 |
100万円 |
100万円 |
営業利益率 |
10% |
10% |
10% |
ご覧の通り、営業利益の構成比率を算定する際の分母を「売上」から「売上総利益」に置き換えるだけで、A事業部もB事業部も、同じ営業利益率になった。
これであれば、両事業部の収益性(営業利益)がイーブンであることを合理的に示すことができる。また、営業利益率の改善も、共通の指標を持って取り組むことが可能になる。
働いている社員も、不満を抱くことなく、会社の利益を上げるために働いてくれるだろう。
公平な営業利益水準の測定と共に、合理的かつ公平な営業利益目標を立てるには「売上総利益高営業利益率」が最も適しているのだ。
中小企業の売上総利益高営業利益率の適正水準(目安)は下表の一覧表の通りである。
売上総利益 |
100 |
100 |
100 |
営業利益 |
20 |
10 |
0 |
---|---|---|---|
営業利益率 |
11~20% |
10% |
0~9% |
利益判定 |
超優良 |
標準 |
要改善 |
営業利益率が11%~20%の範囲内であれば超優良水準である。この水準の営業利益率がキープできれば成長投資のサイクルが良好に回るので、持続的な会社成長が実現できる。
営業利益率が10%であれば標準的な利益水準である。優良水準に向けた経営改善を継続しないと、少しのきっかけで衰退に向かうことがある。更なる利益拡大に向けた意識を強く持つことが大切である。
営業利益率が0%~9%であれば、改善の余地が大いにある。
営業利益率がマイナスであれば赤字経営ということになる。早急に再建計画を作成し、黒字化を目指す必要がある。黒字化の取り組みが遅くなればなるほど、赤字脱却の難易度が高まるばかりとなる。
営業利益率が20%以上であれば、儲かりすぎである。
人件費の水準が低すぎないか、保守修繕に不足がないか、取引先に無理を押し付けていないか、等々、会社の内外に歪みが出ていないか否かを確認する必要がある。会社の内外に歪みがあると、成長が一転して、あっという間に会社が衰退することがある。(急成長の後に倒産する会社は殆どがこのケースである)。主だった歪みが無いようであれば営業利益率の水準が20%以上でも問題ない。
なお、営業利益率が上記適正指標の標準から優良(10%~20%)の水準に達していても、営業利益金額が小さすぎると、安定成長に支障が出る場合がある。
従って、営業利益率の改善と共に、売上(営業利益金額)を常に拡大するという目標も決して忘れてはいけない。
会社の安定経営を目指すのであれば、売上増加と共に営業利益金額が一定水準を上回っている必要がある。売上が増加傾向にあり、なお且つ、営業利益率が11~20%の水準に達していれば、会社の成長基盤はますます盤石になる。
営業利益率は、会社の生存を左右する大きな要素になり得る。
なぜなら、会社の生存を保障するのは売上ではなく「利益」だからだ。
営業利益率を見落としたまま売上拡大に走った結果、会社が傾く中小企業は少なく、営業利益率の適切な目標なくして、企業の成長はないといっても過言ではない。
また、売上高ではなく、粗利対比の「営業利益率」のモニタリングも安定経営を実現するうえで欠かせないポイントになる。
売上総利益高営業利益率の推移を長期的にモニタリングしていくと会社経営の正否が見えてくる。
例えば、
☑営業利益率が上昇傾向にあれば正しい経営(収益性と競争力アップ)
☑営業利益率が下降傾向にあれば正しくない経営(収益性と競争力ダウン)
というように、経営状態の正否が分かるので、先手先手で経営を見直すことができる。
営業利益率の水準が適正か否か、営業利益率の目標運用が正しくされているか否か、しっかりチェックしてほしい。
営業利益は本業の儲けを示す重要指標です。ですから、営業利益を見ずして、まともな会社経営はできません。然るべき利益目標を掲げることはもちろん、利益の実績を毎月モニタリングして推移をチェックすることも大切です。収益性や競争力の低下は必ず営業利益に表れます。