経営分析とは|企業の財務分析から効率性分析まで徹底解説

経営分析とは|企業の財務分析から効率性分析まで徹底解説

 

経営分析は、企業の経営状態を可視化するために行われる会計手法の総称である。

 

経営分析は、上場企業などの経営状態を客観的に評価する財務分析、企業力を高めるために経営状態を主観的に評価する管理会計や計数管理など、その分析手法は多岐にわたる。

 

この記事では、経営分析の基本概要、並びに、企業の財務分析から効率性分析に至るまで、詳しく解説する。

 

 

経営分析とは?

 

経営分析は、企業の経営状態を可視化するために行われる会計手法の総称である。

 

経営分析は、企業(経営者)の立場から分析を行う内部分析(管理会計等)と、企業(経営者)以外の立場から分析を行う外部分析(財務分析等)の二つに大別される。

 

例えば、企業力を高めるために経営状況を主観的に分析する管理会計等の分析手法は内部分析になる。

 

事業活動の結果は必ず数字に表れるので、管理会計の運用精度によって企業経営の安全性や成長性は大きく変わり、事実、管理会計が定着している企業の大半は黒字経営(安定経営)を実現している。

 

一方、上場企業などの経営状態を客観的に評価する財務分析は外部分析になる。財務分析は、投資分析や信用分析の手法として株式市場(株式投資家)や信用会社(与信管理)に幅広く活用されている。

 

 

財務分析とは?

 

財務分析は、どんな会社であっても、大よそ共通の公式や分析手法で会社の実態を外部に公表するために行う分析手法で、主に株式市場や信用会社で活用される経営分析手法になる。

 

財務分析は、主に株式市場や投資家向けの判断情報になるので、極めて高い公平性と透明性が求められ、大よそ1960年代からアメリカの財務アナリストを中心に、企業の利益の量だけでなく質を問う概念として定着している。

 

また、財務分析は、客観性と信頼性が高い財務諸表等の会計データを基礎にして、その企業の経営状況、経営方針、将来の見通し等の重要情報を内部整理、或いは、外部公表する分析方法なので、上場企業(上場準備企業)の監査において、分析的手続きの一環として行われる。

 

財務分析は外部公表を前提とした経営分析手法で、一方の管理会計等は内部分析に活用する経営分析手法になるので、財務分析と管理会計は、似て非なるものになる。

 

 

経営分析の基本手法1(財務分析)

 

財務分析(外部分析)は、客観性と信頼性が高い財務諸表等の会計データを基礎にした分析手法が基本になる。財務分析の主要項目は以下の5つに分類される。

 

収益性分析

企業の収益水準を分析するもので、分析には主に損益計算書のデータを用いる。売上総利益、営業利益、経常利益等の各種利益率のほかにも総資本利益率(ROA)、自己資本利益率(ROE)などの経営指標も用いられる。

 

成長性分析

企業の売上高や利益水準の成長率(伸び率)を分析するもので、分析は主に複数年度の損益計算書のデータを用いる。売上高、営業利益高の各種成長率のほかにも年平均成長率(CAGR)などの経営指標も用いる。

 

安全性分析

企業の資産(資本)の調達構造、並びに、支払能力や返済能力を分析するもので、分析には主に貸借対照表のデータを用いる。長期・短期の支払い能力を評価する。主に、自己資本比率、負債比率、流動比率、当座比率などの経営指標が用いられる。

 

生産性分析

生産性つまり企業が投入した経営資源がもたらす付加価値や労働生産性を分析するもので、分析には財務諸表と勤怠管理データ等を用いる。主に、労働分配率、人時生産性などの経営指標が用いられる。

 

効率性分析

企業がインプットした資産(資本)をどれほど効率的に活用して売上や利益といったアウトプットを上げることができているかを分析するもので、分析には財務諸表のデータを用いる。主に、総資本回転率、固定資産回転率など経営指標が用いられる。

 

※各経営指標の分析手法は当サイト内の「中小企業の経営指標と経営分析手法」を参照

 

経営分析の基本手法2(管理会計等)

 

管理会計等(内部分析)は、いかに経営の実態を掴むか、或いは、経営に役立つ数字をいかに導き出すかという観点での分析手法が基本になる。

 

従って、前章で解説した財務分析に加えて、業種業態によって変わる経営指標の適正水準の把握や、その企業独自の分析手法や経営指標の発掘が肝になる。

 

また、管理会計の運用精度を高めるには、定点観測と継続分析が不可欠になる。なぜなら、継続性なくして、独自の経営指標の発掘や適正水準の把握はできないからだ。

 

以下に、どんな業種であっても有効活用できる経営指標と分析手法を紹介する。

 

人時生産性

人時生産性とは、労働の投下に対する時間当たりの収益性を評価する経営指標のことで、本業の人時生産性を示す「営業利益金額÷総労働時間」の分析が最も重要になる。適正水準は常に増加になる。

 

現預金・純資産の推移

現金が無くなると会社が倒産する。純資産がマイナスに転じると倒産状態の債務超過に陥る。従って、現預金と純資産の推移分析は必須になる。適正水準は常に増加になる。

 

売上総利益高営業利益率

売上総利益高営業利益率とは、本業の利益水準(収益性)を評価する経営指標のことで、本業の利益水準を示す「(営業利益高÷売上総利益高)×100」の分析が重要になる。標準水準が10%以上、優良水準が20%以上になる。

 

※各経営指標の分析手法は当サイト内の「中小企業の経営指標と経営分析手法」を参照

 

経営分析の基本手法3(比較分析)

 

経営分析は財務諸表や経営データを元に様々な経営指標を用いて行うが、単一な分析結果を見ても、分析企業の経営状況を把握することはできない。

 

分析結果は、前年実績や業界平均との比較、或いは、特定指標に対する構成比率や相互比率の推移比較を行うことで、数値の良し悪しを客観的に判定することができる。経営分析における比較分析の基本手法は以下の2つがある。

 

実数分析

実数分析とは、各経営指標の数値を前年数値、或いは、他社数値や業界平均の数値等と比較する分析手法で、前年対比が典型になる。

 

比率分析

比率分析とは、各経営指標の構成比率や相互比率等を通じて行う分析手法で、関係比率法(例:流動資産と流動負債の割合を百分比で示した流動比率)と構成比率法(例:財務諸表の各項目の構成比を百分比で示したもの)が典型になる。

 

効率性分析とは?

 

効率性分析とは、財務分析のひとつで、資本効率性分析ともいう。

 

企業がインプットした資産(資本)をどれほど効率的に活用して売上や利益といったアウトプットを上げることができているかを分析するもので、分析には財務諸表のデータを用いる。

 

効率性分析に用いる経営指標は、主に、総資本回転率、在庫回転率、売上債権回転日数、労働分配率、人時生産性などが用いられる。

 

効率性分析のアプローチは二つある。ひとつは、資本回転率、在庫回転率、売上債権回転日数など、資本(お金)等の投入要素の効率を分析する財務分析的アプローチ。

 

もう一つは、労働生産性(労働分配率)、人時生産性など、資本(お金)等の投入要素以外の効率を分析する管理会計的アプローチがある。

 

※各経営指標の分析手法は当サイト内の「中小企業の経営指標と経営分析手法」を参照

 

効率性分析の基本手法

 

効率性分析の代表的な経営指標は、総資本回転率、在庫回転率、売上債権回転日数などがある。

 

総資本回転率が大きければ少ない資本を活用して多くの売上高を得ていることになる。在庫回転率が大きければ効率よく在庫が売上に転換していることになる。売上債権回転日数が短ければ売上代金の回収スピードが速く運転資金の効率性が高いことになる。

 

効率性分析の結果数値は、時系列の推移分析や実数分析(前年数値、或いは、他社数値や業界平均比較)を行い、より詳細に分析する。

 

但し、業種平均は下位企業の値が混入しているので、実数分析は自社の前回分析数値、或いは、上位企業の数値を目標指標(ベンチマーク)にするとよい。

 

また、効率性分析の結果(目標)は、高ければ良いとは限らない。例えば、在庫回転率の向上を求めるあまり在庫欠品に伴う利益の機会損失を招いては本末転倒になる。

 

従って、効率性分析は、常にリスクを加味した上で、適正水準、或いは、目標設定を行うことが肝要になる。