正しい経営は会計基準の理解から

中小企業の会計基準と会計の考え方

中小企業の会計基準と会計の考え方

 

全ての会社は商法に基づいて、「公正なる会計慣行を斟酌した」決算書を作成する義務が課せられています。

 

しかしながら、大企業と中小企業では決算書を作成するうえでの会計の基準や考え方に大きな違いがあります。

 

例えば、大企業(上場企業)の財務諸表は、税法の他、金融商品取引法、証券取引法、会社法、投資家保護法、国際会計基準等々、複雑な会計基準のもとに作成されています。

 

一方、中小企業の財務諸表は、税法に準拠した会計基準で作成されます。

 

税法に準拠した会計基準ですので、

 

中小企業の財務諸表は、確定申告の課税所得を確定するための「根拠資料」という位置付けとなります。

 

確定申告の課税所得を確定するための根拠資料は下記3点です。

 

貸借対照表

 

損益計算書

 

株主資本等変動計算書

 

中小企業の場合、この3点の根拠資料のことを「決算書」と呼びます。

 

従って、年に1回、決算を迎える月に決算書だけを作成さえすれば、中小企業の会計義務は果たされた、ということになります。

 

 

中小企業の会計基準は最低限のルールにすぎない

 

実際、多くの小規模事業主、零細企業は、毎月の月次決算を行わず、決算月に決算書を作成して、確定申告を迎えるケースが多いです。

 

しかしながら、年に1回の決算書の作成だけでは、会社の経営課題を明らかにすることはできません。

 

また、銀行等の金融機関や取引先、株主や従業員の信頼も勝ち取ることが出来ません。

 

中小企業の会計基準は最低限のルールに過ぎません。

 

やはり、公正なる会計慣行を斟酌した基準で毎月の月次決算書(月次試算表)を作成し、その過程を経て作成された決算書でなければ、「信用力」は得られません。

 

といっても、中小企業の会計ルールは不明瞭な点が多いですので、「公正なる会計慣行を斟酌した基準」と言われても、戸惑いを覚える経営者も多いと思います。

 

そこで、中小企業庁は、決算書を作成する際に、中小企業にふさわしく、また、過重な負担とならないものとして中小企業が準拠することが望ましい会計のあり方を「中小企業の会計」として明らかにしました。

 

 

中小企業庁の「中小企業の会計」について

 

「中小企業の会計」に基づいた決算書作成のチェックリストは下表の通りです。

項目

チェック内容

1

記帳 決算書作成の基礎となる会計帳簿の記帳は、整然かつ明瞭に行っていますか。すべての取引事実を証拠書類に基づき、正確かつ網羅的に記録していますか。記帳は取引後できる限り速やかに行っていますか。

2

現金及び預金 金融機関が発行した残高証明書と合っていますか。

3

金銭債権と貸倒引当金 売掛金・受取手形・貸付金等で取立不能のおそれがあるものはありませんか。ある場合には、その取立不能見込額を貸倒引当金として計上していますか。

4

有価証券 原価法を採用した有価証券において、時価が取得原価より著しく低いときは、将来回復の見込みがある場合を除いては、時価で評価していますか。

5

棚卸資産 原価法を採用した棚卸資産において、時価が取得原価より著しく低いときは、将来回復の見込みがある場合を除いては、時価で評価していますか。

6

固定資産 固定資産の減価償却は、定率法、定額法その他の方法に従い、毎期継続して、規則的に行っていますか。予測できなかった著しい資産価値の下落があった場合、減損額を控除していますか。

7

負債項目 支払うべき負債はもれなく計上していますか。金融機関からの借入残高は、残高証明書と合っていますか。

8

引当金 将来の費用又は損失が特定されその発生原因が当期以前の事象にあり、費用又は損失の発生の可能性が高く、設定金額の見積りを合理的に行いうるものであり、かつ、法的債務性のあるものは、引当金を計上していますか。

9

退職給付債務 将来、追加拠出の可能性がある退職給付制度を採用している場合、退職給付引当金を計上していますか。

10

費用・収益の計上 一定の期間に企業が獲得した収益と、それを獲得するために費やされた費用とを対応させていますか。費用の計上基準は、発生主義(※1)を原則としていますか。収益の計上基準は、実現主義(※2)を原則としていますか。

 

チェックリストの全ての項目がクリアされていれば、会社の実質的な財務状況が適切に反映された決算書が作成されていると考えられます。

 

第三者に対して信用力のある財務諸表ということになりますので、金融機関や取引先の信頼を得るにふさわしい決算書といえます。

 

但し、上記チェックリストは適正な決算書を作成するための最低限のルールです。

 

金融機関や取引先の信頼を得るための資料にはなりますが、会社の経営課題を明らかにする資料としては物足りません。

 

先に言った通り、会社の経営課題を明らかにするためには、年に1回の決算書のみならず、毎月の月次決算書(月次試算表)を適正に作成しなければなりません。

 

作成義務がないから作成しないでは、いつまで経っても、長期的な成長が望める会社に変貌することはありません。

 

 

※1 費用計上基準の発生主義とは、モノやサービスを使った時点で費用計上するルールのことです。例えば、切手を10枚購入して、未使用が5枚あったとすると、使用した5枚分が通信費として費用計上、未使用の5枚分は貯蔵品として資産計上します。

 

※2 収益計上基準の実現主義とは、モノやサービスの代金である現金や売掛金の受け取りが確定した時点で収益を計上するルールです。モノやサービスの売上債権の確定は、納品書や請求書の発行時期に合わせます。

 

 

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