経営者が知っておくべき法律10選|会社経営・社長業に関わる基本の法律知識

経営者が知っておくべき法律10選

 

会社を経営するうえで守るべきルールは沢山あるが、その中でも、最低限守らなければならないルールが法律になる。

 

なぜなら、道徳や倫理といったルールから外れても罰則(社会的制裁は除く)はないが、法律から外れると必ず罰則を課せられるからだ。

 

この記事では、経営者が知っておくべき法律10選、並びに、会社経営・社長業に関わる基本の法律知識について、詳しく解説する。

 

 

会社経営(社長業)に関わる法律を知るメリット

 

中小企業の場合は、法律問題に触れる機会は少ないかも知れないが、やはり、会社経営(社長業)に関わる法律を知るメリットは数多にある。

 

例えば、社員を雇えば労働基準法や労働契約法など、商品やサービスを顧客に販売すれば民法、商法、消費者契約法など、広告展開には景品表示法などの法律がついて回る。

 

当然ながら、経営者が法律を知っていれば、利害関係者同士の権利と義務、或いは、会社の利益を守るための判断を正しく下すことができる。

 

逆に、経営者が法律を知らなければ、良かれと思ってやったことが実は法律に抵触していて、会社衰退のきっかけを作ることになるかも知れない。

 

無知は最大の罪なり、と云われるが、法律も例外ではない。

 

法律を知ろうが、法律を知るまいが、法律を破れば、即、罰則が下される。最悪、刑事事件に発展する場合もあり得る。

 

商品の返品やサービスの解約、損害賠償請求、会社イメージの棄損、など等、法律を破った場合の罰則リスクは決して小さくない。

 

以下に紹介する10の法律は、中小企業経営者が最低限知っておくべき法律になる。経営者の法律知識が会社の明暗を分かつ場面は沢山あるので、是非とも理解を深めてほしい。

 

 

社長が知るべき「会社経営に関連する法律」

 

社長が知っておくべき「会社経営に関連する法律」の代表例は、税法、労働基準法、個人情報保護法の3つの法律になる。

 

税法は会社の税金に関する法律、労働基準法は最低の労働基準を定めた法律、個人情報保護法は顧客情報の取り扱いに関する法律である。

 

この3つの法律は、すべての中小企業に関わる法律なので、経営者はしっかり抑えておきたい。それぞれの法律について、詳しく解説する。

 

税法

税法は、会社のあらゆる税金に関する法律だ。会社の利益に課される法人税、会社の資産に課される固定資産税、社員の給与に課される源泉所得税、会社の売上等の収益に課される消費税、事業承継時に課される相続税、など等、会社経営と税金は切っても切れない関係にある。

 

税金の支払いを見誤って会社の現金が枯渇する事態に陥ると、倒産の危機に瀕することもあり得るので、税法は経営者がしっかり抑えておきたい法律である。税法に無頓着な経営者は、高い確率で経営に失敗する。

 

労働基準法

労働基準法は、最低の労働基準を定めた法律だ。労働基準法は、会社で働くすべての労働者に関わる法律である。また、この法律を知ると、社員である労働者の権利と義務、並びに、経営者が守るべき義務が良く分かる。例えば、労働基準法には、給与の支払いルール、休日日数、時間外労働の賃金計算基準、或いは、社員に課された法律上の義務、など等、最低限の労働基準が事細かに定められている。

 

労働基準法の違反は罰則だけに止まらず、刑事事件に発展する場合もあるので、法律違反のリスクが極めて大きい。この点も、経営者が知っておきたい大切なポイントである。

 

個人情報保護法

個人情報保護法は、顧客や社員情報を保有する全ての会社にかかわる法律だ。平成27年9月9日に個人情報保護法が公布された際は、5千件以上の個人情報保有事業者のみが法律の対象だったが、全面施行日の平成29年5月5日以降は、個人情報を保有するすべての事業者が法律の対象になる。

 

個人情報の漏えい事故等で被害が発生したときは、被害者(顧客或いは社員)から民事上の損害賠償責任を追求される可能性があるので、経営者がしっかり理解しておきたい法律である。

 

 

社長が知るべき「営業販売に関連する法律」

 

社長が知っておくべき「営業販売に関連する法律」の代表例は、独占禁止法、消費者契約法、景品表示法の3つの法律になる。

 

独占禁止法は公正な競争環境を整える法律、消費者契約法は消費者保護に関する法律、景品表示法は商品やサービスの表示を規制する法律である。

 

この3つの法律は、殆どの中小企業に関わる法律なので、経営者はしっかり抑えておきたい。それぞれの法律について、詳しく解説する。

 

独占禁止法

独占禁止法は、公正な競争環境を整える法律だ。独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できる環境を推進する法律なので、市場を私的独占する企業に対してさまざまな法的制限が設けられている。例えば、同じ業界や地域の会社がカルテル(複数事業者が価格を決定して競争原理をなくすこと)を結び、私的に市場を独占すると法律違反になる。

 

また、製造者という有利な立場を利用して、小売業等の販売者に対して一方的に価格(定価)を厳守させる行為も法律違反になる。或いは、小売業等の販売者が、不当に安い価格で市場を独占しようとする行為も法律違反になる。独占禁止法は、時に企業のマーケティングやブランディングの障害になることがあるので、経営者がしっかり理解しておきたい法律である。

 

消費者契約法

消費者契約法は、商品やサービスを末端消費者に販売している会社に関わる法律だ。例えば、販売時の勧誘に問題があると売買契約が無効になる、消費者が一方的に契約解消できるクーリングオフ制度、消費者に不利な特約が無効になる、などの消費者保護の規定は、すべてこの法律の範囲内である。

 

消費者契約法を知ると、消費者契約時の不当な勧誘や不当な契約条項が事細かに分かるので、経営者が知っておきたい法律である。

 

景品表示法

景品表示法は商品やサービスの表示を規制する法律だ。景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制している法律なので、末端消費者向けの商品やサービスを提供している中小企業の経営者はしっかり抑えておきたい法律である。

 

この法律の対象は幅広く、商品パッケージのみならず、ホームページ、チラシ、ダイレクトメール、各種広告、さらには、営業トークといった形のないまで、法律の対象になる。この法律を知ると、不当な表現や誇大広告の判定基準がよく分かるので、経営者が知っておきたい法律である。

 

 

社長が知るべき「会社間取引に関する法律」

 

社長が知っておくべき「会社間取引に関連する法律」の代表例は、下請法、不正競争防止法の2つの法律になる。

 

下請法は下請取引の公正化と下請事業者の利益保護に関する法律、不正競争防止法は事業者間の公正な競争環境を整える法律である。

 

この2つの法律は、殆どの中小企業に関わる法律なので、経営者はしっかり抑えておきたい。それぞれの法律について、詳しく解説する。

 

下請法

下請法は下請取引の公正化と下請事業者の利益保護に関する法律だ。下請法を知っていると、不当な下請け関係をスムーズに解消することができるので、経営者が抑えておきたい法律である。例えば、発注側からの不当な値下げ要求、支払代金の減額、不当返品、協賛金や社員派遣の強要などは、双方合意のうえでも下請法の違反になる。

 

また、この法律を知ると、下請法の取引内容や対象がよく分かるので、下請け構造にある中小企業の経営者は知っておきたい法律である。

 

不正競争防止法

不正競争防止法は事業者間の公正な競争環境を整える法律だ。例えば、他社のブランド名、ブランドロゴ、ブランド形態を模倣した商品やサービスは不正競争とみなされ法律違反になる。

 

また、他社の営業秘密情報を不正利用した場合、他社の会社名等をホームページのドメイン名に利用した場合なども、不正競争とみなされ法律違反になる。不正競争防止法の違反は罰則だけに止まらず、刑事事件に発展する場合もあるので、法律違反のリスクが極めて大きい。この点も、経営者が知っておきたい法律のポイントである。

 

 

社長が知るべき「権利保護に関する法律」

 

社長が知っておくべき「権利保護に関連する法律」の代表例は、著作権、産業財産権の2つの法律になる。

 

著作権は著作物保護に関する法律、産業財産権は産業財産保護に関する法律である。この2つの法律は、殆どの中小企業に関わる法律なので、経営者はしっかり抑えておきたい。それぞれの法律について、詳しく解説する。

 

著作権

著作権は著作物保護に関する法律だ。著作権で保護される著作物の代表例は言語の著作物である。小説や論文のみならず、個人のブログ文章も著作物の対象になる。また、オリジナルの商品画像なども著作物として保護される。

 

ホームページ、ネットショップ、チラシやカタログ作成の際に、著作物を転用、若しくは、多少の編集を加えて使用した場合は、著作権の侵害で訴えられる可能性があるので注意が必要だ。この法律を知ると、著作物の対象と、著作物の使用ルールがよく分かるので、中小企業の経営者は知っておきたい法律である。

 

産業財産権

産業財産権は産業財産保護に関する法律だ。産業財産権の保護対象の代表例は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つの独占使用権である。商品やサービスの技術、或いは、商品名や商品デザインが権利侵害で訴えられるケースは、すべての中小企業で起こり得ることである。

 

産業財産権の侵害は販売停止や損害賠償請求等の罰則だけに止まらず、刑事事件に発展する場合もあるので、法律違反のリスクが極めて大きい。この点も、経営者が知っておきたい法律のポイントである。