中小企業における減価償却の重要性

不適正な減価償却は会社の倒産リスクを高める

不適正な減価償却は会社の倒産リスクを高める

 

減価償却とは、資産性の高い設備等を耐用年数に応じて費用化していく制度です。

 

個人事業の場合は強制償却ですが、法人の場合は任意償却となっています。

 

中小企業の場合、減価償却を適正に行っていない会社が意外と多くあります。

 

減価償却を適正に行わないと、会社の倒産リスクが高まります。

 

 

減価償却の仕組みとは?

 

減価償却の仕組みを簡単に説明します。

 

例えば、100万円の機械設備を現金で購入したとします。

 

減価償却の条件は、耐用年数3年,定額法,償却率0.334とします。

 

この場合、減価償却費の計算は、1年目:100万円×0.334,2年目:100万円×0.334,3年目:期首残高 33.2万円-1円となります。時間の経過とともに、資産価値が減少していくことになります。

 

減価償却の経理処理は下図の通りです。

 


 

このように、時間の経過とともに価値が減少する資産を、「減価償却資産」といいます。

 

一方、土地など、時間の経過と共に価値が減少しない資産は減価償却資産に該当しません。

 

上記例の場合、3年償却の減価償却資産ですので3年目で減価償却が完了します。

 

最終年に1円の資産価値を残しているのは備忘価格です。(平成19年4月1日以後に購入された資産に関しては備忘価格として1円の残存価額を残します)

 

備忘価格まで償却が終わって、会社の設備として使用状況もなく廃棄をした場合は、「固定資産除却損」で備忘価額を0円にすることができます。

 

或いは、廃棄ではなく1円以上で売却できた場合は、残存価額と売却益の差額分を「固定資産売却益」として利益計上することになります。

 

なお、資産購入時に現金決済が完了していれば、その後の「減価償却費」の費用計上時は現金が流出しません。

 

つまり、「減価償却費」は、会社の損金として経費処理できますが、現金流出が伴わない特殊性のある費用です。

 

減価償却資産の耐用年数や減価償却費の計算方法に関しては税法で取り決めがなされています。

 

 

不適正な減価償却の一例

 

不適正な減価償却は、会社経営にどのような弊害を及ぼすのでしょうか?

 

中小企業の場合、減価償却資産を保有しているにも関わらず、毎期、減価償却を行っていないケースが多く見受けられます。

 

減価償却を行わないと、その資産の減価分の費用が損益に反映されませんので、正しい会社損益が把握できなくなってしまいます。

 

例えば、年間200万円のアルバイト1名を解雇して、その作業を800万円の機械で代替したとします。

 

機械の耐用年数を5年とすると、年間の減価償却費は160万円(定額法)です。

 

売上は1,000万円、アルバイト料以外の経費は600万円とします。

 

年間200万円のアルバイトの会社損益

科目

金額

科目

金額

アルバイト料

200万円

売上

1,000万円

その他経費

600万円

 

 

当期利益

200万円

 

 

 

アルバイトを解雇して機械を導入したが、減価償却を行わない会社損益

科目

金額

科目

金額

(減価償却費)

(0円)

売上

1,000万円

その他経費

600万円

 

 

当期利益

400万円

 

 

 

アルバイトを解雇して機械を導入し、減価償却を適正に行った会社損益

科目

金額

科目

金額

減価償却費

160万円

売上

1,000万円

その他経費

600万円

 

 

当期利益

240万円

 

 

 

減価償却を行わないケースは当期利益が400万円です。

 

減価償却を適正に行ったケースは当期利益が240万円です。

 

アルバイトを解雇してから機械に代替した後の会社の損益として正しいのどちらでしょう?

 

答えは、後者ですね。

 

減価償却を適正に行うと、アルバイト1名を雇用していた時の損益と、アルバイトを解雇して機械を導入した後の損益の比較が正しく行えて、費用対効果(※1)の判定を正確に行うことができます。

 

一方、減価償却を行わないと、利益が過剰に計上されてしまい、正しい利益が把握できません。

 

従って、合理的な設備投資の判断もできなくなってしまいます。

 

更に、減価償却を行わずに利益が過剰に計上された場合、その利益に対して、法人税がかかってしまいます。

 

上記例の場合、(400万円-240万円)×実効税率40%=64万円を、法人税として現金が外に流失してしまいます。

 

このように減価償却は、正しい損益を把握するために必要なだけでなく、節税効果の側面もあります。

 

 

減価償却費は現金が残る特殊な費用!

 

減価償却は現金支出が伴いませんので、費用として計上していても、現金がなくなるわけではありません。

 

従って、上記例の場合であれば、年間160万円の減価償却費分の現金が会社に残ることになります。償却期間が5年であれば5年間で800万円の現金が会社に残る計算になります。

 

この800万円を原資にして、次の再投資を行うのです。

 

 

もし仮に、減価償却費で貯蓄した現金を投資に使わず、経営者自身の報酬や接待交際費に散財してしまったらどうなるでしょう?

 

当然のことながら、ある日突然、耐用年数が過ぎた機械が壊れてしまい投資が必要になったときに現金を用意することができなくなってしまいます。

 

減価償却費を適正に計上していても、投資計画を作成していないと、せっかく減価償却で貯蓄した現金を、再投資に活かすことができません。

 

減価償却の基本は、適正な減価償却費の計上と、投資計画の作成・運用です。

 

※1 費用対効果とは、投下した資本(費用)に対して利益がどれだけ増加したかを測定すること。投下した資本(費用)よりも利益の増加額が多ければ費用対効果が高いということ。

 

 

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