減価償却をしない会社は倒産リスクが高い|減価償却をしない会社の弊害とは?

減価償却をしない会社は倒産リスクが高い

 

減価償却とは、資産性の高い設備等を耐用年数に応じて費用化していく制度だが、法人の場合は任意償却ということもあり、減価償却をしない中小企業も珍しくない。

 

減価償却をしない会社は倒産リスクが高く、事実、倒産の危機に瀕した中小企業の調査に入ると、減価償却の管理が杜撰なケースが多い。

 

この記事では、減価償却をしない会社の倒産リスクとデメリットについて、詳しく解説する。

 

 

減価償却をしない会社の倒産リスク

 

減価償却をしない会社に表れる弊害は様々あり、例えば、会社の損益が不明瞭になる、投資効率の判定が曖昧になる、再投資の内部留保に支障がでる等々は典型的な弊害で、これらの弊害が深刻になるほど倒産リスクが高くなる。

 

また、杜撰な減価償却の管理が原因で、成長投資の鈍化を招き、赤字経営に転落することもあり得る。

 

減価償却資産を保有しているにも関わらず、毎月、減価償却をしない中小企業は少なくないが、減価償却を適正にしないと、その資産の減価分の費用が損益に反映されないため、正しい事業収支が把握できなくなる。

 

また、減価償却資産保有の妥当性や減価償却資産の費用対効果(※1)なども、全く分からなくなる。つまり、減価償却をしないと、まともな会社経営ができなくなるのだ。

 

杜撰な減価償却は経営者ひとりの責任とは言えない場合がある。なぜなら、杜撰な減価償却を黙認している税理士の先生が数多くいるからだ...。

 

※1 費用対効果とは、投下した資本(費用)に対して利益がどれだけ増加したかを測定すること。投下した資本(費用)よりも利益の増加額が多ければ費用対効果が高いということ

 

 

減価償却をしない会社の弊害とは?

 

減価償却をしない会社の弊害を、具体例を用いて解説する。

 

例えば、年間200万円のアルバイト1名を解雇して、その作業を800万円の機械で代替したとする。

 

機械の耐用年数を5年とすると年間の減価償却費は160万円(定額法)、売上は1,000万円、アルバイト料以外の経費は600万円とする。

 

機械導入前の損益計算は下表の通りになる。

科目

金額

科目

金額

アルバイト料

200万円

売上

1,000万円

その他経費

600万円

当期利益

200万円

 

アルバイトを解雇し機械を導入した後の損益計算(減価償却をしない)は下表の通りである。

科目

金額

科目

金額

(減価償却費)

(0円)

売上

1,000万円

その他経費

600万円

当期利益

400万円

 

アルバイトを解雇し機械を導入した後の損益計算(減価償却を適正にした)は下表の通りである。

科目

金額

科目

金額

減価償却費

160万円

売上

1,000万円

その他経費

600万円

当期利益

240万円

 

減価償却をしないケースは当期利益が400万円で、減価償却を適正にしたケースは当期利益が240万円になる。減価償却をする・しないの当期利益の差は「160万円」にもなる。

 

アルバイトを解雇して機械を導入した後の会社の損益計算として正しいのどちらだろうか?

 

考えるまでもなく、答えは後者である。

 

減価償却を適正に行うと、機械導入前後の損益を正しく比較できるので、費用対効果の判定を正確に下すことが可能になる。

 

(上記例の場合は機械導入が利益40万円の押し上げ効果に繋がったので、機械導入の判断は正しかったということが証明された)

 

一方、減価償却をしないと、正しい利益が把握できなくなり、合理的な設備投資の効果検証ができなくなる。

 

更に、減価償却費未計上分が、利益の過大計上に繋がり、その利益に対して法人税を課せられる。(上記例の場合は、160万円×実効税率40%=64万円もの現金が法人税として外に流失する)

 

このように減価償却は、正しい損益計算(投資効率の判定)のために必要なだけでなく、節税効果(投資資金の留保)の側面もあるのだ。

 

つまり、正しい減価償却は、会社の投資効率の判定や投資資金の留保を推進し、会社の成長発展を後押しするのである。

 

【関連記事】超分かりやすい減価償却の説明

 

減価償却費は現金が残る特殊な費用

 

減価償却費は現金支出が伴なわない費用なので、費用計上しても、現金がなくなるわけではない。

 

従って、上記例の場合であれば、年間160万円の減価償却費分の現金が、償却期間5年にわたり、都合、5年間で800万円の現金が会社に残る計算になる。

 

この800万円の使い道を誤ると会社の倒産リスクが高まる。なぜなら、減価償却費で貯蓄した現金(内部留保)が、再投資の原資になるからだ。

 

もし仮に、減価償却費で貯蓄した現金を、経営者の報酬や接待交際費に散財してしまったらどうなるだろうか?

 

当然ながら、ある日突然、耐用年数が過ぎた機械が壊れてしまい投資が必要になった時に十分な現金を用意できなくなってしまう。

 

このように、減価償却費を適正に行っていても、投資計画を意識して内部留保を積み立てておかないと、せっかく手元に残った現金を、再投資に活かすことができなくなる。

 

減価償却の基本は、適正な減価償却費の計上と投資計画の作成・運用にあることを忘れてはならない。

 

伊藤のワンポイント
 

減価償却は正しい損益計算に不可欠なだけでなく、投資計画や資金繰り、或いは、キャッシュフローにまで影響を及ぼします。ですから、減価償却の理解は、経営者の必須スキルといって過言ではありません。成長企業ほど上手に減価償却を活用して、プラスのキャッシュフローを生み出しています。