保身に走る会社組織の弊害と末路|組織の保身から企業の成長は生まれない

保身に走る会社組織の弊害と末路

 

保身とは、自分の地位・肩書・立場等の優位性を守るために行う言動や振る舞いのことである。

 

保身の具体的言動を挙げると、ミスを認めない、ミスを他人のせいにする等の責任転嫁、或いは、実力以上に見栄を張る、虚勢を張る等の虚栄心が典型になる。

 

この記事では、保身に走る会社組織の弊害と末路から経営者と上司の自己保身を防ぐ秘訣に至るまで、詳しく解説する。

 

 

保身に走る組織の末路

 

保身に走る組織明るい未来はない

 

組織の保身から企業の成長発展は生まれず、大概は、会社衰退という悲惨な末路が待っている。

 

事実、組織の自己保身が原因で経営に失敗した会社は沢山あるし、長い歴史を振り返っても、失敗の実例は山ほどある。

 

組織が保身に走るほど、自主性・責任感・チャレンジ精神など等、企業成長をけん引する要素が低下し、会社の衰退が加速する。

 

保身に走る組織が醸成される元凶はふたつある。ひとつは、会社トップである経営者の自己保身、もう一つは、中間管理職である上司の自己保身だ。

 

 

経営者と上司の保身の弊害と末路

 

経営者と上司の自己保身が会社経営に及ぼす弊害は数知れないが、何れも倒産リスクを引き上げるものばかりである。

 

例えば、経営者と上司が保身に走った場合の特徴的な弊害は、次のようなものが挙げられる。

 

経営者と上司の保身が生み出す弊害例

☑失敗の隠蔽(表面化すると問題になるので、ひとまず隠す)

 

☑責任のなすりつけ(ひとまず他人のせいにして自分の言動を正当化する)

 

☑イエスマンの増殖(本当はノーだけど、ひとまずイエスといっておく)

 

☑問題の先送り(目の前の問題を解決せずに、ひとまず放置する)

 

☑事なかれ主義(ひとまず悪いことを見て見ぬふりをする)

 

これらの弊害は、何れも組織を無責任集団に仕立て上げる由々しき症状であり、このような経営者と上司の保身が生み出す弊害を放置するほど、組織の責任感が麻痺していく。

 

そして、経営者と上司の保身が原因で、組織全体が無責任集団に陥ると、次のような末路を招く。

 

経営者と上司の保身が招く末路

①有能な人材がいなくなる

 

②組織の不協和音が大きくなる

 

③新しいことにチャレンジしなくなる

 

④お客様へのサービスが低下し、業績が下降する

 

⑤責任のなすりつけ合いが激化する → ①に戻る

 

という悪循環が始まり、業績悪化のスパイラルから抜け出せなくなる。

 

当然ながら、どこかで軌道修正できなければ、何れ会社は倒産する。

 

会社が倒産すれば、経営者はもちろん、関係者全員が一瞬で不幸になる。つまり、経営者と上司の自己保身の最初の犠牲者は社員と顧客だが、最後は、巡り巡って経営者と上司自身に回ってくるのだ。

 

 

経営者と上司が自己保身に走る理由

 

経営者と上司、或いは、組織が自己保身に走る理由は簡単だ。

 

例えば、「自分ひとりの立場が悪くなる」、「やっても報われない」、「やってもやらなくても変わらない」などの状況は自己保身を生み出す温床になる。

 

このような状況を解消する方法として有効なのは「信賞必罰」と「連帯責任」になる。組織の自己保身を防止する対策について、それぞれ詳しく解説する。

 

組織の自己保身防止策「信賞必罰」

 

信賞必罰(しんしょうひつばつ)とは、賞罰を厳格に行うことである。

 

賞すべき功績のある者には必ず賞を与え、罪を犯し罰すべき者は必ず罰するという意味だが、金銭が伴わない信賞必罰でも全く問題ない。

 

信賞必罰は、経営者から社員に対する「賞賛」、或いは、「叱責」だけで十分に機能する。

 

問題は、経営者の目が曇っていないかどうかだ。

 

例えば、経営者の良否や善悪の判断基準が偏っていたり、曖昧だったりすると、信賞必罰ではなく、依怙贔屓や不公平感を生み出すだけとなり、かえって保身に走る上司や社員を増やしかねない。

 

当然ながら、信賞必罰は、経営者の腹心も、経営者自身も対象になり得る。経営者が公平な基準を持って信賞必罰を実践することが、組織の自己保身を防ぐ有効策になる。

 

組織の自己保身防止策「連帯責任」

 

連帯責任(れんたいせきにん)とは、関わったもの全員が共同で責任を負うことである。

 

わたしの場合、連帯責任と言われると、すぐに軍隊を思い浮かべる。祖父が職業軍人、叔父と従弟が自衛隊という、割かし軍隊に馴染みのある環境で育ったことも影響しているのかも知れないが、身内の軍隊話を聞くと連帯責任が徹底されていることに驚く。

 

強い人も弱い人も、できる人もできない人も軍隊の中では横並びらしい。誰かが失敗したら全員で責任を取る。上司や部下もなく、弱い人やできない人に責任を押し付けることもなく、組織全体の責任と受け止めて、素直に罰を受け入れる。

 

このような連帯責任が徹底されていると、上司が部下を助ける、或いは、強い人や出来る人が弱い人や出来ない人を助ける土壌が自然と生まれ、組織全体の力が底上げされるそうだ。

 

会社組織で連帯責任をうまく機能させるには、罪を引きずらないことが大切だ。

 

「誤ったら許す」という「罪を憎んで人を憎まず」の基本スタンスが組織全体に浸透していない限り、連帯責任がうまく機能することはない。

 

誤っても許されないと分かっている人間が自分の非を素直に認めるだろうか...。むしろ、保身に走る社員が増えることは、容易に想像できるだろう。

 

 

すべての責任は経営者にある

 

そもそも、会社経営の責任は全て経営者にある。

 

従って、会社内で起きたすべての出来事を、すべて社長の責任として経営者自身に帰結している限りは、組織が自己保身に走ることはそうそう起こり得ない。

 

例えば、業績結果も上司や社員のミスも元を辿れば全て経営者の責任として、すべての責任を社長が一身に背負っていれば、上司と社員の責任感も自然と高まり、保身体質に傾くリスクが低下する。

 

社員のミスは上司の責任でもあり、上司の監督である経営者の責任でもある。一方、上司のミスは上司と経営者の責任、経営者のミスは経営者ひとりの責任だ。

 

☑社員のミスを、社員ひとりの責任として押し付けていないか?

 

☑経営者と上司のミスを、社員の責任として押し付けていないか?

 

保身に走る組織の末路は哀れなものだ。

 

経営者と上司が自己保身に陥っていないか否か、時には、冷静かつ公平な目で組織を点検することをお薦めする。

 

伊藤のワンポイント
 

保身に走る組織ほど脆弱なものはなく、些細なきっかけで必ず業績が悪化します。しかも、一度保身体質に傾くと大概は衰退の一途を辿ります。保身から抜け出す方法はただ一つ、社長が全ての経営責任を背負い、自分の中にある甘えを排除することです。自然と社長の風格と威厳が増し、社員の責任感と自主性が一段と高まります。