中小企業の事業再生事例6(年商2.6億円)

中小企業の事業再生事例6(年商2.6億円)

 

本事業再生事例は、「年商2.6億円、営業利益▲2千万円、借金残債1億円」の中小企業のケースです。

 

資金調達力に乏しい中小・中堅企業の事業再建は大きな痛みを伴うケースが多いので、危機的状況に陥る前に、日頃から然るべき手を打って安定経営を実現することが大切です。

 

事業再生事例ほど成功のヒントを得られる教材はありません。以下の事業再生事例から何かを学び取り、反面教師として経営に活かしてください。

 

 

事業再生調査時の経営状況

中小企業の事業再生事例6(年商2.6億円)

 

事業再生調査時の業績状況と調査内容は下記の通りです。

 

事業再生調査時の業績状況

売上高

260,000

 下降傾向

 売上原価

200,000

 売上原価率76.9%

売上総利益

60,000

 売上総利益率23.1%

 販売管理費

80,000

 売上高経費率30.8%

営業利益

▲20,000

 売上高営業利益率▲7%

借入金残高

100,000

 借入限度超過

(金額単位:千円)

 

事業再生調査内容

経営診断

【経営資料から分析】

資産状況の適正診断、損益状況の適正診断、経営上の問題点、資産状況の問題点、損益状況の問題点、会計上の問題点、税金対策について、業績改善のための具体的改善策の提示、改善スケジュール案と改善効果提示、等々

内部調査

【現地調査と社員面談実施】

会社経営に関わるあらゆる面の調査・判定・リスク評価等々(経営、販売、営業、組織、開発、設備、人事、物流、生産、社員、等々)

事業再生計画作成

【経営診断と内部調査結果を元に再生計画作成】

事業再生3ヵ年計画書、キャッシュフロー表(資金繰り表)、予算管理表、等々

 

事業再生調査で判明した経営課題

 

事業再生調査で判明した経営課題(解決すべき問題点)、並びに、事業再生1年後の損益計画と主な事業再生計画の前提条件は下記の通りです。

 

事業再生で解決すべき経営課題

経営面の課題

経営者が会社にいない。経営者が何をやっているのか分らない。会社を社員に任せっぱなしにしている。原価管理がいい加減。損益管理や予算管理がない。経営方針や理念がない。赤字部門、赤字取引を容認している。利益意識がない。重要な経営判断を先送りしている。等々

 

組織面の課題

問題社員を放置している。社員の声が無視されている。指示系統や命令系統が崩壊している。経営情報が末端社員まで伝わらない。等々

 

販売営業面の課題

販売目標や業績目標がない。利益が出ていない販売先がある。赤字取引と分かっていても先方の要望に応じて赤字取引を継続している。販売先との交渉ができていない。新商品や新サービスの開発方針が不明。新規事業や新商品の損益検証がされていない。等々

 

事業再生計画提示(1年目)

売上高

150,000

 売上原価

120,000

 売上原価率80%

売上総利益

30,000

 売上総利益率20%

 販売管理費

30,000

 売上高経費率20%

営業利益

0

 売上高営業利益率0%

(金額単位:千円)

 

主な事業再生計画の前提条件

不採算部門からの撤退、本社移転、組織改編、経営者教育、管理会計の導入、経営情報の開示、キャッシュフロー表の作成、資金繰り表の作成、予算管理の導入、3ヵ年の事業計画作成、不採算商品・サービスの収益改善、経営改善の推進、等々

 

 

伊藤のワンポイント
 

事業再生対象企業の経営者は40歳代の二代目社長でした。

 

事業再生調査時点の業績状況からは分かり難いと思いますが、すでに経営破たんの状態にありました。

 

過去5年間の赤字経営ですでに債務超過、事業再生調査時点から3か月後には資金ショートの見込み、さらに、手元に残っている現金残高は僅か500万円弱という危機的状況でした。

 

しかも会社の内情は、事業再生調査時に判明した問題点の通り、「経営者が会社にいない」、「経営方針等が不明」、「問題社員が放置されている」など等、経営者が経営を放棄しているような状況にありました。

 

このように、経営者が経営を放棄する原因は、さほど難しくありません。

 

大抵は、男の道楽である「飲む・打つ・買う」、いわゆる、「酒、博打、女」のどれかであることが多いです。

 

本件の場合は愛人でしたが、経営者が愛人を作った場合の倒産リスクは非常に高いので、くれぐれも用心してください。

 

また、会社の経営を放棄して道楽に没頭していると、経営者は、会社経営に頭が回らなくなります。

 

事実、この会社は、経営者はもちろん、経営者の家族や身内、そして社員に至るまで、誰ひとりとして”会社が深刻な経営状態に陥っていること”を認識していませんでした。

 

経営者の実姉が、「うちの会社は本当にこんなに悪い経営状態なんですか?」と、泣きながら嘆いていた光景は、今でも胸に焼き付いています。

 

結局、本案件は、事業再生計画を元に依頼主が自主再生の道を選択しました。