経営者は上品でなければならぬ、というのは私の持論である。
一流芸人の明石家さんま氏も、芸人の一流と二流を分かつのは「上品さ」と言っているが、とにかく、言動が上品であれば、周囲の助けも、成功のチャンスも自ずと増える。
この記事では、社長の品格が会社の盛衰を決める理由、並びに、一流と二流を分かつ品格の重要性について、詳しく解説する。
今の時代、経営者のみならず、企業においても上品さが大切だ。
数字だけで企業の良し悪しが評価される時代はとっくに終わり、良い数字だけでなく、企業の品格・倫理・文化性が大きく評価される時代だからだ。
企業の上品と下品を分かつポイントは、世のため、人のための仕事が組織にしっかり定着しているか否かである。
第二次世界大戦から奇跡的に生存したワコール創業者の塚本幸一氏は、終戦直後に「これからの人生は、死んだ戦友達に変わって世のために生きる」と決心し、世界一の下着メーカーを創り上げた。
晩年「格好よく言えば、わたしは女性を美しくすることに生涯をささげてきた。まことに幸せな人生であった」と述懐しているが、まさに世のため人のための仕事を貫徹した人生だった。また、その延長線上に素晴らしい品格・倫理・文化性を持った企業像を築き上げた。経営者の品格が企業の品格を創る好例と言えるだろう。
もっとも人を幸せにする人が、もっとも幸せになる人である。
つまり、社長が、たくさんの社員・取引先・お客様を幸せにすれば、自分がもっとも幸せになる。
お金に余裕がなければ人を幸せにできないかというと、そんな事はない。身を粉にして働き、社員・取引先・お客様に喜びや楽しみ、勇気や希望を与えることでも人を幸せにすることができる。
自分の幸せは、他者を幸せにすることで得られる。他者に尽くすのは自分のため。何事も自分の幸せのために働き、人に尽くし、汗をかくのだ。自利利他の精神の如く、他者の利益を最大化すれば、自ずと自分の品格も利益も最大化される。
ホンダ創業者の本田宗一郎には藤沢武夫という相棒がいた。
モノづくりは本田、おカネは藤沢という役割分担で、既成概念に捉われることなく、何にでも果敢に挑戦し、何度失敗しても起き上がり、二人三脚で小さな会社を大企業に育て上げた。
一定数の後進が育ち、藤沢が副社長を辞する意思を表明した時、本田は間髪入れず「俺も一緒に辞めるよ」と言い、親族でもない45歳の河島喜好に社長を任せて、あっさり身を引いた。この時、藤沢61歳、本田65歳である。
一見すると最高の引き際かも知れないが、人財が豊富な大企業がなせる業とも言える。中小企業は、社長自身の衰え、後継者の力量、後継者育成の時間等を念頭に引き際を逆算し、先手必勝で打つべき手を打つと、最高の引き際が演出できる。