日本の産業をリードしてきた長者達

日本の長者番付からみる産業の変化

日本の長者番付からみる産業の変化

 

日本の長者番付の発祥は江戸時代に遡る。

 

長者番付の歴史を辿ると、産業の変化が手に取るように理解できる。

 

また、その時代の背景とその時代の産業のトップに君臨した長者の人物背景もよく分かる。

 

例えば、江戸期から明治前半までは両替商、明治後半から昭和前半までは財閥や豪商、昭和中盤以降は庶民産業の立役者達が日本の長者番付に名を連ねている。

 

時の長者は産業のトップとして社会発展に貢献し、大資産家の地位を確立している。

 

早速、江戸末期1850年から2000年までの、主だった日本の長者番付を振り返り、産業の変化を紐解いていきたい。

 

まずは、1848年(嘉永元年)の日本の長者番付である。

 

 

1848年(嘉永元年)の長者番付

順位

 名前

産業 

別格

天王寺屋 五兵衛

両替商

別格

鹿島屋 清右衛門

酒造家

別格

銭谷 五兵衛

豪商(北前船)

1位

鴻池 善右衛門

両替商

2位

加島屋 九左衛門

両替商

3位

住友 吉次郎

両替商

4位

辰巳屋 九左衛門

両替商

5位

鴻池 善十郎

両替商

6位

鴻池 善五郎

両替商

7位

平野屋 五兵衛

両替商

8位

加島屋 作兵衛

両替商

※日本持丸長者集参照

 

上表はペリー艦隊が来航する5年前に張り出された江戸時代の長者番付である。

 

この時代は、両替商が産業のトップとして君臨している。

 

続いて、1875年(明治8年)の日本の長者番付である。

 

 

1875年(明治8年)の長者番付

順位

 名前

産業 

別格

三井 八郎右衛門

呉服商

別格

鴻池 善右衛門

両替商

別格

天王寺屋 五兵衛

両替商

別格

下村 彦右衛門

呉服商

別格

茶屋 四郎次郎

呉服商

別格

三谷 三九郎

両替商

別格

住友 吉次郎

両替商

別格

白木屋 彦太郎

呉服商

1位

小野 善助

両替商

2位

平野屋 五兵衛

両替商

※大日本持丸長者委細調大新板参照

 

上表は、ペリー艦隊来航15年後、既に徳川幕府が崩壊し、明治維新が成立したのちに発表された長者番付である。

 

この時代は、呉服商の台頭が目覚ましく、呉服商と両替商が産業のトップに君臨している。

 

続いて、1908年(明治41年)の日本の長者番付である。

 

 

1908年(明治41年)の長者番付

順位

 名前

産業 

1

岩崎 弥之助

財閥

2

住友 吉左衛門

財閥

3

岩崎 久弥

財閥

4

三井 八郎右衛門

財閥

5

鴻池 善右衛門

両替商

6

渋沢 栄一

実業家

7

大倉 喜八郎

財閥

8

三井 高保

財閥

9

三井 八郎治郎

財閥

10

井上 馨

旧長州藩士

11

山縣 有朋

旧長州藩士

12

松方 正義

旧薩摩藩士

13

島津 忠済

旧薩摩藩主

14

島津 忠重

旧薩摩藩主

15

毛利 元昭

旧長州萩藩主

16

山内 豊景

旧高知藩主

17

鍋島 直大

旧佐賀藩主

18

黒田 長成

旧福岡藩主

19

細川 護成

旧熊本藩主

20

酒井 忠道

旧小浜藩主

21

浅野 長勲

旧広島藩主

22

前田 利為

旧加賀藩主

23

池田 章政

旧岡山藩主

24

徳川 家達

旧静岡藩主

25

徳川 義礼

旧名古屋藩主

26

徳川 茂承

旧和歌山藩主

27

尚 典

旧琉球王家

28

本間 光輝

大地主(山形県)

29

小西 新右衛門

酒造家(兵庫県)

※大日本金満家一覧鑑資産額参照

 

上表は、近代工業が育ち始め、日露戦争に勝利し、先進国の仲間入りを果たしたのちに発表された長者番付である。

 

この時代は、両替商と呉服商にとって代わり、三井・三菱・住友の三大財閥が産業のトップに君臨している。多くの旧藩主が長者に名を連ねているのも特徴的だ。

 

続いて、1926年(昭和元年)の日本の長者番付である。

 

 

1926年(昭和元年)の長者番付

順位

 名前

産業 

1

岩崎 久弥

三菱財閥

2

岩崎 小弥太

三菱財閥

3

三井 八郎右衛門

三井財閥

4

住友 吉左衛門

住友財閥

5

安田 善次郎

安田財閥

6

藤田 平太郎

藤田組

7

久原 房之助

藤田一族

8

古河 虎之助

古河財閥

9

大倉 喜八郎

大倉財閥

10

鈴木 よね子

鈴木商店

11

日比谷 平左衛門

紡績王

12

鴻池 善右衛門

鴻池財閥

13

川崎 芳太郎

川崎財閥

14

伊藤 次郎左衛門

松坂屋

15

三井 得右衛門

三井財閥

16

三井 武之助

三井財閥

17

三井 八郎次郎

三井財閥

18

安田 善三郎

安田財閥

19

前田 利為

旧加賀藩主世嗣

20

本間 光輝

大地主(山形県)

※大日本金満家一覧鑑参照

 

上表は、昭和恐慌の前年、昭和元年に発表された長者番付である。

 

明治時代末期と変わらず、財閥が産業のトップに君臨している。

 

最後は、1947~2004年(昭和22年~平成16年)の日本の長者番付である。

 

 

1947~2004年(昭和22年~平成16年)の長者番付

順位

 名前

産業 

1

松下 幸之助

松下電器産業

2

上原 昭二

大正製薬

3

石橋 幹一郎

ブリジストン

4

大林 芳郎

大林組

5

上原 正吉

大正製薬

6

石橋 正二郎

ブリジストン

7

鹿島 守之助

鹿島建設

8

吉田 忠雄

吉田工業(YKK)

9

井植 歳男

三洋電機

10

中内 功

ダイエー

11

出光 佐三

出光興産

12

高橋 悌二

日本圧着端子製造

13

熊谷 太三郎

熊谷組

14

斉藤 一人

自然化粧品・健康食品販売

15

加賀美 勝

新菱冷熱工業

16

佐川 清

佐川急便

17

本田 宗一郎

本田技研工業

18

長島 己之助

織物製造

19

山岡 康人

ヤンマーディーゼル

20

山内 溥

任天堂

※長者番付登場回数順(参考文献:「待丸長者」著者:広瀬隆)

 

上表の長者番付は、戦後60年間に亘り、番付登場回数が多い順に、長者を順位付けしたものである。

 

戦後の長者番付は、第二次世界大戦終戦の2年後(1947年)から始まっている。

 

戦前の長者番付は所有する財産を基準に番付されていたので、正真正銘、本物の長者であった。

 

一方、戦後の長者番付は、納税額と所得額の2本立てから所得額一本の番付へ、最終的に所得額一本の番付から納税額一本の番付へ、番付基準が変更されてしまったため、本当の財産状況が分らなくなってしまった。

 

従って、上表の長者番付は、登場回数を基準に順位付けしている。

 

戦後60年の中で最も長者番付の登場回数が多かった人物は、財閥でも豪商でもない。

 

松下幸之助氏を筆頭に、モノづくりに励む商人や職工出身者であった。

 

戦後の長者番付に名を連ねた人物は、戦争の荒廃から自由を求めて立ち上がり、平和な庶民産業を牽引し、国民生活の向上に大きく貢献した立役者ばかりである。

 

また、高度成長期に入るまでの戦後30年は、立ち上がるのに最も苦労を強いられた時代でもあった。

 

国民生活の向上を目指して、小さいことからコツコツと誠実に仕事に取り組む姿勢は、中小企業が大切にすべき経営姿勢に通ずるものがある。

 

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