業績予想で将来を見通す方法|業績予測を可能にする予算管理の基本

業績予想で将来を見通す方法|業績予測を可能にする予算管理の基本

 

業績の先行きは、経営者の不安と恐怖心に大きな影響を与える。

 

普通の経営者は、業績の先行きが見えなければ不安に駆られる。逆に、業績の先行きが見えていれば、経営者が不安に駆られることはなく、多少の業績変動にも動じることがない。

 

経営者が業績の先行きの不安を払しょくするお薦めの方法は「予算管理」になる。

 

予算管理とは業績の先行きを計画・予測する会計手法のことだが、予算管理を運用すると、業績の先行きが明快になり、先手先手の会社経営が実践できるので、経営の漠然とした不安が少なくなる。

 

予算管理の手法は様々あるが、この記事では、一般的な予算管理方法と中小企業に適した予算管理方法について、詳しく比較解説する。

 

 

業績を予想する予算管理方法 その1

 

まずは、一般的な予算管理の方法について詳しく解説する。

 

中小企業が運用する予算管理は、業績目標(期待値)をベースに作成する方法が一般的になる。

 

この予算は、各担当者から経営幹部に至るまでの業績目標(期待値)がベースになるが、業績目標が高すぎると、業績予想の精度が著しく低下するデメリットが生じる。

 

仮に、予算計画からマイナス△10%も下回ると、業績予想が大きく外れるばかりか、会社が危機的状況に陥ることもあり得る。

 

例えば、下表のような予算計画と実績結果があったとする。

 

損益項目

予算

(目標期待値混入)

実績

予算対比

売上

10,000万円

9,000万円

▲10%(▲1,000万円)

売上原価

5,000万円

4,500万円

▲5% (▲500万円)

売上総利益

5,000万円

4,500万円

▲5% (▲500万円)

販売管理費

4,700万円

4,700万円

±0

営業利益

300万円

▲200万円(赤字)

▲500万円

 

ご覧の通り、売上予算が計画を下回った状態で販売管理費が予算通り消化されると、営業利益のマイナス幅が著しく大きくなる。

 

こうなると業績予想の精度は著しく低下し、計画とのズレが大きくなるほど使い物にならなくなる。

 

更に、業績予想が大きく外れるだけならまだしも、赤字経営に転落し、資金繰りが一気に悪化することもあり得る。

 

 

業績を予想する予算管理方法 その2

 

続いて、中小企業に適した予算管理の方法について詳しく解説する。

 

中小企業に適した予算管理は、過度な業績目標を排除した、前年実績+確度100%項目で作成する方法になる。

 

予算は、前年の実績に新年度の業績に影響を及ぼす確度100%の業績項目を加算減算して算定する。

 

この予算は、計画実現度が高いので、業績予想の精度も高くなる。

 

簡単に予算作成の手順を説明すると、まず、下表の要領で新年度に影響を及ぼす確度100%の加算減算項目を洗い出す。

 

売上

新規取引開始 +500万円

確度100%

売上原価

仕入先変更に伴う原価低減

▲500万円

確度100%

販売管理費

製造効率向上に伴う経費削減

▲250万円

確度100%

 

続いて、前年実績に確度100%要因を加算減算して年間予算を完成させる。

 

損益項目

前年実績

確度100%加算減算

予算

売上

8,500万円

+500万円

9,000万円

売上原価

5,000万円

▲500万円

4,500万円

売上総利益

4,000万円

4,500万円

販売管理費

4,000万円

▲250万円

3,750万円

営業利益

0万円

750万円

 

この予算は、期待値が最小化されるため、予算と実績の乖離が小さくなり、高い精度で業績を予想することができる。

 

予算管理で業績予想の精度が高まれば、決算までの業績を見通すことも容易になるので、経営者の漠然とした先行きの不安も少なくなる。

 

ちなみに、期待値の目標管理は、予算管理と区別して管理・運用することをお薦めする。

 

例えば、期待値の確度が100%になった段階で、都度、予算を補正すれば、予算管理の精度を落とすことなく、高い目標意識をキープすることができる。

 

 

業績予想の精度を上げる実績差異の管理

 

予算を運用する際は、必ず下表のような単月12ヶ月の予算表も合わせて作成する必要がある。

 

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

合計

予算

実績

差異

 

なぜなら、単月ごとに予算と実績の差異を把握しなければ、予算補正が後手に回り、業績予想の精度と共に、目標利益の達成率も低下するからだ。

 

常に予算と実績の差異を把握していれば、計画下振れ時に直ぐに対策を講じることができるので、業績予想の精度も目標利益の達成率も落とさずに済む。

 

また、毎月の予算を実績値に上書きしていくと、決算時点の業績予想が容易にできるようになる。

 

伊藤のワンポイント
 

業績予想の確かな術を持たない中小企業はじつに多いです。漠然とした不安の正体、業績悪化や資金繰り悪化の原因は、業績予想の精度にあります。前もって衰退が予見できれば、先手先手で対策を打つことが出来るからです。予算管理はマネジメントの基本ですので、決して、おざなりにしないでください。