独立開業して、ゼロから事業を成功に導くことは容易ではない。
独立開業に失敗しないためには、最低限の準備と損益計画が必要になる。
この記事では、独立開業に失敗しない損益計画の作り方(主に飲食店と美容サロン)について、詳しく解説する。
準備も計画もない行き当たりバッタリの独立開業は失敗リスクが極めて高い。
独立開業の失敗を回避するために最低限すべき準備は、失敗リスク(独立リスク)を事前に判定することで、中でも独立後の儲けを占う損益計画は欠かせない。
以下に、独立開業が最も多い分野である「飲食店」と「美容サロン」の損益計画の作り方を紹介する。数字を当てはめるだけで簡単に作成できるので、独立開業を検討している未来の経営者は、是非トライしてほしい。
まず、独立後の損益計画は、独立開業の損益根拠になるデータ収集から始める。下表は独立開業の損益根拠の必須データ一覧になる。
A:売上 |
過去半年分の売上の月平均 |
---|---|
B:売上原価 |
過去半年分の売上原価の月平均 (材料仕入等々) |
C:販売管理費 |
過去半年分の販売管理費の月平均 (家賃、水道光熱費、等々) |
D:来店者数 |
過去半年分の来店者数の月平均 |
E:顧客保有数 |
独立者自身が保有している顧客保有数(顧客リスト) |
売上、売上原価、来店客数は全て独立開業する本人に帰属するデータのみを集計、販売管理費は人件費以外の全ての経費を集計、顧客保有数は独立開業後にDM案内が可能な対象者のみを集計する。必須データの集計が済んだら、次は、下表のデータ項目を計算する。
①:売上原価率 |
計算式=B÷A |
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②:客単価 |
計算式=A÷D |
③:予測来店者数A |
独立開業の場所が、同じ最寄り駅: 計算式=E×来店率30~50% |
④:予測来店者数B |
独立開業の場所が、別の最寄り駅: 計算式=E×来店率10~30% |
⑤:予測来店者数C |
独立開業の場所が、別の都道府県: 計算式=E×来店率1~5% |
予測来店数は、独立開業の場所が独立前と同じ最寄り駅であれば③の計算式を用いる。独立前と別の最寄り駅となる場合は④の計算式を用いる。飲食店の来店率は低い傾向にある。また、独立前のお店のブランド力によって来店率が左右されるので、状況を分析したうえで低めに見積もった方が良い。
独立前と都道府県が異なる場合は⑤の計算式を用いる。この場合、立地条件が著しく変化するので既存顧客の来店は殆ど期待できない。従って、独立前と都道府県が異なる場合は、別の方法で損益計画を作成する必要がある。
上表の計算が済んだら、下表のデータ項目を計算して独立後の損益計画(月間)を仕上げる。
a:独立後の売上 |
計算式=③or④×② |
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b:独立後の売上原価 |
計算式=a×① |
c:独立後の売上総利益 |
計算式=a-b |
d:独立後の販売管理費 |
計算式=C |
e:独立後の営業利益 |
計算式=c-d
黒字・プラス(勝算あり)or赤字・マイナス(勝算なし) |
独立開業後の損益計画が、黒字であれば勝算がある。但し、人件費が含まれていないので、自分の報酬やアルバイトの人件費は、黒字金額の範囲内で工面する必要がある。
開業資金が賄えて、尚且つ、黒字経営の見通しであれば、独立開業の失敗リスクは低いといえる。
独立開業後の損益計画が、赤字であれば勝算がない。赤字なので、自分の報酬も出ない。また、赤字金額を補てんする余剰資金がなければ簡単に経営破たんする。
赤字経営の見通しであれば、開業資金が賄えたとしても、失敗リスクが高い。つまり、独立開業は見送った方がよい。
なお、この独立開業の失敗リスクの判定方法は、あくまで簡易的なものに過ぎない。
正確なリスク分析を行うには、事業計画の詳細作成、事前リサーチ、など等、様々な経営データを分析する必要がある。
また、開業資金として、店舗賃貸初期費用や店舗改装費のほか、最低1年分の固定費(家賃、水道光熱費、人件費等+自分の生活費)も用意した方がよい。
全国の美容室の数は約36万店舗(厚生労働省統計2014年,理容室含む)、全国の飲食店の数は約62万店舗(総務省統計2014年)である。
全国のコンビニの数が約5万店舗(2015年末)なので、美容室と飲食店の店舗数が如何に突出しているかが分かると思う。
独立開業を成功に導くための要素は沢山ある。
☑独自技術(腕前、接客等々)
☑独自ノウハウ(材料仕入先、ブランド展開等々)
☑経営能力(損益管理、組織管理、対外交渉等々)
競争の厳しい世界で独立開業を成功に導くためには、技術とノウハウだけでは物足りない。独立開業で成功するために経営能力を磨き、経営者に必要なスキルとマインドを身につけることも大切な条件になる。
(この記事は2016年7月に執筆掲載しました)