売上原価率の計算方法と適正水準
売上原価とは、売上から売上総利益(粗利)を差し引いた金額のことである。
売上原価の把握は利益とコスト管理の要といっても過言ではない。
なぜなら、売上原価の把握なしに、まともな利益管理やコスト管理など出来るものではないからだ。
売上原価の構成は下図の通りである。
売上に占める売上原価の構成比が小さければ小さいほど、商品、またはサービスの付加価値が高いといえる。
売上に占める売上原価の構成比のことを「売上原価率」という。
主に、会社の収益性を求める経営指標として活用されている。
売上原価率の計算式は下記の通りである。
売上原価率=(売上原価÷売上)×100
売上原価率の適正水準は飲食業や小売業にはあるが、その他の業種業態には適正水準がない。
例えば、健康食品や化粧品等は、売上原価率が10%以下のものが数多くある。
この分野は、「身体に効く」、「痩せる」、「美しくなる」等々、科学的根拠がなくても、付加価値のイメージを膨らませることができれば、際限なく商品の値段を釣り上げることが出来る。
虚像で付加価値を高めるのはお薦めできないが、競合他社に真似ができず、なお且つ、誠実な努力の元に作られた商品であれば、純粋に付加価値の高い商品といえるので、市場が許容する範囲内で、いくら高い値段をつけても問題はない。
極端なはなし、売上原価が1円であっても、世界一の商品であれば、世界一高くても構わないのだ。
当然ながら、売上原価と販売価格の差が大きければ大きいほど、売上原価率が低下し、会社の儲けは大きくなる。
付加価値の高い商品にも関わらず、一般市場の価格に合わせてしまい、然るべき利益を獲得できていない中小企業は少なくない。
付加価値の高い商品を元に高水準の利益体質が確立できれば、成長投資のサイクルが加速し、会社の優位性はどんどん高まる。
中小企業経営者は、自社商品の付加価値の高さと売上原価率が見合っているか否かを、時折り点検することも必要だ。
主な業界ごとの売上原価率の適正水準
主な業界ごとの売上原価率の適正水準は下記の通りである。
飲食業界 15%~25%
飲食業界の売上原価率は15%~25%が標準水準である。
稀に、売上原価率が25%以上の飲食店があるが、顧客回転率が高くなければ成り立たない。
飲食業界において売上原価率を下げるには、独自の材料調達ルートの確保が有効だ。また、スープストック等、調理に時間のかかる材料を外注化し、半完成品として店舗に導入する方法もトータルコストが下がるので有効である。
卸売業界 75~85%
卸売業界の売上原価率は75%~85%が標準水準である。
卸売業界は売上原価率の水準が非常に高い。従って、商品の保管効率や配送効率を工夫しないと高い収益が確保できない。
小売業界 50%~75%
小売業界の売上原価率は50%~75%が標準水準である。
通販会社は50%、百貨店・雑貨店は50~60%、スーパーマーケット等は65%~75%というように、顧客層や業態によって標準水準に幅がある。
稀に、売上原価率が75%以上の小売店があるが、顧客回転率が高くなければ成り立たない。
小売業界において売上原価率を下げるには、独自商品の内製化が有効である。例えば、加工材料を仕入れて、オリジナルの餃子や饅頭等を社内製造し、売上原価率30~50%で販売できれば、お店全体の売上原価率を押し下げる効果が期待できる。
売上原価率を会社経営に活かすポイント
中小企業が、最小の売上原価で最大の売上を得るには、会社が提供する商品の付加価値を極限まで高める努力が欠かせない。
売上原価率を高めて(お金をかけて)、商品の付加価値を高めることは誰にでも出来ることだ。
オンリーワンを目指すのであれば、売上原価率をキープして(お金をかけず)、商品の付加価値を高める努力が必要だ。
「弛まぬ経営改善の継続」と「売上原価率のモニタリング」、この2つのポイント抑えながら付加価値の向上に取り組むことが、中小企業が最小の売上原価で最大の売上を獲得する秘訣である。
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