経営目標管理シートの運用と記入例|目標管理で経営の正否が決まる

経営目標管理シートの運用と記入例

 

経営目標は、会社の将来のあるべき姿を表す。更に、明確な経営目標は今やるべき事を明確に指し示すので、成長発展の源泉にもなる。

 

しかし、経営目標は掲げただけでは効果はない。やはり、経営目標を達成するための管理、並びに、目標の運用精度が重要になる。

 

この記事では、経営目標管理の重要性、並びに、経営目標管理シートの運用と記入例について、詳しく解説する。

 

 

経営目標管理の重要性

 

明確な経営目標がある会社と、経営目標がない会社、両者の業績の差は、時の経過と共に大きく差が開く。

 

例えば、経営目標がない会社は、今やるべきことが曖昧になり、経営者のみならず、そこで働く社員達もどこに向かって進んでいいのか分からなくなり、成長しないならまだしも、衰退まっしぐらという事もあり得る。

 

行き当たりバッタリの経営に陥っている中小企業の殆どは、確かな経営目標がないか、或いは、仮に経営目標があったとしても目標管理が杜撰という特徴がある。

 

経営資源が限られている中小企業が大きな成長を遂げるには、然るべき経営目標を掲げ、目標管理を徹底することが大切で、目標管理の精度がそのまま会社の成長スピードに直結する。

 

 

目標管理シートのメリット

 

経営目標を掲げて、目標達成に向けた活動の推進力を上げるには、目標管理シートの運用が欠かせない。

 

目標管理シートの最大メリットは、経営マネジメントの基本であるPDCAサイクルの定着と目標達成までのロードマップの明文化、そして、経営者と社員を繋ぐ重要なコミュニケーションツールになることだ。

 

たとえ経営目標があったとしても、PDCAサイクルが正常に機能しなければ、目標達成の活動が非効率に陥ってしまう。

 

また、目標達成までのロードマップが経営者と社員の間で共有できていなければ、経営改善の効果を十分に上げることはできない。

 

つまり、経営目標とセットで目標管理シートを運用することが、経営目標を達成する正攻法になるのだ。

 

 

経営目標には具体的指標が必要!!

 

中小企業が効率よく経営目標を達成するためには何かしらの指標が必要だ。

 

例えば、

 

▶現金を増やす

 

▶現金を増やすために利益を増やす

 

という二つの目標があった場合、効率的に目標を達成できるのは後者の「利益という具体的指標」がある目標になる。

 

また、

 

▶売上原価を下げる

 

▶売上原価率を1%下げる

 

という二つも目標も、後者の「率を1%下げるという具体的指標」がある目標の方が効率的に目標を達成することができる。

 

このように明確な指標は、経営目標の達成スピードを上げる重要な役割を持っている。

 

 

業績改善に役立つ経営目標の基本指標

 

業績改善に役立つ経営目標の基本指標について、解説する。

 

中小企業の業績改善の基本姿勢は「収入を増やして支出を減らす」ことに集約されるが、実現できている会社は意外と多くない。

 

次の5つの指標は業績改善を後押しする基本の経営目標になるので、経営目標に掲げ、経営改善を推進してほしい。

 

売上を上げる

改善例:新規顧客開拓、新商品投入、リピート促進、販売効率改善、売価検証、等々

 

売上原価を下げる

改善例:製造効率改善、仕入先開拓、等々

 

売上総利益を上げる

改善例:売上の拡大、売上原価の低減

 

販売管理費を下げる

改善例:労働効率改善、固定費削減、経費の効率化、等々

 

営業利益を上げる

改善例:売上総利益の拡大、販売管理費の削減

 

 

目標管理シートの記入例

 

経営目標を管理・運用するためにの「目標管理シート」の記入例は以下の通りである。

 

目標管理シートの記入例

目標管理№

改善目標

改善内容

目標達成期日

1

売上を上げる

具体的改善内容

いつまで

2

売上原価を下げる

具体的改善内容

いつまで

3

販売管理費を下げる

具体的改善内容

いつまで

 

目標管理シートには「目標管理№・改善目標・改善内容・目標達成期日」など等、目標必達の推進力を高める項目・内容を記入する。

 

また、目標管理シートには担当責任を明確にするために、日付、作成者、承認印などの記載欄も設ける必要がある。そして、経営改善の進捗状況は以下の経営目標進捗シートで管理する。

 

経営目標進捗管理シート記入例

目標管理№

1月

2月

3月

1

2

3

 

経営目標進捗管理シートには「改善内容・進捗状況・達成率・利害関係者」など等、進捗の詳細を1ヵ月単位(1週間でも良い)に区切って細かく記入する。

 

目標管理シートを運用し、経営目標に向かってP(計画)⇒D(実行)⇒C(差異分析)⇒A(対策立案)のPDCAサイクルを回すと、経営改善の効果が徐々に出始め、目標達成に近づく。

 

なお、PDCAサイクルは経営者と社員が共同で回すと、経営改善のスピードが加速する。

 

経営者の役割

P(計画)、C(差異分析)、A(対策立案)

社員の役割

D(実行)

 

経営目標管理シート運用の応用例

 

続いて、業績改善に役立つ、経営目標管理シート運用の応用例を紹介する。

 

中小企業の経営改善の応用ポイントは「利益の最大化」にあるが、利益を置き去りにして売上拡大にひた走っている経営者は少なくない。

 

次の2つの指標は、利益最大化を後押しする経営目標になるので、経営目標に掲げ、経営改善を推進してほしい。

 

売上総利益率を上げる

改善目標:1%単位で改善する 【計算式:(売上総利益÷売上)×100】

 

売上総利益高営業利益率を上げる

改善目標:標準10%以上、優良20%以上 【計算式:(営業利益÷売上総利益)×100】

 

なお、目標管理シートの記入例は次の通りである。

 

目標管理シートの記入例

目標管理№

改善目標

改善内容

現状

目標

目標達成期日

1

売上総利益率を上げる

具体的改善内容

50%

55%

いつまで

2

売上総利益高営業利益率を上げる

具体的改善内容

5%

10%

いつまで

 

目標管理シートには基本の指標の例であげた記入例に加えて、具体的数値目標を記入する。

 

経営改善の進捗状況は1ヵ月単位に区切って、以下の経営目標進捗管理シートに細かく記入する。

 

経営目標進捗管理シート記入例

目標管理№

1月

2月

3月

1

2

 

数値目標の運用・管理方法

 

最後に、数値目標の運用・管理方法について、解説する。

 

経営目標として数値目標を活用する場合は、第一に現状を正しく把握することが不可欠になる。現状と目標の差が明確になると、やるべきことが明確になるからだ。

 

また、数値目標を掲げる場合は、急激な改善に走らず、身の丈にあったペースを保つことも大切になる。

 

経営改善に焦りと無理は禁物で、例えば、売上総利益率であれば0.5年~1年単位で1~3%ずつ、着実に数値改善を推進するのが無理がない。

 

半歩から一歩ずつの経営改善は、社員や取引先への負担が少なく済み、なお且つ、改善効果が長期的に持続しやすいのでお薦めする。

 

伊藤のワンポイント
 

経営目標を効率よく達成するには、目標管理シートの運用が欠かせません。事業活動や経営改善の進捗が明確になるばかりか、優先順位の検討ツールや社員の評価ツールにもなるからです。さらに、目標管理シートを運用するとPDCAサイクルの定着が進み、事業活動の効率化が一層進みます。