ホテル・旅館業の利益率の適正水準は、粗利高営業利益率で求めることができる。
粗利高営業利益率とは、粗利高(売上総利益)に占める営業利益金額の割合のことで、ホテル・旅館業の適正利益率、或いは、目標利益率を示す有効な経営指標だ。
粗利高営業利益率の計算方法は下記の通りである。
粗利高営業利益率=〔営業利益÷粗利高(売上総利益高)〕×100
例えば、営業利益が1千万円で粗利高が1億円だった場合の粗利高営業利益率は、(1千万円÷1億円)×100=10%になる。
ホテル・旅館業の粗利高営業利益率の標準水準は10%で、目標水準は20%である。
利益率が目標水準を下回っている場合は、利益率を上げるための経営改善が不足しているということなので、経営課題を洗い出し、改善努力を加速する必要がある。
なお、ホテル・旅館業の利益率のモニタリングは、必ず年計業績で計算しなければならない。
なぜなら、ホテル・旅館業の単月業績は、季節変動や特需変動によって大きく変化するからだ。
当然ながら、単月業績のバラツキが大きくなると、利益率のバラツキも大きくなるので、利益率を計算(モニタリング)するたびに目標指標が乱高下し、経営改善の方向性を見失う恐れが出てくる。
年計業績の計算方法は簡単である。
例えば、直近4月時点の年計業績は、昨年5月から今年4月までの12か月分の合計値が年計業績になる。
会社の業績を単月ではなく年計で計算すると特需要因(バラツキ)がすべて解消されるので、正しい業績がしっかり把握できる。
ホテル・旅館業の利益率の改善方法は、第一に利益率のモニタリングを継続することである。
年計業績の利益率をモニタリングし、目標に向かって利益改善を推進すると、自ずと利益率が改善されていく。
当たり前だが、現状と目標の利益率が分からなければ、何をして良いのかが分からなくなるため、利益率の改善を正しく進めることはできない。
行き当たりバッタリの利益改善に終始し、場合によっては業績が一段と悪化することもあり得る。
利益率の現状と目標を明確にしたうえで、ギャップ(経営課題)を捉えることが、利益率を効率よく改善する秘訣である。
目標利益率である粗利高営業利益率20%を超えると、成長投資の原資が大きくなるので、ホテル・旅館の成長発展スピードが一段と加速する。
万が一、突発的な売上減少や低迷期が訪れても、余裕をもって業績回復に取り組むこともできる。
なお、利益率の改善と同時に売上拡大策も実行しないと、ホテル・旅館の発展が先細りするので、利益改善と共に売上拡大に取り組むことも忘れないでほしい。
また、ホテル・旅館業特有の経営指標であるリピート率、客室稼働率、原価率、バックオーダー数などの計算方法等を知りたい方は当サイトの「ホテル・旅館業に有効な独自経営指標」を参考にしてほしい。