社員のモチベーションを高める社長のコミュニケーション術

 

社員のモチベーションを削ぐ最大の要因は、社長のコミュニケーションの落ち度にある。

 

事前に説明がない、説明と違う、現場を見ていない、要望を聞いていない、経緯を覚えていない、社員の頑張りをすぐに認めない等は典型だが、とにかくコミュニケーションレスが起きると、その瞬間に社員のモチベーションは低下する。

 

逆に言えば、日頃からコミュニケーションが充実していれば、社員は高いモチベーションをキープして仕事に取り組んでくれる。

 

日頃のコミュニケーションで重要なことは、社員を守る姿勢を社長が徹底することだ。そうすれば、自然とコミュニケーションは充実する。

 

例えば、社員同士で不和や諍いがあれば、社長が監督不足を詫び、双方の言い分をよく聞く。

 

社員が失敗した時は、社長が責任を取り、一緒に再発防止の仕組みを考える。社員が言い訳した時は、すべて肯定し、受け入れる。

 

公私関係なく、感心できること、立派なことをやった社員がいれば、社長が真っ先に褒める。社員の才能を伸ばすために、独立起業やリスキリング(学び直し)を応援するなど、

 

社員の立場や人生を守る言動を社長が意識し、実践すれば、コミュニケーションが充実し、社員のモチベーションはどんどん高まる。

 

つまり、自己防衛ではなく、他者防衛の実践度が、社員とのコミュニケーションの質と社員のモチベーションの高さを決定付けるのだ。

 

社員の立場に立ったコミュニケーション術

 

社員を守るために、社員の立場を理解することも大切だ。

 

ひとつの事象を違う立場に立って眺めると、違った景色が見えるものだ。

 

 

上図は、立場の違いで景色が変わるという例だ。下に立てば上り坂、上に立てば下り坂、同じ坂でも立場が変わると景色が変わる良い例と言える。

 

社員を守るためのコミュニケーションは、社長の単一的な視点や近視眼的な視点で行うのではなく、社員の立場に立って、その社員の力量、性格、心情、育ち等を十分に理解したうえで行うことが重要だ。

 

社員と同じ立場で物事を見れば、社員が招いた現実、結果、言動等に納得がいき、頭ごなしに怒ったり、上から目線で説教したりすることが無くなる。

 

常に愛を持って社員と接することができるので、社員の側も、「この社長は自分のことを本当に理解してくれている」と心底思い、これまで以上に社長を信頼し、高いモチベーションで働くようになる。

 

また、自身の至らない点を素直に受け入れ、自主的に能力開発に努めるようになる。社員の立場に立ったコミュニケーション術が社員のモチベーション、ひいては、仕事のパフォーマンスを引き上げるのだ。

 

(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)

 

筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」