中小企業の生産性分析と経営診断方法|企業の生産性は重要な診断ポイント

中小企業の生産性分析と経営診断方法|企業の生産性は重要な診断ポイント

 

企業の生産性分析は、重要な経営診断の一つといえる。

 

企業の生産性が分かれば、会社の労働効率と収益性と共に、効率的な会社経営が出来ているか否かを判定することができるからだ。

 

この記事では、中小企業の生産性分析と経営診断方法について、詳しく解説する。

 

 

企業の生産性分析・診断の必要性

 

生産性分析は、中小企業の安定経営を実現するうえで欠かせない経営診断になる。

 

なぜなら、経営資源が脆弱な中小企業ほど、高い生産性なくして、企業の成長はあり得ないからだ。

 

企業の生産性が分かれば、会社の労働効率と収益性と共に、効率的な会社経営が出来ているか否かを判定することができる。

 

また、企業の生産性が適正指標よりも劣っていれば生産性を向上させるための対策を検討することができるし、適正指標よりも優れていれば生産性を維持するための対策を検討することができる。

 

会社経営は、闇雲に管理するよりも、正しい経営指標と目標を持って管理した方が数倍、経営効率が向上する。そのためにも正しい経営診断を行うことが重要になる。

 

 

企業の生産性分析・診断の具体的方法

 

中小企業の生産性分析と経営診断は、「労働分配率」と「1人1時間当たりの付加価値」、この2つの経営指標を使って診断する。

 

労働分配率は、会社全体の労働生産性を示す経営指標で、1人1時間あたりの付加価値は、社員1人あたりの労働生産性を示す経営指標になる。

 

社員の犠牲に成り立つ高い生産性は何れ破たんする。社員一人ひとりの生産性を高めながら、会社全体の生産性を高めなければ、会社の成長を加速する生産性を確立することはできない。

 

会社の成長を加速させる生産性を確立するには、会社と社員、両面を意識した生産性向上対策が欠かせないのだ。

 

労働分配率と1人1時間当たりの付加価値の2つの経営指標を用いた、中小企業の生産性分析と経営診断方法を順を追って解説する。

 

 

労働分配率の分析・診断方法

 

労働分配率は、会社全体の労働生産性を示す経営指標で、労働分配率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。

 

労働分配率の計算式

労働分配率=(人件費÷売上総利益)×100

 

労働分配率の診断方法1

売上総利益

100

100

100

100

100

人件費

70

60

50

40

30

その他経費

20

30

40

50

60

営業利益

10

10

10

10

10

労働分配率

70%

60%

50%

40%

30%

人的投下

労働集約型

準労働集約型

標準

標準

資本集約型

 

上表の「経営診断判定表1」に照らし合わせて、自身の会社が、労働集約型なのか、資本集約型なのか、はたまた標準的な産業なのかを判断する。そのうえで、下表の「経営診断判定表2」に照らし合わせて、労働分配率の適正指標と比較し、適正度合いを判定する。

 

なお、労働分配率が高い水準の労働集約型の代表例はコールセンターで、労働分配率が低い水準の資本集約型の代表例は無人化が進んでいる製造工場である。

 

労働分配率の診断方法2

労働分配率

診断結果

適正指標より低い

労働生産性が高い。少数精鋭で効率的な経営が実現できている。少数精鋭体制は、中小企業にとって理想的な姿である。

適正指標より高い

労働生産性が低い。人件費が過分にかかっている。人員の活用がうまくいっていない場合は、配置転換等で収益を上げる方法を検討した方がよい。配置転換等で収益増加が見込めない場合は、適正な水準になるように人員整理を検討することをおススメする。

 

1人当たりの付加価値の分析・診断方法

 

1人1時間あたりの付加価値は、社員1人あたりの労働生産性を示す経営指標で、1人1時間あたりの付加価値の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。

 

1人1時間あたりの付加価値の計算式

①付加価値=総人件費+営業利益

 

②1人1時間当たりの付加価値=付加価値(①)÷総労働時間

 

1人1時間あたりの付加価値の診断方法

1人1時間の付加価値

診断結果

増加

労働生産性が向上している。生産性と収益性が高く、骨太で力強い経営体質の会社経営ができているといえる。

減少

労働生産性が低下している。人員過剰や残業過多等に陥っている可能性がある。生産性と収益性を上げるための経営改善が必要である。

 

企業の生産性分析は労働分配率と1人当たりの付加価値で分かる

 

中小企業の生産性を分析する際に、会社全体の労働生産性を示す「労働分配率」だけに注目する経営者がいるが、社員1人あたりの労働生産性を見落とすと、企業の生産性を見誤る。

 

なぜなら、労働分配率が適正水準であっても、社員1人あたりの労働生産性が悪化していれば、少しのきっかけで会社全体の生産性が低下し、会社が衰退するからだ。

 

従って、中小企業の生産性を診断する際は、必ず会社全体の労働生産性と社員ひとりの労働生産性をセットに考えなければならない。

 

「労働分配率」と「1人1時間あたりの付加価値」の両面で企業の生産性を診断すると、本当の姿が見えてくる。

 

伊藤のワンポイント
 

生産性は企業の生命線です。数多のライバル企業の中から一歩抜け出すには高い生産性が不可欠だからです。生産性を客観的に評価している中小企業は多くありませんが、生産性は測定可能な指標です。ここで紹介した2つの指標だけでも、しっかりモニタリングを続ければ、自ずと生産性の高い経営環境が整います。