資産診断で分かる会社の問題点
会社の資産診断は最低でも毎月1回は行った方がよい。
なぜなら、資産診断結果を経営に反映させることで、会社衰退のリスクを抑えることができるからだ。
会社の資産診断の根拠情報は貸借対照表を用いるが、資産診断で分かる会社の問題点は次の3つに絞られる。
それは、「資本効率」、「支払能力」、「安全性」の3項目である。
この3項目の資産診断結果が良好であれば、会社衰退のリスクは低いといえる。
逆に、この3項目の資産診断結果が悪化していれば、会社衰退のリスクが高いといえる。
会社の資産診断をするうえで気を付けるべき点は「資産診断の方法」と「診断結果の判定」である。
当然ながら、資産診断の方法が間違っていれば、正しい診断結果は出ない。
また、資産診断の方法が正しくても、診断結果の判定を誤れば、同様に正しい診断結果は出ない。
誤った診断結果をもとに経営改善を行っても、成果が出ないであろうことは容易に想像できるだろう。
中小企業の資産診断方法
正しい資産診断の方法と結果判定基準を理解することが、正しい資産診断結果を生み出す要点になる。
また、診断結果と適正ラインを照合すると改善点と改善目標が明確になるので、効率的な会社経営ができる。
中小企業の安定経営を実現するための、「資本効率」、「支払能力」、「安全性」の3項目の資産診断の具体的方法は下記の通りである。
資産診断で分かる「資本効率」の問題点
資本効率の適正診断は「総資本回転率」から求めることができる。
総資本回転率(回) = 売上高(年商) ÷ 総資本
総資本回転率とは、資本効率を計る経営指標のことである。
例えば、会社の設立時点の資本は、資本金である現金しかない。
会社経営が始まると、現金が商品に姿を変え、商品が売上となり、再び、資金、いわゆる現金に戻る。この資本→商品→売上→資本、という一連の流れを資本の回転という。
少ない資本で大きな売上を獲得することができれば、資本効率の高い経営ができているということになる。
概ね、1回転以上が標準水準である。
但し、設備投資が多く固定資産の比率が高い業種業態と、設備投資が少なく固定資産の比率が低い業種業態では標準水準に差があるので、その点は留意してほしい。
なお、標準水準を下回っている場合に考えられる主な問題点は以下の通りである。
・投じた資本の割に売上が伸びていない
・資産の中に、不良性の資産が含まれている(例えば、遊休資産、不良性の売掛金、水増し在庫等々)
資産診断で分かる「支払能力」の問題点
支払能力の適正診断は、「当座比率」から求めることができる。
当座比率 = (当座資産 ÷ 流動負債) ×100
当座比率とは、支払能力を計る経営指標のことである。
例えば、当座資産よりも流動負債が大きく下回っていれば支払能力が高く、当座資産よりも流動負債が大きく上回っていれば支払能力が低いと判断できる。
概ね、90%~119%が標準水準である。
標準水準を下回っている場合に考えられる主な問題点は以下の通りである。
・赤字経営に陥っている
・過剰投資を行っている
・借入金過多に陥っている
資産診断で分かる「安全性」の問題点
安全性の適正診断は、「自己資本比率」から求めることができる。
自己資本比率 = (自己資本 ÷ 総資本) ×100
自己資本比率とは、会社の資本力や安定経営の度合を計る経営指標である。
例えば、返済義務のある他人資本よりも自己資本の方が上回っていれば会社の安全性が高いと判断できる。
概ね、20%以上が標準水準である。なお、40%以上だと倒産リスクが殆どない。
標準水準を下回っている場合に考えられる主な問題点は以下の通りである。
・赤字経営に陥っていて、年々自己資本が減少している
・借入金を中心に設備投資を行っていて、年々自己資本が減少している
資産診断の要点は「資本効率」「支払能力」「安全性」
この他にも、資産の適正診断をする方法はあるが、主に、「資本効率」、「支払能力」、「安全性」の3項目を十分に把握していれば、会社経営を大きく誤る可能性は低い。
貸借対照表に対して苦手意識を持っている中小企業経営者は少なくない。
貸借対照表は資産診断のみならず、様々な経営分析資料として活用できる。
安定経営を目指すのであれば、資産診断の手法と共に貸借対照表を読み解く能力も身につけたいところだ。


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