経営診断とは?|中小企業の経営診断目的・項目・手法

中小企業の経営診断とは?|経営診断は儲かる会社を作る第一歩

 

経営診断とは、会社の健康状態を様々なデータや手法を用いて分析することである。

 

人間の身体と同じように、会社も定期的に健康状態を診断することで業績悪化という名の病気を予防することができる。

 

この記事では、経営診断の目的から診断項目、並びに、経営診断手法について、詳しく解説する。

 

 

経営診断とは

 

経営診断とは、会社の健康状態を様々なデータを用いて分析することである。

 

経営診断によって会社の健康状態が明らかになると、経営課題や改善部分が明快になるので、衰退を予見し先手を打つ会社経営が実践できるようになる。

 

また、経営診断によって異常値を詳細に分析することで、経営の健全度を上げるための具体的改善策、更には、改善プロセスの優先順位等を正しく整理することができる。

 

経営診断は、財務諸表の分析がメインになるが、必要に応じて、社長や経営幹部のヒアリング、或いは、現地視察や社員面談を行うことで診断精度を高めることができる。

 

 

経営診断の目的

 

経営診断の目的は「会社の衰退予防」になる。

 

経営診断は、会社の衰退予防のために、その時の会社の経営状態を調べて、衰退原因になり得る情報を得ることが主な目的になる。

 

診断結果に異常(経営課題)があった場合は、その異常(経営課題)の根本原因が何であるかを分析したり、衰退リスクの大きさをチャックするなどして、健全化に向けた経営改善に活かしてこそ経営診断の意義がある。

 

当然ながら、経営診断をおざなりにすると、深刻な経営課題を見逃すリスクが高まる。

 

会社が衰退する最たる原因は「経営課題の見落とし」なので、経営診断ほど会社衰退のリスクを軽減する取り組みはない。

 

また、企業の持続的成長は「良い部分を伸ばす」或いは「悪い部分を直す」の何れかを実践することで実現されるので、会社経営の良し悪しを明らかにする経営診断が定着するほど、会社の成長が加速する。

 

 

経営診断の実施タイミング

 

経営診断は、業績悪化という自覚症状が出てから行っても効果はない

 

先手先手の経営診断が効果的で、経営診断による経営課題の発掘が早いほど、その課題を解決すべく経営改善に早く取り組むことができる。

 

さらに、経営診断を定期的に実施することで、経営改善効果を測定することも可能になる。

 

経営診断は正常な経営状態をキープするために定期的に行うのが効果を最大化する秘訣になり、業績悪化という自覚症状が大きくなるほど、経営診断の効果は薄れる。

 

例えば、債務超過等の末期症状まで業績悪化が進行している場合は、健全化の方策が極めて限られるので、経営診断の意味が全く無くなることもあり得る。

 

「業績が悪化してきたから経営診断を行ってみよう」という発想ではなく、「儲かる会社を作るために経営診断を定期化しよう」という発想で、先手先手で経営診断を行う姿勢が、診断効果を最大化する秘訣になる。

 

 

経営診断は定着させることが大切

 

経営診断は業績の好不調関係なく、定期的な診断を定着させることが大切になる。

 

経営診断は、過去・現在・未来の会社の経営課題を明らかにするので、赤字経営だろうが黒字経営だろうが、業績に関係なく様々なプラス効果をもたらす。

 

例えば、定期的な経営診断が定着していれば、事前に赤字経営のリスクを摘み取ることができるので、比較的平穏に黒字経営を維持することができる。

 

赤字経営であっても、経営診断で経営課題を解決するための然るべき経営目標が明かになるので、赤字脱却の道筋が見える。

 

更に、会社の強みと弱みも明らかになるので、会社の強みを伸ばす、或いは、会社の弱味を改善する等の経営改善も効果的に推進することもできる。

 

経営診断なくして会社の安定経営はあり得ないといっても過言ではなく、いかに早い段階で自社に適した経営診断を定着させるかが、成長と衰退の分かれ道になる。

 

 

経営診断の基本項目・手法

 

中小企業の経営診断は、資産状況損益状況資金繰り組織内部などの項目を客観的資料や情報に基づいて診断することが基本の手法になる。

 

また、主観に頼らない客観重視の経営診断が、経営課題の本質を明らかにする秘訣になる。それぞれの経営診断項目と手法は下記の通りである。

 

資産状況の経営診断項目・手法

資産状況の経営診断は「貸借対照表」を用いて診断する。支払能力、自己資本、資本効率、安全性等の項目を診断することで、会社の経営基盤の状態が分かる。また、経営診断結果と適正ラインを照合することで改善点と改善目標が明らかになる。資産査定(デューデリジェンス)を併せて行うと、会社の真の資産状況(本当の資金体力)も把握することができる。

 

損益状況の経営診断項目・手法

損益状況の経営診断は「損益計算書」を用いて診断する。成長性、収益性、競争力、利益水準、経費バランス等の項目を診断することで、会社の収益体質が分かる。また、診断結果と適正ラインを照合することで改善点と改善目標が明らかになる。

 

資金繰りの経営診断項目・手法

資金繰りの経営診断は「貸借対照表」と「損益計算書」を用いて診断する。1年先までの資金繰りを予測することで、資金の過不足が分かる。例えば、資金に余裕があれば投資計画の検討ができる。逆に、資金に不足があれば、事前に資金の調達計画を検討することができる。

 

組織内部の経営診断項目・手法

組織内部の経営診断は、会社の現地視察社員面談を通じて診断する。会社の強みや付加価値の発掘、会社の深刻な問題点、経営者の能力評価、役職者や社員の能力評価等の情報収集を緻密に行うことで、会社成長のヒントと会社衰退に繋がる経営課題が明らかになる。

 

例えば、会社成長のヒントが見つかれば、そこに経営資源を集中して更なる成長を実現することができる。逆に、会社衰退に繋がる経営課題が見つかった場合は、課題解決のための経営改善を事前に講ずることができる。

 

なお、普通の社員は経営者対して批判的な意見を言えないので、組織内部の経営診断(社員面談)は第三者機関に依頼することをお薦めする。

 

 

中小企業の適正な経営診断ペース

 

中小企業の経営診断は、これまでに紹介した診断項目の他にも、会社の盛衰に影響を及ぼす経営方針(戦略・戦術含む)の適性診断、株主構成の適正診断、会計処理の適正診断、など等、様々あるが、最低限、先に紹介した4つの経営診断は定期的に行うことをおススメする。

 

会社の成長を加速させたければ、「資産、損益、資金繰り」の経営診断は毎月ペースで、「組織内部」の経営診断は1年~3年に1回のペースで行うことをお薦めする。

 

また、経営診断は会社の健康状態を明らかにする効果のほか、客観的な会社評価の側面もある。

 

例えば、経営診断を定期的に行っているにも関わらず、経営成績が一向に良くならない場合は、経営改善の進め方に問題があるといえる。

 

こういう場合は、経営診断の結果を受け止めて、経営改善の方法を一から検証する必要がある。

 

当然ながら、経営診断の客観的評価を無視して、従来の経営を見直すことなく突き進むと、経営の失敗リスクは高まる一方になる。

 

また、経営診断の外注コストは決して安くないので、経営者自身が自己診断スキルを習得することも大切になる。

 

伊藤のワンポイント
 

企業の衰退を防衛する経営診断の事を管理会計とも云います。業績好調な企業は経営者が自己診断スキルを身につけ、独自の管理会計を上手に運用しています。会社の成長と衰退の兆候は必ず数字と現場(社員・顧客等)に表れます。経営診断は、経営マネジメントの肝であり、経営者の必須スキルです。