企業のリスク分析は、重要な経営診断の一つといえる。
将来の経営リスクが分かれば、今すべきことが明快になり、衰退を予見して先手を打つ会社経営が実践できるからだ。
この記事では、中小企業のリスク分析と経営診断方法について、詳しく解説する。
リスク分析は、中小企業の安定経営を実現するうえで欠かせない経営診断になる。
なぜなら、会社の規模関係なく、経営リスクを見逃すと、衰退リスクが高まる一方になるからだ。
将来の経営リスクが分かれば、今すべきことが明快になるので、衰退を予見して先手を打つ会社経営の実践が可能になる。
例えば、企業の経営リスクが適正指標よりも高まっていればリスクを取り除くための対策を検討することができるし、適正指標よりも低下していれば現状を維持するための対策を検討することができる。
会社経営は、闇雲に管理するよりも、正しい経営指標と目標を持って管理した方が数倍、経営効率が向上する。そのためにも正しい経営診断を行うことが重要になる。
中小企業のリスク分析と経営診断には、「売上総利益高経費率」と「1社あたりの売上占有率」、この2つの経営指標使って診断する。
売上総利益高経費率は、売上総利益に占める販売管理費の構成比率、つまり、経営破綻のリスク度合いを示す経営指標で、1社あたりの売上占有率は、会社全体の売上に占める1社あたりの売上構成比率、つまり、連鎖倒産等のリスク度合いを示す経営指標になる。
会社経営のリスクは、収入減少と支出増加に集約される。つまり、売上減少と経費増加である。
簡単な理だが、売上減少、或いは、経費増加を放置すると、何れ会社の利益がゼロになって会社の経営が破綻する。会社の衰退リスクを払しょくするには、衰退リスクに繋がる売上減少と経費増加を絶えずモニタリングすることが欠かせないのだ。
売上総利益高経費率と1社あたりの売上占有率の2つの経営指標を用いた、中小企業のリスク分析と経営診断方法を順を追って解説する。
売上総利益高経費率は、売上総利益に占める販売管理費の構成比率、つまり、経営破綻のリスク度合いを示す経営指標で、業種業態関係なく、経費水準の適正判定が可能な経営指標である。売上総利益高経費率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。
売上総利益高経費率=(販売管理費÷売上総利益)×100
経費率 |
診断結果 |
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80% 以下 |
優良水準である。経営リスクは極めて低く、現状の経営を推し進めて問題ないといえる。 |
81~90% |
標準的な費水準である。経営リスクは低いといえる。 |
91~100% |
改善の余地がある。少しの売上減少で経費が賄えなくなるリスクが高いため、早めに90%以下の水準に収まるような経営改善を行った方がよい。 |
100%超 |
危険水準である。経営破綻のリスクが高いといえる。売上総利益よりも経費の方が上回っているので赤字経営である。早急に黒字化してリスクを払しょくしないと会社が倒産する可能性が高い。 |
1社あたりの売上占有率は、会社全体の売上に占める1社あたりの売上構成比率、つまり、連鎖倒産等のリスク度合いを示す経営指標で、1社あたりの売上占有率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。
売上占有率=(販売先の1社の売上÷会社全体の売上)×100
売上 占有率 |
診断結果 |
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5%以下 |
全ての販売先が5%以下であれば超優良水準である。販売先のリスク分散が万全なので、連鎖倒産のリスクは極めて低い。 |
6~10% |
数社入っている程度であれば標準水準である。3社以下なら連鎖倒産のリスクが低いが、4社以上ある場合は、連鎖倒産のリスクがある。なるべく1社あたりの売上占有率を5%以下に抑えられるよう、リスク分散を進めた方がよい。 |
11~20% |
1社でも入っているようであれば、改善の余地がある。連鎖倒産のリスクが高い。なるべく1社あたりの売上占有率を10%以下に抑えられるよう、リスク分散を進めた方がよい。 |
20% 以上 |
1社でもあるようであれば早急な改善が必要である。連鎖倒産のリスクが極めて高いので、早急に販売先の新規開拓、新商品の投入等の対策を講じる必要がある。万が一、リスクを放置して、当該販売先が倒産してしまったら連鎖倒産が現実のものになるだろう。 |
中小企業の経営リスクは、経費率だけでは判断を誤る。
なぜなら、経費率が適正水準であっても、大口取引先の消滅等によって経営が行き詰る可能性があるからだ。
従って、中小企業の経営リスクを診断する際は、必ず経費水準と大口取引先の有無をセットに考えなければならない。
「売上総利益高経費率」と「1社あたりの売上占有率」の両面で企業の経営リスクを診断すると、本当の姿が見えてくる。
会社経営におけるリスクヘッジの基本は、経費を収入以下に抑える事と少数の取引先に依存しない販売構造を確立する事です。この2つのリスク診断を定着させ、リスクヘッジを実践することが安定経営の近道になります。どちらか一方のリスクが上がると、会社の衰退リスクが著しく上がりますので注意して下さい。