中小企業の成長性分析と経営診断方法|企業の成長性は重要な診断ポイント

中小企業の成長性分析と経営診断方法

 

企業の成長性分析は、重要な経営診断の一つといえる。

 

企業の成長性が分かれば、現在の立ち位置と共に会社の将来性が明らかになり、今後の対策が立て易くなるからだ。

 

この記事では、中小企業の成長性分析と経営診断方法について、詳しく解説する。

 

 

企業の成長性分析・診断の必要性

 

成長性分析は、中小企業の安定経営を実現するうえで欠かせない経営診断になる。

 

なぜなら、経営資源が脆弱な中小企業ほど、高い成長性なくして、企業の存続はあり得ないからだ。

 

企業の成長性が分かれば、会社の将来性は自ずと見えてくる。更に、企業の成長性の適正具合が診断できれば、現時点の立ち位置が分かり、今後の対策を立てやすくなる。

 

例えば、企業の成長性が適正指標よりも劣っていれば成長性を向上させるための対策を検討することができるし、適正指標よりも優れていれば成長性を維持するための対策を検討することができる。

 

会社経営は、闇雲に管理するよりも、正しい経営指標と目標を持って管理した方が数倍、経営効率が向上する。そのためにも正しい経営診断を行うことが重要になる。

 

 

企業の成長性分析・診断の具体的方法

 

中小企業の成長性分析と経営診断は、「売上成長率」と「企業の果実」、この2つの経営指標を使って診断する。

 

売上成長率は売上の伸び率を示す経営指標で、企業の果実は会社の収益性と競争力、つまり、獲得利益の大きさを示す経営指標になる。

 

企業の成長は、成長投資の原資となる利益(現金)を増やすことが必須条件になるので、売上と利益を同時に拡大する意識が欠かせない。

 

売上成長率と企業の果実の2つの経営指標を用いた中小企業の成長性分析と経営診断方法を順を追って解説する。

 

 

企業の売上成長率の分析・診断方法

 

売上成長率は、売上の伸び率を示す経営指標で、売上成長率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。

 

売上成長性の計算式

単年成長率の場合 : 〔(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高〕×100=売上成長率

 

単月成長率の場合 : 〔(当月売上高-前月同月売上高)÷前年同月売上高〕×100=売上成長率

 

売上成長率の診断方法

売上

成長率

診断結果

6~20%

超優良水準である。この水準で売上が推移していれば会社が着実に成長しているといえる。現在の取り組みを積極的に継続展開すれば、益々の売上成長が望める可能性が高い。

0~5%

安全水準である。この水準で売上が推移していれば会社経営が安定しているといえる。成長の前期、もしくは、成長の後期に、この水準に位置していることが多い。

▲1~▲10%

準危険水準である。会社の成長が止まっていて、徐々に低迷している。既存の市場、既存の技術とノウハウを活用して、新しい売上を創出する取り組みが必要である。

▲11~▲20%

危険水準である。会社の成長が完全に止まっている。既に、赤字経営に陥っていて、厳しい経営の舵取りを強いられてる可能性が高い。

21%

以上

危険水準である。売上は下がっても問題だが、伸びすぎても問題が生じる。この場合、会社の収益面は問題ないが、会社組織や経営管理の内部体制に問題が生じている可能性が高い。

 

企業の果実の分析・診断方法

 

企業の果実は、会社の収益性と競争力、つまり、獲得利益の大きさを示す経営指標のひとつである。

 

企業の果実は「売上×営業利益率」の掛け合わせで測定することができるが、獲得利益の収縮が分かるので、売上成長率だけでは見落としてしまう利益金額の成長を把握することができる。

 

例えば、下図のように、縦軸に売上、横軸に利益率を当てはめると、会社の獲得利益の大きさを視覚的且つ明確に把握できる。

 

 

企業の果実の縮小は収益性と競争力の低下を示し、企業の果実の拡大は収益性と競争力の向上を示す。企業の果実の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。

 

企業の果実の計算式

企業の果実 = 売上×営業利益率

 

企業の果実 = 営業利益額(獲得利益)

 

企業の果実の診断方法

企業

の果実

診断結果

拡大

健全な経営状態で会社が成長している。

縮小

不健全な経営状態に陥っている可能性が高い。価格競争に巻き込まれていないか?既存顧客が競合他社に流出していないか?経費や原価が増加していないか?、など等、会社の成長を阻害する要因を分析する必要がある。

 

企業の成長性は売上成長率と企業の果実で分かる

 

売上拡大一辺倒で会社の成長を推し進める経営者がいるが、利益を見落とした状態で売上を拡大すると、衰退リスクが高まる。

 

なぜなら、利益縮小、或いは、赤字拡大といった症状を見逃すと、会社の現金が目減りし、最悪、黒字倒産という結末もあり得るからだ。

 

従って、中小企業の成長性を診断する際は、必ず売上と利益、両面の拡大をセットに考えなければならない。

 

「売上成長率」と「企業の果実」の両面で企業の成長性を診断すると、本当の姿が見えてくる。

 

伊藤のワンポイント
 

成長性は市場での競争優位性だけでなく、収益力も示します。ですから、成長性を診断し、然るべき目標に向かって現状改善を推進すると自ずと競争力と収益性の高い企業体質に変貌します。また、成長性に意識を向けると、会社全体の拡大意識が高まり、前向きでモチベーションの高い組織体質が定着しやすくなります。