企業の安全性分析は、重要な経営診断の一つといえる。
企業の安全性が分かれば、社員や取引先からの信頼を勝ち取ることが出来ると共に将来の投資戦略も見えてくるからだ。
この記事では、中小企業の安全性分析と経営診断方法について、詳しく解説する。
安全性分析は、中小企業の安定経営を実現するうえで欠かせない経営診断になる。
なぜなら、経営資源が脆弱な中小企業ほど、安全性が低下すると、たちまち経営が不安定になるからだ。
企業の安全性が分かれば、社員や取引先からの信頼を勝ち取ることが出来ると共に将来の投資戦略も見えてくる。
また、企業の安全性が適正指標よりも劣っていれば安全性を向上させるための対策を検討することができるし、適正指標よりも優れていれば安全性を維持するための対策を検討することができる。
会社経営は、闇雲に管理するよりも、正しい経営指標と目標を持って管理した方が数倍、経営効率が向上する。そのためにも正しい経営診断を行うことが重要になる。
中小企業の安全性分析と経営診断は、「自己資本比率」と「当座比率」、この2つの経営指標を使って診断する。
自己資本比率は、会社の資本力や安全性の度合を示す経営指標で、当座比率は、会社の支払能力を示す経営指標になる。
会社は、現金で始まり現金で終わる。つまり、会社の現金が底をつくと会社が倒産する。
企業の安全性を高めるには、資本を厚くし、尚且つ、支払能力を高める努力が不可欠で、この2点を抑えている限りは、現金残高が減少することはそうそう起こり得ない。
自己資本比率と当座比率の2つの経営指標を用いた中小企業の安全性分析と経営診断方法を順を追って解説する。
自己資本比率は、会社の資本力や安全性の度合を示す経営指標で、自己資本比率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。
自己資本比率=〔自己資本(純資産)÷総資本(負債の部+資本の部の合計)〕×100
自己資本比率 |
診断結果 |
---|---|
50%超 |
極めて安全性が高いといえる優良企業水準である。更に、70%を超えると殆ど無借金経営になり、超優良企業になる。 |
20~49% |
安全性に問題ない標準水準である。40%以上であれば、倒産のリスクは殆どない。 |
10~19% |
安全性に乏しい水準である。直ちに経営が悪化する恐れはないが、会社の安全性を高めるために20%以上の水準を目指して、利益改善を推進した方がよい。 |
9%以下 |
安全性が低い水準である。会社は資本欠損の恐れがある。すでに会社が赤字経営に陥っている場合は、早急に黒字化する必要がある。 |
マイナス |
極めて安全性が低い水準である。会社は債務超過である。つまり、総資本よりも、返済義務のある他人資本の金額が上回っている状態である。会社倒産の可能性が極めて高い。 |
※ 自己資本比率とは、会社の総資本(負債の部+資本の部の合計)に占める自己資本の構成比率のことである
当座比率は、会社の支払能力を示す経営指標で、当座比率の計算式、並びに、診断方法は下記の通りである。
当座比率=(当座資産÷流動負債)×100
当座 比率 |
診断結果 |
---|---|
120%超 |
優良水準である。支払能力が高い状態といえる。 |
90~119% |
安全水準である。支払能力に問題ない状態といえる。 |
70~89% |
改善の余地がある。資金繰りへの影響は軽微だが、急を要する支出に対応できない可能性がある。 |
69%以下 |
危険水準である。資金繰りに影響が出ている可能性が高い。また、外面的に会社の心証が悪くなる水準でもある。銀行融資や助成金の交渉にも影響が出る場合がある。 |
※ 当座比率は、1年以内に現金化される流動資産の中でも換金性の高い現金、売掛金、受取手形等の当座資産と1年以内に支払期限が到来する流動負債を用いて計算する。業種業態によって適正指標に幅があるが、会社の支払能力を分析する経営指標としては有効に活用できる
中小企業の安全性を分析する際に、支払能力を示す「当座比率」だけに注目する経営者がいるが、過去の経営実績(利益)の蓄積を示す「自己資本比率」を見落とすと、企業の安全性を見誤る。
なぜなら、一時的に現金にゆとりがあったとしても、自己資本比率が著しく低下していると、少しのきっかけで会社が衰退するからだ。
従って、中小企業の安全性を診断する際は、必ず資本力と支払能力をセットに考えなければならない。
「自己資本比率」と「当座比率」の両面で企業の安全性を診断すると、本当の姿が見えてくる。
会社の安全性の診断は重要です。会社は現金がなくなると倒産するからです。また、安全性は会社の体力を示しますので、経営戦略や投資戦略など、会社の経営姿勢に大きな影響を及ぼします。安全性の診断を定着させることが、安全性を高める会社経営の実践に繋がりますので、定期的に診断しましょう。