中小企業は経営者に経営判断が集中する。
正しい経営判断を支える要因は様々あるが、知覚や感覚といった生身の人間特有の感性が大きく関わっている思考力は、経営判断の精度に大きく影響する。
当然ながら、経営者の思考力が弱ければ経営判断の精度が低下し、大きな判断ミスを誘発する原因を作りかねない。
逆に、経営者の思考力が高ければ、前例のない事柄への対応であっても、経営判断のミスを最小限に抑えることができ、大きな判断ミスに繋がるリスクを極限まで抑えることができる。
資本力の乏しい中小企業にとって大きな経営判断ミスは、倒産に直結する由々しき事態だ。
例えば、人間の身体でも、皮膚を1cm傷つけられた場合と、心臓や肺といった重要な臓器を1cm傷つけられた場合とでは、後者の重要な臓器を傷つけられた場合の方が、飛躍的に致死率が高まる。
会社経営も一緒だ。
経営者が自らの思考力で高めて、大きな判断ミスに繋がるリスクを抑えることが、会社経営を成功に導く秘訣でもあるのだ。
人工知能を持つAI技術は飛躍的に進化している。
近い将来、論理的な事務処理や機械的な単純作業は根こそぎAI技術(人工知能)にとって代わる時代が来るだろう。
とはいっても、人間自身もよく分かっていない感覚的な部分(感性、知覚、欲望、直感など)は、AI技術がなかなか超えられない壁ではないかと思う。
この感覚的な部分を全部ひっくるめたうえで正しい判断を導くのが思考力なので、AI時代においても、思考力の研鑽はますます重要になってくる。
経済活動(消費活動)の主役が生身の人間である以上、生身の人間の思考力がAI技術にとって代わることはないと思うが、思考力なき経営者、或いは、思考力なき中小企業は、すべての仕事がAI技術にとって代わる、ということは起こり得るだろう。
そうならないためには、日頃から経営者自身が思考力を高める努力を怠らないことが大切だ。
経営者が持つべき思考力は、データ解析や検証といった論理的部分だけでは脆弱だ。
人間の感性を先読みする思考力、人間の感性に呼応する思考力、前例のない事柄に対応する思考力、など等、AI技術をもってしても対抗できない非論理的部分の思考力も高めなければ、この先の市場競争を勝ち抜くのは難しいだろう。
ビジネスモデルやビジネスの仕組みを人間(社員)ではなく、AI技術が仕上げる時代はそこまでやってきている。
当然ながら、経営者の思考力を持って、優れたビジネスモデルやビジネスの仕組みを生み出すことができなければ、市場競争からはじき出されてしまうかも知れない。
経営者の思考力の重要性は加速的に増している。
これからの時代は、経営者の思考力がビジネスの付加価値を生み出し、会社の実力を決定していくのだ。
(この記事は2017年11月に執筆掲載しました)