多角化経営とは、事業を多角的に展開する経営戦略のことである。
多角化経営には、事業収益のリスク分散のメリットがある一方で、失敗に伴う業績悪化のデメリットがある。
この記事では、多角化経営に失敗しない法則について、詳しく解説する。
多角化経営には、事業収益のリスク分散のメリット(成功リターン)がある一方で、失敗に伴う業績悪化のデメリット(失敗リスク)がある。
資本力の小さい中小企業においては、メリットよりもデメリットの方が上回っており、多角化経営が成功する確率は決して高くない。
そもそも多角化事業とは、「本業とは違う分野の事業を新しく立ち上げる」ということなので、多角化事業を成功に導くことは、新たな会社を一から立ち上げて軌道に乗せるのと同じくらい大変なことだ。
実例を見渡しても、成功よりも、多角化に失敗して、会社全体が苦境に陥った中小企業の方が多いように感じる。
会社の資金に余裕が出てくると、ついつい考えがちな多角化経営だが、デメリット(リスク)を認識したうえで慎重に検討しなければ、多角化が原因で会社が衰退することもあり得る。
万が一、多角化経営に失敗すると、本業の利益が損失の穴埋めに流れて、会社全体の業績が加速的に悪化する。
借金で多角化経営を始めた場合は、借金だけが手元に残り返済に苦しむことになる。更に、撤退のタイミングを誤ると、倒産の危機に瀕することもある。多角化経営は、戦略や計画の甘さが、命取りになるのだ。
資本力に乏しい中小企業は、多角化経営に走る前に、やるべきことがある。
それは、本業の事業価値を高める活動である。
本業の事業価値を高めるには、徹底した深堀りが欠かせない。
例えば、
☑顧客と市場は頭打ちか?
☑商品の用途開発のアイデアは出尽くしたか?
☑商品の収益性や付加価値の改善余地は一切ないか?
と経営者自らに問いかけて、答えが「NO」であれば、まだまだ深堀りの余地があるということだ。
顧客と市場が拡大し、商品の収益性や付加価値が高まると、事業価値(ナンバーワン)と存在意義(オンリーワン)も高まり、本業の経営が一層安定する。
本業の経営が安定するほど、会社の衰退リスクが低下するので、徐々に多角化経営に乗り出せるだけの経営資源と基盤が整ってくる。
逆に、本業の経営が不安定な状態で多角化に走ると、すべての事業が中途半端な結果に陥り、衰退リスクが高まるばかりとなる。
本業の深堀りはやり尽くしたか?
深掘りのアイデアは考えれば考えるほど出てくるので、この機会に、点検することをお薦めする。
多角化経営で成功したければ、素人分野には決して手を出さないことが大切になる。
素人分野で事業が成功するほど会社経営は甘くはなく、失敗しか道がないといっても過言ではない。
多角化経営で成功するには、本業の商品(ノウハウ)、若しくは、本業の市場(顧客)、どちらか一方を活用した派生事業を構築する方法がお薦めだ。
つまり、
▶本業のノウハウを新しい市場に投入する
▶本業の市場に新しいノウハウを投入する
という多角化戦略である。
どちらか一方が本業なので成功の確率が五分五分まで上がり、本業の事業価値が大きいほど多角化事業の事業価値も大きくなる。(多角化の前に本業の事業価値を高める所以はここにある)
下の図は、多角化経営を推進するうえで活用する戦略マトリックスだ。
既存×既存の深堀りを徹底した後に、既存×新規の多角化経営を展開することが、多角化成功の秘訣になる。
深堀りの余地がないか否か?
多角化の余地がないか否か?
一度検討してみることをおススメする。
多角化は本業の深掘りをやり尽くしてから展開するのが正攻法です。本業が盤石になれば、本業の派生ビジネスの構築が容易になるからです。本業の深掘りに邁進すれば必ず多角化のヒントが見つかります。本業が危うい状態、或いは、借金ありきの多角化は失敗する確率が高いので、くれぐれも注意して下さい。