中小企業等の小さな会社ほど、社長のコミュニケーション力が大切になる。
社長のコミュニケーションが組織力を決定し、企業の成長発展を決めるからだ。
この記事では、組織にストレスを与えない社長の正しいコミュニケーション術について、詳しく解説する。
社長ほど、コミュニケーションに疲れるポストはない。
何といっても、社長は組織のトップであり、副社長以下は全員部下である。
年下の部下もいれば年上の部下もいるだろうし、扱いやすい部下もいれば、扱いにくい部下もいるだろう。
社内にいるだけでコミュニケーションに疲れる社長もいるだろうが、社長は社外においてもコミュニケーションのストレスを抱える。
なぜなら、社長は、社会的地位においてもトップだからだ。
外に出れば「社長さん、社長さん」と崇められ、お世辞の一つやふたつはかまされ、なかなか本音トークができずに困ることもあるだろう。
社外であっても、社長のプライドが邪魔して、コミュニケーションがうまくいかない時もあるだろう。
社内外問わず、自分の思い通りにならずに腹が立つこともあるだろうし、不愉快になることもあるだろう。
ここまでくると、社長ほどコミュニケーションに疲れるポストはないと、つくづく思う。
もしかしたら、既にもう、日々のコミュニケーションに疲れて、嫌気がさしてる社長もいるかも知れない...。
コミュニケーションとは、意思の疎通のことである。
理論的には、相手と意思の疎通が円滑に進んでいる限りは、コミュニケーションに疲れることはない。
つまり、相手の意思や意識を理解している限りは、コミュニケーションに疲れることはない、ということだ。
とはいっても、相手の意思や意識を理解することほど、難しいことはない。
なぜなら、人間は90%以上の言動を、無意識レベルで遂行しているからだ。
例えば、せっかちな人間は、無意識レベルで人を急かしたり、待ち合わせの時間よりだいぶ早く来てしまったりする。
このような行いに対して「いちいちうるさい」、「来るのが早すぎる」などと腹を立てても仕方がない。
また、見境の無い人間は、無意識レベルで他人の物を自分の物のように扱ったりするが、これもまた無意識なので腹を立ててもしょうがない。(因みに借金に抵抗がない人も見境のない人間の特徴だ。自分のお金と他人のお金の見境がついていないのだ)
このように個々の性格に起因した行動は、その殆どが無意識レベル、なお且つ、悪気がない言動なので、腹を立てても仕方がないが、じつは、コミュニケーションに疲れる最大の要因は、このような無意識レベルの言動にある。
従って、無意識レベルの言動さえ理解すれば、コミュニケーションに疲れることは殆ど無くなる。
コミュニケーションの障害になり得る無意識の正体は、端的に性格のことだ。
ヒトの性格は十人十色、また人間の癖は煩悩の数と同じく108個あると云われているので、他人の性格を見抜き、根底から理解することは至難の業である。
従って、相手の性格を理解してコミュニケーションを円滑にするには、徹底的に客観性を持って相手を理解する癖をつけることが欠かせない。
下の図は、立場の違いで考えが変わる例えを表したものだ。
上に立てば下り坂、下に立てば上り坂、同じ坂でも立場が変われば答えが変わる良い例である。
繰り返すが、人の性格には108個の癖がある。さらに、性別、育ち、環境、立場などの要因も重なって、その人独自の性格(意思や意識)が形成される。
このような複雑に絡み合った性格を深く理解するには、様々な立ち位置から客観性を持って相手を見つめることが不可欠だ。
相手の無意識レベルの言動、即ち、相手の性格を受け入れる余裕が心の中にできると、コミュニケーションは自ずと円滑になる。
例えば、相手の性格を理解していれば、たとえ自分の意に反する言動であっても抵抗なく受けれられるようになる。
コミュニケーションは相手だけを客観的に見つめていれば円滑に運ぶかというと、そうでもない。
やはり、相手を理解しながら、自分を理解することもコミュニケーションを円滑に進めるうえで欠かせない。
なぜなら、コミュニケーションを阻害する原因が、相手の性格ではなく、自分の性格に起因している事が往々にしてあるからだ。
因みに、自分の性格を理解することは非常に厄介で、大概の人は、自分がどんな人間であるか分からずに死を迎えるのが普通だ。
従って、「人のふり見てわがふり直せ」の言葉通り、相手を見つめながら、自分を見つめ直す癖をつけて、自分の性格を無意識レベルから意識レベルに顕在化させることが重要になる。
特に、周囲に意見する人間が殆どいない社長ほど、この意識が大切になる。
相手の性格が理解できれば、この人にはこういうコミュニケーション、あの人にはこういうコミュニケーションというように、その相手に応じたオーダーメイドのコミュニケーション術ができるようになる。
ひとり一人の社員、顧客、取引先、或いは、家族に対してオーダーメイドのコミュニケーションを実践すると「自分の手で相手をどうこうしてやろう」という傲慢さが消えて、「相手のことをもっと理解してやろう」という気持ちが徐々に前に出てくるようになる。
ここまでくると、社長自身がコミュニケーションに疲れることは殆どなくなり、逆にコミュニケーションが楽しくなってくる。
小さな会社ほど、社長のコミュニケーション力が重要で、社長の円滑なコミュニケーションは、人材育成、組織掌握、内外折衝、など等、会社の安定経営を支える貴重な強みになる。
どんなに小さな一歩でも構わない。
コミュニケーションに疲れる前に、相手の性格を客観的に眺めるところから始めることをお薦めする。
無意識レベルのコミュニケーション(言動)は、悪意が無いのだからすべて許されるのか?というと、そうではない。
人に害を及ぼす質(タチ)の悪さは、無意識に勝るものはない。
何といっても無意識には歯止めも、抑制も効かないので、対象に与える破壊力が半端ない。
例えば、熱々に熱した鉄板を知って触るのと知らずに触るのでは、知らずに触った方が火傷の程度が重症化する。
ヒトに対する無意識レベルの言動も同じで、無意識レベルの言動は、人を傷つける、人を悩ませる、人を悲しませる、といった人の心を傷つける破壊力が極めて高いので注意が必要だ。
相手以上に自分の性格を理解することが重要だと云われる所以は、ココにある。
日頃から「わたしはストレスなんか一つもなく毎日が楽しい」と思っているゴーイングマイウェイな社長ほど、意外と周囲にストレスを押し付けているだけかも知れない...。
正しいコミュニケーション術が身についているか否か、時には冷静に見つめ直すことも必要だ。
社長のコミュニケーション力は会社の業績を決定づけます。小さな会社ほどその影響が顕著に表れ、社長のコミュニケーション力が優れている会社の業績は間違いなく伸びています。一方、社長のコミュニケーションが雑になると、社員の不満が増加し、組織力の低下と共に、業績が下降線を辿ります。