大は小を兼ねるということわざがある。
この諺の意味は、大きいものは小さいものの代用になる、或いは、小さいものより大きいもの方が広く役に立つということだが、経済においては、大は小を兼ねないのがセオリーである。
この記事では、大は小を兼ねない理由とメリット、並びに、大は小を兼ねない会社経営が成功を引き寄せる理について、詳しく解説する。
政府は、中小企業の再編を促進することで、中小の大規模化を目論んでいる。
なぜ、政府の方針がそうなったかというと、大企業の社長や経済学者達から、中小企業が日本経済の足を引っぱっていると、事あるごとに進言されているからだ。
大は小を兼ねるの諺通り、会社の規模が大きくなれば、中小の代用になったり、中小が無くなることで経済環境が良好になったりすれば万々歳だが、こと経済に関しては、そううまくは行かない。
なぜなら、経済は、会社の規模や社員の多寡で形成されるのではなく、顧客の総意によって形成されるからだ。
例えば、イタリアンレストランの本場のピザ(手作り・ナチュラル・焼きたて)が、宅配ピザ(工場製造・ケミカル・冷凍加熱品)にとって代わるだろうか?
本場のピザを望む顧客がいる以上、小さな会社(レストラン)であっても存在意義が消えることはない。むしろ、宅配ピザがあることで、本場のピザの良さが一段と際立つ。
つまり、経済においては、大と小はお互い独立独歩かつ相反する関係性にあり、決して、大は小を兼ねないのだ。
大は小を兼ねない理は、会社の規模だけではない。
生産性の高い仕事を提供するには少数精鋭がベストである。製造設備に関しても、仕事の質と量にフィットした設備がベストであり、オーバースペックを回避することが求められる。
マーケティングに関しても、大多数の顧客をターゲットにすると競争が激化し、経営資源や生産設備が陳腐化し易くなるが、特定の少数顧客をターゲットにすれば経営資源等の付加価値がどんどん研鑽される。
大は小を兼ねない理を無視して、大は小を兼ねる方向に行くほど、会社経営は非効率に陥り、生産性が著しく低下する。さらに、不毛な競争環境に身を晒される。また、顧客を見失い易くなり、倒産確率も極めて高くなる。
大は小を兼ねない理に則った会社経営が成功を引き寄せる。
中小には中小の良さがあり、その良さを理解して下さる顧客に尽くすことで、繁栄の基盤が盤石になる。
大企業の真似をしないことが、中小企業の生きる術であり、顧客に愛される確かな方法である。
そして、顧客に愛される会社は、会社の規模が小さかろう、従業員が少なかろうが、必ず生き残る。
(この記事は2020年9月に執筆掲載しました)