中小企業の事業再生事例3(年商26億円)

中小企業の事業再生事例3(年商26億円)

 

本事業再生事例は、「年商26億円、営業利益2千万円、借金残債11億円」の中小企業のケースです。

 

資金調達力に乏しい中小・中堅企業の事業再建は大きな痛みを伴うケースが多いので、危機的状況に陥る前に、日頃から然るべき手を打って安定経営を実現することが大切です。

 

事業再生事例ほど成功のヒントを得られる教材はありません。以下の事業再生事例から何かを学び取り、反面教師として経営に活かしてください。

 

 

事業再生調査時の経営状況

中小企業の事業再生事例3(年商26億円)

 

事業再生調査時の業績状況と調査内容は下記の通りです。

 

事業再生調査時の損益状況

売上高

2,600,000

 横ばい傾向

 売上原価

2,100,000

 売上原価率80.8%

売上総利益

500,000

 売上総利益率19.2%

 販売管理費

480,000

 売上高経費率18.5%

営業利益

20,000

 売上高営業利益率0.8%

借入金残高

1,100,000

 借入限度超過

(金額単位:千円)

 

事業再生調査内容

経営診断

【経営資料から分析】

資産状況の適正診断、損益状況の適正診断、経営上の問題点、資産状況の問題点、損益状況の問題点、会計上の問題点、税金対策について、業績改善のための具体的改善策の提示、改善スケジュール案と改善効果提示、等々

内部調査

【現地調査と社員面談実施】

会社経営に関わるあらゆる面の調査・判定・リスク評価等々(経営、販売、営業、組織、開発、設備、人事、物流、生産、社員、等々)

事業再生計画作成

【経営診断と内部調査結果を元に再生計画作成】

事業再生3ヵ年計画書、キャッシュフロー表(資金繰り表)、予算管理表、等々

 

事業再生調査で判明した経営課題

 

事業再生調査で判明した主な経営課題(解決すべき問題点)、並びに、事業再生1年後の損益状況と主な事業再生手法は下記の通りです。

 

事業再生で解決すべき経営課題

経営面の課題

経営者の独裁が強い。ワンマン経営者。経営者の周囲をYESマンで固めている。後継者がいない。能力の低い役員がいる。将来のリスクに対する対策がない。予算管理がなく場当たり的な経営判断が多い。事業計画に社員の声が反映されていない。経営情報が開示されていない。会社の将来像が見えない。等々

 

組織面の課題

付き合い残業が多く業務効率が低下している。経営者の独りよがりで偏向教育を推進している。給与削減の前に教育費を削減して欲しい。教育コストが高すぎる。教育の効果、継続性がない。大半の社員が教育を歓迎していない。等々

 

販売営業面の課題

市場が縮小傾向にあるにもかかわらず、新規取組、新商品、新サービスの開発等への投資が少ない。リベートの会計処理が不適切。売上が横ばいにもかかわらず経費が増額している。新規商品や独自商品の検討がされていない。経費管理が杜撰。等々

 

人事面の課題

採用コストをかけ過ぎている。離職率が高く組織力が育たない。幹部候補を育成していない。採用の判断が軽率すぎる。実務研修がない。等々

 

事業再生1年後の損益状況

売上高

2,800,000

 売上原価

2,250,000

 売上原価率80.4%

売上総利益

550,000

 売上総利益率19.6%

 販売管理費

510,000

 売上高経費率18.2%

営業利益

40,000

 売上高営業利益率1.4%

(金額単位:千円)

 

主な事業再生手法

後継者育成・教育、経営方針の提示、組織改編、管理会計の導入、経営情報の開示、キャッシュフロー表の作成、資金繰り表の作成、予算管理の導入、3ヵ年の事業計画作成、不採算商品・サービスの収益改善、経営改善の推進、等々

 

 

伊藤のワンポイント
 

本案件の会社は深刻な経営状態に陥っているわけではありませんでした。

 

事業再生調査時から5年遡っても黒字経営がキープされていて、利益水準こそ年々低下気味ではありましたが、標準を少し下回る程度でした。

 

本案件の依頼者が問題視していたのは「後継者問題」と「借入金の返済計画」です。つまり、会社の将来を不安視しての事業再生依頼だったのです。

 

事業再生計画作りは、「後継者の適任者選び、並びに後継者に合わせた組織改編」、「将来のビジネスモデルの総点検」、「現状の経営課題の抽出」、「利益拡大」等が主なテーマになりました。

 

依頼主である経営者は、多少ワンマン経営の傾向がありましたが、数字に強く、実行力も経営手腕も素晴らしいものを持っていました。

 

また、自分ひとりの力で解決できない問題に対して外部の力を求める機転の良さや、外部の意見を取り入れる度量もありました。

 

事実、事業再生の結果、わずか1年で年間2千万円の利益改善を達成し、返済計画の問題を解消することが出来ました。

 

さらに、会社の業績改善と共に後継者教育も本格的に開始し、将来の不安も払しょくしました。

 

どんなに良い会社であっても然るべき後継者がいなければ、その会社の経営は行き詰まります。

 

後継者育成も大きな経営リスクと捉えて、日頃から取り組む心がけが大切です。