中小企業の事業再生事例5(年商11億円)

中小企業の事業再生事例5(年商11億円)

 

本事業再生事例は、「年商11億円、営業利益▲8千万円、借金残債4億円」の中小企業のケースです。

 

資金調達力に乏しい中小・中堅企業の事業再建は大きな痛みを伴うケースが多いので、危機的状況に陥る前に、日頃から然るべき手を打って安定経営を実現することが大切です。

 

事業再生事例ほど成功のヒントを得られる教材はありません。以下の事業再生事例から何かを学び取り、反面教師として経営に活かしてください。

 

 

事業再生調査時の経営状況

中小企業の事業再生事例5(年商11億円)

 

事業再生調査時の業績状況と調査内容は下記の通りです。

 

事業再生調査時の業績状況

売上高

1,100,000

 下降傾向

 売上原価

1,020,000

 売上原価率92.7%

売上総利益

80,000

 売上総利益率7.3%

 販売管理費

160,000

 売上高経費率14.5%

営業利益

▲80,000

 売上高営業利益率▲7.3%

借入金残高

400,000

 借入限度超過

(金額単位:千円)

 

事業再生調査内容

経営診断

【経営資料から分析】

資産状況の適正診断、損益状況の適正診断、経営上の問題点、資産状況の問題点、損益状況の問題点、会計上の問題点、税金対策について、業績改善のための具体的改善策の提示、改善スケジュール案と改善効果提示、等々

内部調査

【現地調査と社員面談実施】

会社経営に関わるあらゆる面の調査・判定・リスク評価等々(経営、販売、営業、組織、開発、設備、人事、物流、生産、社員、等々)

事業再生計画作成

【経営診断と内部調査結果を元に再生計画作成】

事業再生3ヵ年計画書、キャッシュフロー表(資金繰り表)、予算管理表、等々

 

事業再生調査で判明した経営課題

 

事業再生調査で判明した経営課題(解決すべき問題点)、並びに、事業再生3年後の損益計画と主な事業再生計画の前提条件は下記の通りです。

 

事業再生で解決すべき経営課題

経営面の課題

経営者が独裁でワンマン。経営者に意見を言える社員がいない。会社が創業以来、赤字経営となっている。原価計算がされていない。採算割れの商品やサービスが沢山ある。種々のリスクをコスト計算に加味していない。経営の要である損益管理が杜撰。後継者がいない。等々

 

組織面の課題

就業時間が長い。休日がない。休日出金の手当てがない。就業条件が劣悪。離職率が高い。人員が不足している。人材育成に時間とコストがかかる。離職率が高く、ベテランが根付かない。経営者の独裁度が強く、社員の自主性が育まれていない。社員の声が無視されている。等々

 

販売・営業・サービス面の課題

経営者のトップダウン営業に頼っている。顧客層が偏り過ぎている。大口取引先の依存度が高い。販売先のリスクヘッジができていない。等々

 

事業再生計画提示(3年目)

売上高

1,000,000

 売上原価

950,000

 売上原価率95%

売上総利益

50,000

 売上総利益率5%

 販売管理費

30,000

 売上高経費率3%

営業利益

20,000

 売上高営業利益率2%

(金額単位:千円)

 

主な事業再生計画の前提条件

会社清算・個人破産、新会社設立、スポンサーの参画、管理部門の外注化、経営者教育、管理会計の導入、経営情報の開示、キャッシュフロー表の作成、資金繰り表の作成、予算管理の導入、3ヵ年の事業計画作成、不採算商品・サービスの収益改善、経営改善の推進、等々

 

 

伊藤のワンポイント
 

本案件は、業績状況を見れば明らかですが、すでに経営破たんの状態にありました。

 

会社が経営破たんの状態、加えて、銀行借入は上限一杯まで借り尽くし、私財も殆どつぎ込んでいて、資金も枯渇していました。

 

事業再生に必要な資金がない状況だったので、如何にドラスティック(抜本的)な経営改革を断行したとしても事業再生は不可能と判断したケースです。

 

必然的に、事業再生計画作りのテーマは「事業の継続」と「経営者一族の財産保全」になりました。

 

提示した事業再生計画は、新会社設立を前提としています。事業継続の足を引っ張る負債等を旧会社に残し、新会社に事業継続に必要な資産等を移管し、そのままスポンサー企業に売却するというスキームです。(経営者と旧会社は破産手続きを申請して再出発)

 

結局、本案件は、事業再生計画を元に依頼主が自主再生の道を選択しました。