資金繰りとは、会社の現預金の収入と支出の出納管理のことである。
中小企業の多くは信用取引(売掛・買掛取引)が主流なので、現預金の収入予定、或いは、現預金の残高状況に合わせて支出計画を考えないと、現預金の収支がマイナスになるリスクが高まる。
万が一、現預金の支出を見誤り、現預金残高がマイナスに転じると、支払うべきお金が無くなり、黒字経営にも関わらず倒産する事態も招きかねない。
資金繰りは、中小企業の安定経営に欠かせない重要な会計管理になるが、この記事では、資金繰りの基本概要から管理上の重要ポイントに至るまで、詳しく解説する。
資金繰り表とは、円滑な資金繰りの実現を支える会計ツールのことである。
具体的には、日々の収入と支払いを記帳・記録する会計帳簿のことを資金繰り表という。
中小企業が安全な資金繰りを運用するには、最低3ヵ月先(できれば6ヵ月)の資金繰り表を作成しなければならない。
なぜなら、先々の資金繰りが不明だと、急な資金不足や資金需要に十分に対応することができないからだ。
3ヵ月先までの現預金の収支状況が分かると、先々の現預金残高の状況が把握できるので、資金需要に合わせた資金調達の準備にゆとりが生まれる。
例えば、
☑運転資金の枯渇(業績悪化、赤字拡大など等)
☑突発的な資金需要(設備故障対応、大口取引消滅、開発案件受注など等)
など等、突発的な資金需要が発生したとしても先々の資金繰り状況が分かっていれば、事前に必要資金の手当てをすることが可能になる。
もしも先々の資金繰り状況が分からなかったらどうなるだろうか?
▶「1週間後の支払いの現預金が足りません!!」
▶「受注した開発案件に使えるお金が足りません!!」
という事態に直面する可能性も出てくる...。
手元に資金繰り表がなければ、まともな会社経営ができないことは容易に想像できるだろう。
会社はお金で始まり、お金で終わる。
つまり、会社のお金が無くなると、会社は倒産する。
会社の倒産は、関係者全員を不幸にする由々しき事態だ。
資金繰り表は、会社のお金の残高ポジションを正確に表すので、正しく運用していれば経営の危険信号を事前に捉えることができる。
例えば、黒字経営にも関わらずお金の残高ポジションがなかなか上がらない場合は、未回収の不良債権が増えている可能性がある。
決まった入金日に支払ってこない取引先を放置すると、相手方はますます支払いにルーズになる。なかには、督促がない限りは支払わなくても良いと勘違いする取引先も現れかねない。
代金回収をおざなりにして、経費の支払いを優先していると、たとえ黒字経営であっても、資金繰りが苦しくなる一方になり、最悪、黒字倒産という結末も招きかねない。
資金繰り表を運用しないと、代金回収や不良債権の管理精度が低下し、様々な衰退リスクを生み出す。つまり、資金繰り表は安定経営の必須ツールといえるのだ。
資金繰りのゆとりを生み出すにはコツがいる。
例えば、「入るを量りて出ずるを為す(いるをはかりていずるをなす)」という言葉がある。
言葉の意味を要約すると、「収入に応じた支出計画を考えなければ、貯金はたまらない」ということだが、これは、ゆとりのある資金繰りを実現するうえで不可欠な考え方を表している。
つまり、「代金を回収してから支払う」、或いは、「代金以下の支払いに収める」という大原則を守っている限りは、資金繰りに窮することはない、ということだ。
当然ながら、この大原則から外れてしまうと、資金繰りはいとも簡単に行き詰る。
例えば、
☑代金を回収する前に支払う
☑代金以上の支払いを抱える
などの行動は、資金繰りを行き詰らせる最たる要因になる。
会社経営とお金には密接な関係性があり、お金の管理の出来不出来で経営の出来不出来が決まるといっても過言ではない。正しい資金繰りが、正しい経営を作り上げるのだ。