経営者にとって法律順守は最低限のマナーだ。
従って、会社の法律違反を見逃す経営者はダメ社長といわざる得ない。
この記事では、会社の法律違反を見逃すダメ経営者の事例について、詳しく解説する。
会社経営に関わる法律違反は多岐にわたる。
法定労働時間の超過や残業代の未払いは労働基準法違反、脱税は税法違反、粉飾は会社法違反や金融商品取引法違反、販売価格の強制や不公平な取引解消は独立禁止法違反、など等、会社の規模に関係なく法律違反のリスクは身近にある。
倒産の危機に瀕した中小企業の調査に入ると、稀に法律違反に遭遇することがある。
この種の情報は、決して経営者や幹部社員からは上がってこない。社員面談の際に、社員から知らされることが殆どだ。
法律違反のケースはさまざまだが、社員としては良心の呵責に耐えられないというのが正直な心情だと思う。
「会社からの命令でやっているが自分は法律違反に手を貸している。経営者は是正してくれない。外部に助けを求めれば法律違反が明るみに出て会社が潰れるかも知れない。そうすれば働き口がなくなるのは自分。結局、誰にも言えないまま、法律違反の日々が過ぎていく...」
会社の法律違反や不正行為が外部に一切漏れない背景には、このような弱者的立場の社員の存在がある。
しかし、社員全員が弱者であるはずはない。
事実、会社の法律違反や不正行為が外部に漏れる場合は、社内の人間が外部にリーク(※1)することが殆どだ。
社内の人間であっても、転職者や退職者はリークしやすい立場にあるし、正義感の強い社員もいる。何れにしても法律違反や不正行為は、いつかは外部に漏れるものと思ったほうがよい。
※1 リークとは、機密を漏らすこと。又は機密が漏れること。
会社の法律違反や不正行為を容認している経営者は、その行為を止めてしまうと「売上が下がる」と思い込んでいる方が殆どである。
「周りの会社もみんなやっているから自分もやっている」という主張も多く、こちらから「なぜ、会社の法律違反等を容認しているのか?」と問うと、法律違反等に対する反省や後悔の念はなく、完全に開き直っている経営者も少なくない。
なかには、会社の法律違反の深刻度をさほど深く理解していない経営者もいる。
また、法律違反や不正行為が明るみにでた時に受ける会社の損害リスクの認識が非常に甘いというのも、法律違反等を見逃す社長に多い特徴だ。
なかには「社長に代わって私が責任を取ります」と意気込む経営幹部もいるが、法律違反に伴う会社が受ける損害は、ひとりの社員が責任をとったくらいで収まるほど軽いものではない。
法律違反や不正行為が明るみに出た場合、資本力の乏しい中小企業は、高い確率で倒産する。
会社倒産とは、関係者全員が一瞬で不幸のどん底に突き落とされる、ということだが、法律違反の代償はそれほど深刻であり、幹部社員ひとりの責任で補える問題ではない。
法律違反や不正行為を止めると売上が下がるという主張も分かるが、倒産してしまえば売上はゼロになる。
精神的には、むしろマイナスといってもいいかも知れない。
それであれば、多少の売上減少を覚悟した上で、少しでも法律違反等を是正した方が経営者としては正しい経営判断だろう。
少なくとも法律違反や不正行為がなくなれば、全うな会社経営に立ち返ることができる。
法律違反に一度手を染めると後戻りするのは至難の業だ。
大抵は、大事に至るまで法律違反が続き、最終的に倒産の危機に瀕するというケースが殆どだ。
経営者は、会社に関わる全ての関係者と、その背後にいる家族の幸せを一身に背負う立場にいる。
ひとりで勝手気ままな人生を送れるほど気楽な立場ではない。
真っ当な会社経営を目指す経営者であれば、法律遵守はもちろんのこと、世間や社会に迷惑をかけまいとする高い倫理観が必要だ。
また、法律の範囲なら何でもOKという言動も控えた方が良い。
なぜなら、倫理観(モラル:moral)は、法律のうえに存在しているからだ。
つまり、倫理観のないヒト(モラルの低いヒト)が法律に頼るのであって、本来、倫理観の高いヒトに法律は不要なのだ。
倫理観の欠如から、法律違反に手を染める行為は経営者として失格であり、会社の法律違反を見逃す経営者も同類である。倫理観なくして、会社の安定経営を実現すること困難といっても過言ではない。
知らなかったでは済まされないのが法律違反の怖いところです。最悪、会社倒産というケースもありますので、法律違反は絶対にしないでください。そして、モラルある上品な会社経営を実践することも大切です。モラルなき経営は、必ず周囲(社員・顧客・業界・世間・マスコミ等)の反感を買い衰退します。