
経営マネジメント原論6、
本記事では、七大資源「モラルの最適化(モラルのマネジメント)」について、詳しく解説する。
モラルとは、人が現実社会において守るべきとされる規範のことだ。
モラルに法的な拘束力はないが、とても大切な経営資源だ。
モラルなき経営に、明るい未来はなく、法律さえ守れば何をしても良いといったモラルに欠けた会社経営は長続きしない。
一時は儲かっても、世間、社員、お客様、取引先、メディア等から非難を受け、必ず行き詰る。
いつかは終わるモラルに欠けた経営をするよりも、いつまでも終わらないモラルありきの経営を実践した方が、楽に企業の寿命を延ばすことができる。

数字だけで企業の良し悪しが評価される時代はとっくに終った。
これからは良い数字だけではなく、企業の品格・倫理・文化性等のモラルが大きく評価される時代だ。
モラルに欠けた企業の言動はすぐに発覚する。
発覚した時のダメージとデメリットも極めて大きい。
情報発信のインフラが乏しかった頃は、多少のモラル違反をベースに売上を伸ばすスタイルが割に合っていたかも知れないが、今は違う。
ほんの小さなモラル違反が、企業の衰退リスクを飛躍的に高める。
この先も、モラル違反が割に合わない時代は続く。
短期的な視点で経営するのではなく、長期的な視点を持って経営することが、とても重要だということだ。

モラルのマネジメントの基本について、解説する。
モラルの最適化は、上品な企業風土のうえに成立する。
上品さとは、誠実な生き様、綺麗な言葉遣い、何事も筋を通す、自他を敬う、道徳を守る、分別を持つ、礼節を弁える、自利利他を実践する、TPOを意識する、前向きに生きる等の、自分を律する佇まいと他者を気遣う振る舞いだ。
上品な企業風土が定着すると、後ろめたい仕事が無くなるので、働く環境が極めてクリーンになる。
組織の風通しも、社員の仕事の質も格段に良くなる。結果、お客様からの信頼が厚くなるので、信頼が新しい仕事を引き寄せる繁栄のスパイラルが回る。
不況や不調に陥ったとしても、助けの手が止まないので、ピンチがチャンスに変わる。とにかく、上品な企業風土は、未来を明るくする。

モラルのマネジメントの重要ポイントについて、解説する。
モラルは個人の感性によって善悪の判断に差異が生じるが、この差異を解消する手立ては難しくない。経営者が上品さを体現すれば良いだけだ。
社員は、トップの一挙手一投足を見て育つので、トップが上品であれば、社員もそれに倣う。
また、モラルに欠けた言動を見た時は、間髪入れずに指摘することも大切だ。まぁいっかと流すのは禁物だ。
モラルを正すコミュニケーションが充実するほど、善悪の判断精度は高まる。くれぐれも社外研修やルールブックなどに頼らないことだ。
モラルは目には見えない無形のものだが、お金、社員、お客様等の有形物を生み出す大きな力を持っている。
つまり、モラルが最適化されるほど、売上や採用に困らない経営基盤が整うのだ。
経営者は上品でなければならぬ、というのは私の持論だ。
とにかく、言動が上品であれば、周囲の助けも、成功のチャンスも自ずと増える。
また、経営者のモラルは、周囲(社員・お客様・取引先等)からの信頼を引き寄せる。
モラル度返しの、拝金主義的な経営をしている会社から見れば、モラル第一のクリーンな会社経営は非合理に見えるかも知れないが、信頼に勝る武器はない。
信頼があれば、社員やお客様からずっと選ばれる会社でいられる。長い目で見れば、非合理ではなく、極めて合理的だ。

会社の未来は、
儲かったかどうかではなく、ベストを尽くしたかどうかで決まる。
売上の源泉となるお客様にベストを尽くすのは当たり前のことだ。
しかし、創業時の苦難が過ぎ去り経営が安定してくると、どうすればお客様に対してベストを尽くせるか、ではなく、どうすればもっと儲かることができるかに、思考が偏りがちになる。
こうなると、モラルに欠けた顧客軽視の言動が増え、知らぬ間にお客様からの信頼を失い、会社は衰退する。
衰退企業には、必ずと言っていいほど儲かっていた時期があるが、殆どの会社は、当たり前の仕事が不十分になったことで、繁栄から衰退に転落している。
ビジネスは、先見の明があるから成功するわけではない。
不格好でも、非効率でも、結果に恵まれなくても、目の前の仕事・役割・お客様にベストを尽くすから、明るい未来が拓き、成功が近づくのだ。
モラルは、当たり前のことを当たり前に行うための最後の砦になる。
追い詰められた時ほど、モラルを大切にしてほしい。社長の人生も会社の未来も、きっと救われる。
ぜひとも、モラルある事業活動を推進し、事業活動の成果を一段と拡大してほしい。
もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。
次回ページでは、事業活動を支える七大資源「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」のうち、「テクノロジーの最適化」について、詳しく解説する。
次ページ⇒7大資源「テクノロジー」を最適化する
(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」