経営マネジメント原論3|七大資源「カネ」の最適化

 

経営マネジメント原論3、

 

本記事では、七大資源「カネの最適化(カネのマネジメント)」について、詳しく解説する。

 

カネの最適化は、

 

稼ぐ力・貯める力・借りる力を強化することで得られる。

 

お金を稼ぐ力、お金を貯める力、お金を借りる力、この三つを強化すると、お金の余力が大きくなる。

 

お金の余力が大きくなると、事業の推進力が増すので、会社は自然と繁栄する。つまり、カネの最適化は、繁栄の基盤を盤石する。

 

稼ぐ力は、事業活動を支える最重要の7つの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー)を最適化することで強化できる。

 

どれか一つでも劣っていると、そこが会社の弱点となり、衰退リスクが大きくなるので、確実かつバランスよく最適化を実践してほしい。

 

カネのマネジメント|稼ぐ力を磨く

 

お金を稼ぐ力を高めるマネジメントについて、解説する。

 

お金を稼ぐ力を測定する指標は年計の経常利益がお薦めだ。

 

会社は一年という期間でしか評価されないので、月単位ではなく、年単位(過去12カ月間の合計値)の経常利益を把握することが重要だ。

 

年計の経常利益の推移を毎月モニタリングすると、会社が成長(利益拡大)しているのか、衰退(利益縮小)しているのかが良く分かる。

 

経営戦略の修正可否を迅速に判別できるので、成長と挽回のチャンスも増える。稼ぐ力をより強化する先手必勝の経営姿勢も定着するので、未来がどんどん明るくなる。

 

経常利益の目標水準は売上総利益(粗利)の20%が目安だ。粗利が100円あったら、利益を20円残すイメージだ。

 

目標を下回っている場合は、毎年、1%ずつでも改善できるよう努力しよう。目標を上回っている場合は、周囲に無理を押し付けていないかチェックして、特段、周囲に無理がないのであれば、利益水準は高くても問題はない。

 

特に、数年単位で多額の設備投資や開発投資を要する業種は利益水準が高い傾向にあるので、どんどん、高みを目指してほしい。

 

なお、利益率が高水準であっても、利益金額が小さいと繁栄に支障が出るので、お金に一定のゆとりができるまでは、売上拡大もセットで運用しよう。

 

カネのマネジメント|貯める力を磨く

 

お金を貯める力を高めるマネジメントについて、解説する。

 

お金を貯める力は、キャッシュフロー経営を実践することで強化できる。

 

キャッシュフロー経営とは、現預金の増減に目を光らせる経営スタイルだ。

 

入金の遅れや支払いのミスだけでなく、収益性低下、投資効率悪化、仕入や在庫過多、返済負担悪化、資産効率悪化、不良性資産増加など、深刻なキャッシュアウトを招く根本原因を未然に防ぎ、キャッシュが貯まりやすい経営環境を整える。

 

キャッシュを貯める力は多くの中小企業が苦手としている領域だが、チェックポイントさえ抑えれば、簡単に強化することができる。

 

見るべき指標は、貸借対照表の「現預金」と「純資産」の推移だ。この2つの数字が毎月増えていれば正常、毎月減っていれば異常だ。

 

特に、経常利益が黒字であっても、マイナス傾向が続く場合は、深刻な事態が起きていると思ってほしい。

 

速やかに原因を特定し、状況を改善しないと、挽回のチャンスはどんどん無くなる。傷口が小さな内に対処することが、回復を早める鉄則だ。

 

貯める力は、自己資本比率(計算式:〔純資産÷総資本〕×100)で評価すると分かりやすい。

 

目標は50%以上だ。小さな会社ほど、資金調達の手段が限られるので、自己資本比率は高いほど良い。

 

目標を下回っている場合は、毎年、1%ずつでも改善できるよう努力しよう。

 

なお、創業間もない時期や外部借入で大型投資を実行した直後は自己資本比率が著しく低下する。

 

こういう時は、自己資本比率をあまり気にせず、創業時や投資の際に掲げた目標利益の獲得に全力を注いでほしい。目標利益を獲得するにつれて、自己資本比率は自然と回復する。

 

カネのマネジメント|借りる力を磨く

 

お金を借りる力を高めるマネジメントについて、解説する。

 

お金を借りる力は、稼ぐ力と貯める力を鍛えるほど強化される。

 

経常利益と自己資本比率の水準が高いほど、お金は借りやすくなるし、返しやすくもなる。

 

お金の借りやすさと返しやすさは、事業の自由度を高め、飛躍のチャンスを格段に増やす。

 

例えば、毎年、1千万円の利益を出している会社があったとする。借金をしないで1千万円の利益で成長投資を推進するケースと、1千万円の利益を担保に1億円の融資を引き出して成長投資を推進するケース、

 

この二つを比べた場合、成長速度が速いのは後者だ。お金を借りることで、資金効率と投資効率は劇的に改善する。特に低金利時代は、この効果がより顕著に現れる。

 

但し、注意も必要だ。

 

借金は人様のお金なので、返済義務がある。返済原資をしっかり生み出すためには、一定水準の経常利益をキープすることと、キャッシュフロー経営を実践することが欠かせない。

 

ココの詰めが甘くなると、借りる力が仇となって会社経営に失敗するので、くれぐれも注意してほしい。

 

なお、多少の借金は常に抱えていた方が良い。

 

銀行との取引(融資実績・返済実績)が全く無いと、新規融資の手続きに相当な時間がかかるからだ。

 

必要な時に、必要な融資をサッと引き出すには、多少の借金を抱えて、常日頃から信頼関係を作っておくことが有効だ。

 

この先、国家を超えたトークンエコノミー(代替通貨経済圏)が拡大するにつれて、銀行を介在しない金銭取引が増えると思うが、お金が絡む相手との信頼関係はいつの時代も必要だ。

 

カネのマネジメントの重要ポイント

 

最後に、お金の稼ぐうえで気を付けてほしいことをお伝えする。

 

お金を稼ぐことは、とても大切なことだが、お金を稼ぐ手段や目的を間違えると、会社は、あっさり衰退する。

 

例えば、

 

お金を稼ぐためにヒトを犠牲にする、粗悪なモノを提供する、顧客を欺く情報を流す、安心安全にコストをかけない、モラルのない商売を始める、テクノロジーを悪用するなどの行動は、一時は稼げても、絶対に長続きしない。

 

お金を稼ぐために経営資源を最適化すれば、お金は後からついてくる。稼ぎ方ひとつで、未来は明るくも暗くもなることを肝に銘じてほしい。

 

まずは紹介した経営指標を活用して現状を分析し、おカネの最適化に取り組んでほしい。きっと業績拡大のヒントが見つかるはずだ。

 

もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。

 

次回ページでは、事業活動を支える七大資源「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」のうち、「情報の最適化」について、詳しく解説する。

 

次ページ⇒7大資源「情報」を最適化する

 

(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)

 

筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」