経営マネジメント原論1|七大資源「ヒト」の最適化

 

ヒトは最も重要な経営資源だ。

 

なぜなら、すべての経済活動は、ヒトが生み出した商品を、ヒトが消費することで成立するからだ。

 

様々な分野や領域にロボットやデジタルが介入したとしても、単独でロボット化やデジタル化が進むことはなく、その向こうには、必ず生身の人間がいる。

 

ビジネスの起点と終点は、ヒトで始まり、ヒトで終わるのだ。

 

さらに言えば、ビジネスは、ヒトの繋がりうえに成立する。

 

社長と社員、社員とお客様、会社と株主・取引先・協力会社など、ヒトの繋がりがないビジネスは存在しない。

 

そう考えると、この先の未来も、ヒトは最も重要な経営資源としてあり続けるだろう。

 

ヒトのマネジメントの基本

 

ヒトの最適化は、相手の利益を優先することで得られる。

 

社長は私利私欲ではなく、自利利他の精神で常に相手の利益を優先する。社員一人ひとりを、社会で広く活躍できる人財に育てる、

 

誠実な姿勢でお客様にベストな仕事を提供する。取引先や協力会社と課題を共有し、共に繫栄できるよう知恵を出し合うなど、

 

とにかく、お互いの心身に過度なストレスを与えることなく、一緒にいることで常に明るい未来を実感できる健全な関係性を創ることがとても肝要だ。

 

健全なヒトの繋がりは、仕事の感動レベルを高め、成長のアイデアを豊かにする。

 

結果、誰もが想像しない未来を次々と生み出し、事業活動の永続性を着実に高める。

 

ヒトのマネジメントのお手本

 

相手の利益を優先する経営スタイルは大阪商人が得意だった。

 

大坂の町は秀吉が築き、家康がそのまま引き継いだが、江戸末期までビジネスの中心は大阪であり、大阪商人が主役だった。

 

大坂商人と聞くと、商売っ気が旺盛で、ケチで利益に敏いイメージを持つかも知れないが、大阪商人の本質的気質は、相手の利益を優先するところにあった。

 

利益を独り占めするようながめつさはなく、時には身銭をきって他人のビジネスを助けることも日常的にあったようだ。

 

例えば、江戸時代の大阪の街には、現代以上に沢山の橋が架かっていたが、その9割は私設の橋、つまり、誰かが人々の生活や商売のために私財を投じて作った橋だった。(因みに東京の橋は殆どが官製)。

 

このエピソードひとつとっても大阪商人の気質が伺えるが、江戸~明治時代までの商売人(ビジネスパーソン)には、こうした気質が大いに残っていた。

 

相手の利益を優先することで得られるメリットは、大きな信頼が得られることだ。

 

信頼の効果は絶大だ。信頼があれば、ライバルに勝てる。信頼がきっかけで、新しい注文が入る。苦境の時の助けの手の多寡も信頼で決まる。

 

自分中心のビジネスは何れ破綻する。

 

相手の目線になって物事を考え、常に相手の利益を想う誠実な姿勢がビジネスに関わる人々の心身に良い影響を与え、明るい未来を創る経営基盤を一層強くするのだ。

 

ヒトのマネジメントの重要ポイント

 

ヒトへの利益は、経済と精神の両方が必要だ。人は、時おり非合理な判断を下すからだ。

 

他方で安く売っていることを知っていながらあえて高く買う、給料が下がるのを承知で転職する、給料が上がるのに昇進を望まない、損得度返しで好条件より悪条件を選ぶなど、ヒトは経済的合理性に欠いた判断を平気でする。

 

経済活動には、こうした非合理な反応が大量に混入しているので、相手に利益を与えたとしても、思い通りの結果にならないことが度々起こる。

 

この先、AI(人工知能)の力で、人間の非合理な思考パターンは多少補正されるかも知れないが、完璧には至らないだろう。

 

非合理な反応に左右されない環境を整えるには、お金などの経済的利益だけではなく、喜び、感動、愛情、信頼、安心、評価、励まし、拠り所、やり甲斐などの精神的利益をしっかり与えることが大切だ。

 

社員の性格、お客様の嗜好、取引先の心情に寄り添って、精神的利益を与えるほど、非合理な反応が減り、想定と結果のギャップが小さくなる。

 

想定外の社員の離職、お客様の離脱、取引先の離反も少なくなるので、事業の永続性も高まる。

 

ヒトのマネジメントが未来を切り拓く

 

世界人口のピークアウトが迫っていることを考えると、ビジネスにとっての希少資源は、資本(カネ)や設備(モノ)等からヒトにどんどんシフトする。

 

今後、ヒトにそっぽを向かれる会社は生き残れない。

 

明るい未来はヒトが握っている。だからこそ、未来が見えなくなった時ほど、相手の利益を優先してほしい。

 

ビジネスは相手が有って初めて成り立つ。自分と相手の利益を天秤にかけて、少しでも相手の利益が大きくなるように心掛けてほしい。

 

相手に与えた利益の大きさに比例して、ヒトのパフォーマンスはどんどん最適化される。

 

ぜひとも、今いる社員のマンパワーを最適化し、事業活動の成果を一段と拡大してほしい。

 

もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。

 

次回ページでは、事業活動を支える七大資源「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」のうち、「モノの最適化」について、詳しく解説する。

 

次ページ⇒7大資源「モノ」を最適化する

 

(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)

 

筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」