経営マネジメント原論8|未来ビジョンで経営資源を最大化する


マネジメントの本質は、


保有している経営資源(リソース)を最大限活用することだ。


重要な経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」の七大資源で、それぞれの資源の最適化の方法論については、別記事で解説した通りだ。


もちろん、お伝えした方法論は一例に過ぎないので、それぞれの経営環境に合わせたアレンジが必要だが、経営資源が最適化されていれば、明るい未来がキープできる。


とはいえ、


何の考えもなく、行き当たりばったりの行動で明るい未来がキープできるほど、世の中は甘くない。


厳しい環境下で、ライバルに勝ち続けるには、どんな未来を創りたいのか、未来を具現化するビジョンを宿すことが大切だ。


未来は、今をアップデートすることで変わる。


当然、アップデートの方向性があやふやだと、未来もあやふやになる。


どんな会社を創りたいのか、どんなお客様に幸せを届けたいのか、アップデートの方向性を示す明確な未来ビジョンを掲げることが、より良い未来を創るのだ。


経営マネジメントの成果


経営マネジメントの成果について、解説する。


経営マネジメントの成果(経営資源の最適化・最大化)は、ビジョンで決まる。


そもそも、人間は楽な方に流される生き物なので、未来ビジョンを掲げなければ、今を変えようとしない。


例えば、何か新しいことを始めようとすると、組織は未来ではなく、過去と現在を見る。前例がない、今はできない等の理由をつけて、未来を見ようとしない。


こういう時に役立つのが未来ビジョンだ。


今に留まるよりもずっと良いと思わせる未来ビジョンを掲げると、組織のコンフォートゾーン(快適な空間)は、今ではなく、未来にシフトする。


ひとたびコンフォートゾーンが未来に向くと、今の環境に留まることが不安、あるいは不快に感じるようになるので、組織の力(目標・理想・視点等を含む)は、一瞬で新しく掲げた未来に向かう。


結果、未来創造の源泉となる経営改善(経営資源の最適化)の推進力が高まり、今をアップデートするスピードが加速する。


さらに、アップデートの方向性も安定するので、明るい未来をキープし易くなる。


経営マネジメントの実践


未来ビジョンを組織に浸透させる方法は簡単だ。


日ごろから、社長が社員に対してビジョンを語るだけで大丈夫だ。


ビジョンを紙に書いて社内に貼る必要はない。手帳に印刷して社員に配る必要もない。


どのみち未来はコロコロ変わるので、目指すべきビジョンは状況に応じて変化する。


社長が率先して未来ビジョンを掲げ、ビジョンを浸透させるコミュニケーションを充実させることが何よりも大切で、コミュニケーションが充実するほど、未来は良くなる、良くしていけると考える企業風土が定着する。


ソニー創業者の井深大は、人真似・猿真似を嫌い、新しい未来を創ることに人生をかけていた。


創造と独創の精神を体現し、世界初、世界最小、世界最軽量などの製品を数多く生み出した。自身が掲げた「見本のない産業を創り出す」というビジョンも有言実行した。


当時の部下でノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈は、「井深さんは温故知新ではなく、未来を考え、今を知る人だった」と語っている。


社員に対しては「10年後ではなく、30年後や40年後にはどうなっているしどうなるべきだから、という考え方をしないといけない」とよく語っていたようだ。


トップが率先して未来ビジョンを掲げ、明るい未来を創造した好例と言えるだろう。


未来を切り拓く経営マネジメント


新しい分野、誰もやらなかった領域に、次の時代の新しい常識やビジネスが控えている。


新しいことにチャレンジする時は、決まって反対意見が出るものだが、皆が反対するから新しいのだ。


チャレンジの壁が高いほど、得られる成果も大きくなる。だからこそ、怖がらずに最初の一歩を踏み出すことが大切だ。


また、時代の先を行く者には必ず批判がついて回るが、批判を恐れないでほしい。


人類史上、批判されたことがない人間は一人も存在しない。世界中から聖人と崇められているブッタやキリストでさえ批判の対象になった。


批判されることは当たり前の自然現象であり、誰からも批判されない人間など、この先も現れないだろう。


人間は影響力を持つほどに批判され易くなるので、もし誰かから批判されたら、自分、あるいは、自分の会社の影響力が大きくなったと思えばよい。


その時は、くれぐれも批判と敵対して無駄なエネルギーを消耗しないことだ。


腹を立てても構わないが、時間をかけてでも批判を受容し、自分の思考や度量を広げ、人間的な魅力や影響力をどんどん磨いてほしい。


そして、批判を恐れず、自分が正しいと思う未来を実現することに全エネルギーを注いでほしい。


未来が分かり切った会社経営ほどつまらないものはない。


やはり、自分の想像を超える未来が現実のものとなるから会社経営が楽しいのであって、思いもよらないご縁や体験が社長自身の生きがいそのものに繋がるのだと思う。


もちろん、会社経営は、楽しい事ばかりではないだろう。


辛いこと、苦しいこと、逃げ出したいこともあると思う。


それでも、マイナスはプラスの入り口だと思って、目の前の人・仕事・役割に全力を尽くせば、未来は必ず良い方向に拓かれる。


経営マネジメントの精度を高める


最後に、経営マネジメントの精度を高める施策について、解説する。


未来ビジョンを掲げたら、好不調の兆しを素早くキャッチアップする仕組みを確立することも必要だ。


好不調の兆しは、「数字・社員・顧客・社会・経済」の5つを観察すると分かる。


観察方法や検証方法は多岐にわたるが、この5つの要素をしっかり観察するほど、事業活動の精度が高まる。


好調時は、リスクヘッジしながら事業展開のスピードを加速することができるし、不調時は、異変・異常・リスクに素早く対処することで、不調から脱却することができる。


先手必勝の経営改善(経営資源の最適化)が定着するので、事業活動を支える7つの経営資源「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」の価値も拡大し、会社の未来はますます安泰になる。


会社を取り巻く環境は絶えず変化する。


顧客、市場、経済、世界情勢、ライバル、テクノロジー、社会インフラ、人々のマインドなど、世の中の変化は止まない。


ぜひとも、機を見ながら、小さな変化の源泉となる経営改善(経営資源の最適化・最大化)を実践してほしい。


周囲の変化に後れを取ることなく、機を見ながら、小さな変化を積み重ねれば、どんなに小さな会社であっても、大きな変化に耐えうる強い会社に生まれ変わる。


日々の小さな変化の積み重ねが、あなたの想像をはるかに超える未来を形作るのだ。


もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。


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(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)


筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」