経営マネジメント原論4、
本記事では、七大資源「情報の最適化(情報のマネジメント)」について、詳しく解説する。
古くから情報を制する者が世界を制する、
と言われているが、この理は、この先も変わらない。
情報を支配する者が、経済を制し、世界を制し、未来を制する。
例えば、人々の購買活動は、メディア等から流れてくる情報を元に形成されるので、自分の意志で購買しているようで、じつは情報に支配されている。
最近は、IT(情報技術)とAI(人工知能)による行動履歴(ビックデータ)の分析が進み、個人単位にカスタマイズされた情報(広告・画像・動画・投稿等)が各々に提供されるようになったので、情報の支配力は強まる一方だ。
企業の事業活動においても、誰よりも早く有益な情報を収集し、その情報を開発や販売に活用するほど、事業拡大のチャンスに恵まれる。
また、事業活動のあらゆる情報を社内で上手に共有すれば、組織力が強化され、全方位の生産性が向上する。とにかく、情報は企業の盛衰を分かつ、重要な経営資源だ。
情報のマネジメントの基本について、解説する。
情報の最適化は、発信力・収集力・共有力を磨くことで得られる。
情報の発信力は、口コミとメディアが肝になる。
口コミは、ヒトとヒトの接触によって生じる情報だ。
個人の趣味嗜好・行動範囲、交友関係等によって情報量が決まるので、人によって情報量や情報の質に偏りは生じるが、古くから人々の経済活動に大きな影響を及ぼしている。
メディアは、看板、チラシ、雑誌、新聞、ラジオ、テレビ、インターネット、SNS(ソーシャルネットワーク)等がある。
技術革新やイノベーションの度に新しい情報媒体が生まれ、情報発信の精度もどんどん向上している。
人々の日常生活のあらゆる角度から情報を発信してくるので、口コミ同様、経済活動に大きな影響を及ぼしている。
情報を発信する力を高めるマネジメント(口コミとメディア網の強化)について、解説する。
良質な口コミは、お客様に提供する体験価値を高めると増加する。
一人のお客様との接点は、業種業態によって様々だが、体験価値が生まれる顧客接点は多いほど良い。
接点の作り方はヒトとヒト、ヒトとモノ、ヒトとデジタル、何れのパターンでも構わないが、顧客接点はお客様に喜びと感動を与える絶好のチャンスだ。その一瞬のチャンスをどれだけものにするかで、口コミの影響力が決まる。
メディアの活用は、販売商品・ターゲット顧客・消費エリア等とメディアの相性を精査し、最も効果的なメディア網を構築することが有効だ。
メディア全体の情報流通量は、IT(情報技術)の進化と共に爆発的に増え、直近20年間で6千倍にまで膨れ上がっている。
情報過多の時代において、闇雲なメディアの選定は、情報が埋もれる失敗リスクを引き上げるだけだ。
小さくトライアンドエラーを繰り返しながら、費用対効果の高いメディアを選定・構築し続けることが不可欠だ。
また、自社メディアを充実させて、自分たちの言葉とセンスで、自分たちの会社・商品・魅力・風土・ビジョン等を伝えることも大切だ。
情報を発信する力は、さほどの費用をかけずに強化することができる。
熱意さえあれば、小さな会社であっても大きな発信力を手にすることができる。しかも、小さな会社ほど未来を切り拓く強力な武器になる。
誰でも出来ることほど、後回しにしがちになるが、発信力の強化は早く取り組むほど、先行者利益が大きくなる。
人がいない、時間がない、知識がないなど、できない理由を考えるのではなく、できる理由を見つけて、小さな行動を積み重ねることが明るい未来を引き寄せる原則だ。
情報を収集する力を高めるマネジメントについて、解説する。
情報の収集力は、弛まぬ好奇心と現場巡りの実践で強化できる。
好奇心は、情報収集の原動力となり、事業活動の進化を後押しする。
好奇心を持って、自分の仕事に興味を持ち、仕事に関わる人々に興味を持ち、その仕事とそこに関わる人々の未来に興味を持てば、自ずと進化を加速する情報(新しい知見・感動・ヒント・アイデア等)に恵まれる。
人間は、心が冷めると情報を遮断するので、好奇心を忘れず、主体的に仕事に関わる内外の情報に興味を持ち続けることが大切だ。
情報のインプットが増えると、必然的にアウトプットも増えるので、行動量に圧倒的な差を生む。行動量が増えると仕事の質が高まるので、情報が起点となって、事業価値はどんどん磨かれる。
現場巡りは、情報収集の大原則だ。
情報を待つだけの人間に、有益な情報は集まらない。情報は自らの足で取りに行き、自らに活かしてこそ役に立つ。
例えば、成長の源泉を見つけるために最先端・最前線の人々に会い、鮮度の良い情報や会社の至らぬ点を聞いて考える。そして、また聞き、考え抜く。この繰り返しに勝る学びはない。
学歴や肩書はすぐに干からびるが、現場巡りの積み重ねで得た知見は自分と会社の成長に極めて役立つ。
口は一つ、耳は二つだ。一つ喋ったら、二つ聞く。この繰り返しが、成長の源泉を豊かにする。
また、直接、社員に会う、お客様に会う、取引先に会う、あるいは、直接、製造や営業の現場を見る等、現場に情報を取りに行くほど、真に迫る情報をキャッチできる。
とかく、悪い情報や現場の最新情報は取りに行かないとキャッチアップできないものだ。
当然、こうした情報に疎いと、間違った決断に直結するリスクを常に抱える。
社員への声掛けや労り・現場巡りは社長の日課にして、時には同行営業や抜き打ち現場訪問など、会社の真実を知るための仕組みを社長自身が意識的に作ることが大切だ。
優れた情報が手元にあれば、会社経営は必ずうまくいく。
情報を共有する力を高めるマネジメントについて、解説する。
情報の共有力は、IT(情報技術・Information Technology)の活用で強化できる。
IT(情報技術)等を活用して、社内の製造過程や営業過程の情報を共有(見える化)するほど、顧客サービスの品質と事業の生産性は向上する。
受注から納品までのムダムラが減少する、顧客対応の品質とスピードが上がる、リモートワークの生産性が向上する、社内外のボトルネックが明らかになるなど、低コスト高パフォーマンスの経営体制がどんどん強化される。
見える化システムは、アプリとクラウドを活用すれば少ない予算で構築することができる。
しかも、アプリとクラウドは、提供会社のコスト負担でアップデートされるので、少ない運用コストで常に最新の状態をキープできる。
お客様の属性・地域・要望・嗜好・購買履歴などをデータ化し、スマートフォンやPOSレジ等の業務端末で社内共有することも有効だ。
多くの社員が特別な訓練なしで、一人ひとりの顧客に合わせたオンリーワンサービスを提供することができる。
さらに、こうしたビックデータを保管・分析・共有するマーケティングプラットフォームが充実するほど、顧客サービスだけでなく、売る力も強化されるので、事業の永続性が一段と高まる。
ライバルが真似しようと思っても、データを盗み見ることができないので、強みの源泉が薄まることもない。
この先、ヒトによる「おもてなし」をIT(情報技術)でブラッシュアップする会社は、新しい未来を切り拓く急先鋒になるだろう。
古くから情報は売買の対象になっている。
それほどに価値があるにも関わらず、社内外の情報に対して無頓着な会社は意外と多い。
ほんの些細な情報が飛躍のチャンスに変わることはよくあることだ。どんな情報を発信し、どんな情報を収集し、どんな情報を共有するかによって、会社の未来は天と地ほどの差が開く。
アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏は、「未来のことを考えて点と点を結ぶことはできない。点と点は、振り返った時に後から繋がっているもの。今できることは、いつか繋がると信じて進むことだけだ。」と言った。
目の前の情報にどんな意味があるのかを問う前に、いつか役立つと信じて、目の前の情報を発信・収集・共有し続けてほしい。
5年後、10年後、ふと振り返った時に、予想を大きく超える成果を目の当たりにするはずだ。
もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。
次回ページでは、事業活動を支える七大資源「ヒト・モノ・カネ・情報・コスト・モラル・テクノロジー」のうち、「コストの最適化」について、詳しく解説する。
次ページ⇒7大資源「コスト」を最適化する
(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」
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