設備投資は成長投資や先行投資の範疇に入り、製造業等の資本集約型企業にとって会社の繁栄を支える欠かせない取組みになる。
しかし、設備投資等の成長投資は判断基準や考え方を誤ると、投資が仇となって会社の衰退リスクを作るきっかけになり得ることがある。
この記事では、設備投資・成長投資・先行投資の7つの判断基準と考え方について、詳しく解説する。
成長投資(先行投資)とは、投資の対価を得るために先行して投じるお金や時間のことだ。
投資の対価は事業成長・新規顧客・収益拡大等のリターンのことで、このリターンを得るために、設備投資・人財補充・人財育成・新規事業・最新ノウハウ導入等を推進することが成長投資の本質になる。
また、成長投資(先行投資)には、顧客を生み出す重要資源の陳腐化を防ぐ役割がある。
重要な経営資源とは、ビジネスモデル・経営基盤・商品・設備・人財等のことで、成長投資が充実するほど、これらの経営資源の優位性が高まり、企業の永続性が一段と強固になる。
成長投資の対象は次の3つが重要になる。
そして、成長投資は以下3つに分類される。
下図は、成長投資のポートフォリオ例である。
成長投資のポートフォリオは業種業態によってバランスが変わる。
例えば、製造業等の資本集約型企業は、戦術的投資<戦略的投資<中長期的投資(設備投資等)となり、小売等のサービス業は、中長期的投資<戦術的投資<戦術的投資(宣伝販促等)となる。
成長投資は機を逃さず先手必勝で実行するのが基本原則になる。
なぜなら、先手必勝の姿勢がライバルに大きな差をつけるからだ。
しかし、成長投資の基準は多種多様なので、原則論を抑えた上で、自社の経営環境に合わせて臨機応変にアレンジするのがベストである。
以下に成長投資(先行投資・設備投資)の7つの判断基準を紹介する。様々な局面に合わせて複合的に基準を運用することが投資成功の精度を高める秘訣になるので、上手にアレンジすることをお薦めする。
粗利高営業利益率10~20%以上キープ
粗利を100円稼いだら10円~20円の営業利益を残す。この水準が経営の健全性をキープできる最低ラインになる。
この判断基準を活用すると、一定の利益水準をオーバーしたら成長投資を加速する、或いは、利益水準が低下したら成長投資を抑えるといった投資判断が簡単にできる。
現預金残高の増加キープ
会社は現金がなくなると倒産するので、現預金の増加傾向をキープすることは企業存続の絶対条件になる。現預金残高は月商の3倍以上、年商2億円以下の会社は月商の6倍以上が目標ラインになる。
この判断基準を活用すると、一定の現金水準をオーバーしたら成長投資を加速する、或いは、現金水準が低下したら成長投資を抑えるといった投資判断が簡単にできる
フリーキャッシュフローを投資に回す
フリーキャッシュフローとは、会社が自由に使えるお金のことである。経常利益の大よそ半分は税金で取られるので、経常利益の半分に現金流失のない減価償却費を加算することで計算できる。(FCFの計算式=(経常利益×50%)+減価償却費)
投資の判断基準は、フリーキャッシュフローの半分が適正ラインになるが、借入返済がある場合は考慮する必要があり、返済過多だと投資できる金額が少なくなる。大きな設備投資を控えている場合は、フリーキャッシュフローの計画的貯蓄が成功を左右する。
減価償却費をプールする
減価償却費と同額の現金を毎期貯蓄し、設備投資の買い替えサイクルを綺麗に回すと、設備の老朽化や陳腐化を防ぐことができる。特に、製造業等の資本集約型企業は減価償却費の総額を減らさない意識を持つことが大切になる。
投資回収の期限は1年以内(最長2年)
比較的小規模な成長投資(新商品・新サービス等)は、1年以内(最長2年以内)に投資金額を回収という判断基準をお薦めする。最長2年経過しても回収できない場合はプランの練り直しを検討した方が良いだろう。
収益化のタイミングは1年以内(最長2年)
比較的大規模な成長投資(新規事業・大型投資等)は、1年以内(最長2年以内)に収益化(黒字化)という判断基準をお薦めする。なお、黒字判断はキャッシュフローで考えるので、投資資金を外部借入で補填した場合は、返済金も含めて投資収支を計算すること。
原資が自己資金や投資家の援助等であれば無限大
返済期限のない原資を用いる場合は、成長投資の上限を考える必要はない。自分の報酬を脇に置いて、事業の繁栄に尽力する成功者は意外と多い。