多角経営に失敗する会社の末路|多角化の失敗が企業の成長を阻む

経営の多角化に失敗する会社の末路|多角化の失敗が成長を阻む

 

多角経営とは、一つの企業が複数業種の事業を運営する経営スタイルのことである。

 

多角経営は会社の規模拡大メリットがあるが、一方で、多角経営がきっかけで衰退するデメリット(リスク)もある。

 

この記事では、多角経営に失敗する会社の末路、並びに、多角化の失敗リスクから多角化の基本戦略に至るまで、詳しく解説する。

 

 

多角経営の失敗リスク

 

多角経営とは、一つの企業が複数業種の事業を運営する経営スタイルのことだ。

 

多角経営に乗り出した結果、その多角事業が失敗に終わる中小企業は少なくないが、多角化失敗の代償は決して小さくない

 

例えば、経営の多角化に失敗すると、会社には多額の負債が残る。銀行融資で多角化を進めていれば借金の負担も増える

 

更に本業の利益も多角化失敗の穴埋めに使われることになり、会社は衰退する一方になる。

 

多角化失敗の末路は悲惨なものだが、本業が成功して資金に余裕が出てくると、ついつい、多角化に乗り出す経営者がいるものだ。

 

 

多角化の失敗リスクはなぜ高いのか?

 

多角化の失敗リスクはなぜ高いのか?

 

その答えは「多角経営の成功は、本業とは違う分野で事業を成功させる」ことが絶対条件になるからだ。

 

本業を成長軌道に乗せることに比べて、素人分野の多角化の事業を軌道に乗せることは極めて難しく、大概は失敗する。

 

多角経営は収益のリスク分散に繋がるので決して悪い選択ではないが、資金が豊富な大企業と比べて、一回の失敗で倒産危機に瀕しやすい中小企業にはリスクの高い経営戦略になる。

 

従って、中小企業が持続的成長を実現するのであれば、多角経営ではなく、ライバル企業に圧倒的な差をつけるための本業への成長投資が、賢い戦略になる。

 

 

多角化失敗の代償を払う前にすべき事

 

多角化失敗の代償を払う前にすべき事は沢山ある。

 

例えば、本業の事業価値を高めるための成長投資は典型になる。

 

☑設備投資を行い製造効率を飛躍的に向上させる

 

☑商品の品質改善を行い、付加価値を飛躍的に向上させる

 

☑インフラ投資を行い購入者の利便性を飛躍的に向上させる

 

等々、本業で生み出した利益を本業に還元投資すれば、競争の優位性が高まり、会社の経営基盤が一段と安定する。

 

冷静に考えれば理解できると思うが、会社の資金がダブつく、経営者交流で多角経営にのめり込む、隣の芝生が青く見える、等々、多角化の動機は様々だが、多角経営に走る社長は後を絶たない。

 

繰り返すが、「経営者が多角事業分野の素人であること」を忘れて多角化に乗り出した場合の多角化事業の失敗確率は極めて高い。

 

多角化に走る前にすべきことは沢山ある。多角化失敗の代償を払う前に、冷静に立ち止まって考えることも時には必要だ。

 

 

多角経営の前のオンリーワン事業が大切になる

 

中小企業は闇雲に多角経営を目指さず、まずはオンリーワンの分野でナンバーワンになることが最も美しい姿になる。

 

オンリーワン事業があれば、その事業の強みを活かした派生ビジネスの展開が容易になり、多角経営の成功率が高まるからだ。

 

もし既に、本業が成功している会社であれば、オンリーワンの地位を築くことは難しくない。

 

下図は、事業創出の検討に活用する戦略マトリックスになる。

 

 

マトリックスの「既存×既存」が本業分野になり、この本業を成長させるための経営努力(深掘り)を続けることが、多角経営に役立つオンリーワン事業を作る確かな方法になる。

 

逆に、マトリックスの「新規×新規」は素人の多角化分野になり、失敗確率が極めて高い事業分野になる。(危険性は後述する)

 

 

多角経営に役立つオンリーワン事業の作り方

 

前章のマトリックスの「既存×既存」が本業分野になるが、多くの会社で本業に対する深堀アクションが疎かにされている。

 

☑既存市場の拡大・既存顧客の創出

 

☑既存技術やノウハウを使った用途開発、商品開発、品質改良、生産性改善等々

 

慣れ親しんだ本業分野であっても、考えれば考えるほど至らない点が沢山出てくるものだ。

 

会社の持続的成長基盤を盤石にするには、多角化に走る前に、本業分野の深堀りアクションを徹底的にやり尽くすことが欠かせない。

 

至らない点を解消する経営努力を続けていれば、次第にライバル企業よりも競争優位性が高まり、本業のオンリーワン要素が色濃くなる。

 

一度、オンリーワン事業を築いてしまえば、そこから落ちることはそうそうなく、オンリーワン事業が強固なほど、本業の派生ビジネスを起点とした多角経営の成功率が上がる。

 

 

素人分野の多角経営の危険性と失敗リスク

 

前々章のマトリックスの「新規×新規」が素人分野の多角化事業になるが、この事業分野は危険であり、失敗リスクも高い

 

多角化を推進する資金は本業で稼いだ「利益」になるが、”お金はあるが知恵がない”というのが「素人分野の多角化事業」になり、中小企業が最も手をつけてはならない危険な分野になる。

 

素人分野の多角化事業を成功に導くのは至難の業で、多角化で失敗するケースの殆どはこの分野に該当している。

 

どうしても、経営者が素人分野の多角化事業に乗り出したいというのであれば、経営者個人の資金で事業を始めるのが望ましい。

 

なぜなら、会社として多角化に乗り出して失敗して、万が一、会社が倒産すると、経営者のみならず、社員や家族、関係者全員が一瞬で不幸になるからだ。

 

安易な多角経営に走るのではなく、まずは本業への成長投資や深掘りアクションを徹底することが、安定経営の秘訣になる。

 

伊藤のワンポイント
 

多角化で注意すべき点は本業を曖昧にしないことです。本業が曖昧になると、経営資源が分散し、多角化と共に会社全体が衰退します。また、本業とは全く関係ない分野の多角化は、失敗経験が一つも本業に活かされないので、資金だけでなく、時間の損失も大きいことを理解しなければなりません。